『完結保証』最強パーティーを追放された挙句海賊になってしまった件
鬼柳シン
第1話 俺がパーティーリーダーなんだけど
「ゼノディアス・グランバーグ、貴様はただ今をもって”サンランページ”から追放だ」
ヤバい、ヤバイヤバイヤバい。パーティー仲間である”グレイン・ガルバル”から受けた宣告に得意の舌も回らずに固まってしまう。
それもそのはずだ。グレインは魔王を打倒したサンランページの副リーダーにして、今やほぼ暴徒と化したメンバーを束ねている切れ者だ。
俺を含む一部の穏健派を取り囲み、追放宣言という名の”クーデター”を起こしている。
そう、”クーデター”なのだ。
「一応サンランページのリーダーは俺だぞ?」
「これだけのメンバーに裏切られて、まだリーダー面か?」
俺の指揮のもと、サンランページは勇者パーティーすら追い越して魔王討伐に成功した。
その過程で山賊や盗賊の類も片付けてきた。
おかげで、今や最強のパーティーは勇者パーティーではなく俺たちサンランページだ。
しかし、魔王の懸賞金目当てに集まった俺たちはやりすぎてしまった。
陸にはまともな懸賞首がいなくなってしまったのだ。
良いことなのだろうが、俺たちからしたら飯の種を奪われたも同然だ。
そういうわけで、懸賞金のついた海賊の溢れる海に活動拠点を移すため、港町のポートリーフへ来たのだが……。
「そりゃ、俺がお金沢山使っちゃったけどさぁ!! 魔王討伐の恩赦も使い切っちまったけどよぉ!!」
「それどころか毎晩考えなしに飲んで騒いで散財してきたのは誰のせいだ。最近の昼飯がずっとリンゴ一個なのは誰のせいだ」
そーだそーだと声が上がる。
だが、ポートリーフのど真ん中でしばらく唸ってから、至極当然な疑問をようやく口にした。
「もともとハイエルフ手に入れて売り払うの目当てに山三つ焼いたのはグレインだろ?」
「むっ」
「つーか、そのせいでリーダーの俺は仕方なく、帝王からエルフのお偉いさんまでたらいまわしになったんだよ……よく考えたら行先行先でとんでもない額の大金積んで揉み消しと買収したから金がねぇんだよ!!」
俺が覇気を取り戻すと、残ってくれた仲間――穏健派も勢いを得た。
「ゼノの旦那は悪くねぇ! 魔王にとどめ刺したのも旦那なんだぞ!」
俺の右腕こと”メダルカ・オーラント”が髭面で怒鳴り散らす。代わってグレインに従う強硬派は「グレインさんがやったんだ!」と言い返していた。
こんなやり取りを見て、グレインは溜息をついている。コイツだけは、本当のところでは金のことなど微塵も興味もない。
どういうわけか、俺の立場を狙っている。もっと言うなら、おそらくコイツは”俺を殺そうとしている”。
強硬派の連中をグレインは静かにさせると、青い瞳に怒りを灯して俺を睨む。
「残念ながら、海に出るにあたってポートリーフの提督に呼ばれされてるのは依然としてゼノだ」
俺も赤い瞳に余裕を取り戻し、ハッ! と笑い飛ばしてやった。
「もし今俺がいなくなったら、サンランページは海の知識ゼロ且つ海軍の援助なしで大海原に出ることになるな。それでも追放するのか?」
海にはまだ海図に乗っていない海域もあれば、陸で言うところの魔王のような存在も確認されている。
そんな未開拓の世界へ行くにあたり、魔王に苦しめられていた大帝国の帝王は、海軍の提督に話をつけてくれたのだ。
グレインも、これがわからないわけではあるまい。だというのに、「だったら提督と話してきたらどうだ? 誰が上に立つべきかハッキリするぞ」などと息巻いている。
「あーそうかよ! だったらここでハッキリさせてやる! おいメダルカ! グレインがやらかしたこと羊皮紙に纏めとけ! 直々に提督に叩きつけてやる!」
「よ、よろしいんですかい?」
「これから新しい世界に旅立つっていうのに、なに考えてんだかわかんねぇ奴とはもう一緒にいられねぇ!」
「……それが旦那の考えなら、了解しましたぜ」
メダルカが引っ込むと、グレインに向けて俺の方から言ってやった。
「グレイン・ガルバル、ただ今をもってお前はサンランページから追放だ」
ヤバい、今度という今度はヤバい。
グレインを追放してからすぐに後悔した。
帝国海軍司令部で提督アルビン・エルケット相手に皮肉を散々言われてキレると、背後の扉が開いて強硬派のサンランページのメンバーが現れたのだ。
その先頭には、やはりというかなんというか、グレインが余裕たっぷりな顔で海軍の礼服に着替えて立っていた。
「ご機嫌よろしゅう提督。それとゼノ、サンランページを追放してくれた事に礼を言うぞ。これで一々貴様を気にすることなく、俺に従う手下と共に賞金首――早い話が海賊共を捕まえることができる」
続けてアルビンが偉そうに一息つくと、周囲の衛兵たちに合図を送り剣を抜かせた。
ついでにグレインの影に隠れると、俺を処刑するなどと言い出した。
「サンランページにはエルフの件で悪い噂が絶えないそうなのでな。私の船にふさわしくないので、リーダーである君に責任を取ってもらうことにした」
アルビンが「捕らえて明日の朝、エルフたちの監視のもと絞首刑に処す」と口にする中、一人頭痛を覚えながらグレインに語り掛けた。
「よぉグレイン、ちょっと前までは人殺しだの言われてた奴がずいぶん出世したもんだな」
「だがおかげで俺に降りかかった罪状は取り消しとなり、これからは帝国海軍の加護の下、合法的に懸賞金のかかった海賊たちを捕らえられる。加えて、魔王を倒したサンランページのメンバー”ほとんど”を連れたままでもある」
「ほとんど……おいおいおい、まさかお前――テメェ!」
”ほとんど”の意味を理解するが否や、ガタっと身構えてしまった。
「外で待ってる穏健派に手を出したのか!?」
「穏健派とやらは今日からハイエルフ欲しさに山を三つ燃やし、エルフ族全体を大いに怒らせた罪人となったのでな。俺の新しい職場の最初の仕事として捕らえさせてもらった」
明日には貴様と一緒に処刑だ。そう続けたグレインに、一瞬感情が爆発しそうになった。
「ッ! ――ふぅぅぅぅ……ああそうかよ、今まで何年も共に戦った仲間に罪を擦り付けて捕まえた、ね。落ちたもんだな」
「……貴様が黙って追放宣言を受けていれば、こんなことにはならなかったぞ」
一瞬見せた俺の凄みに、グレインは余裕たっぷりな態度を崩し、眉間にしわを寄せた。
「提督、この者をすぐにでも拘束することを進言します」
「そんな事には及ばない。我が兵士たちは皆名のある家から出た剣と魔法の達人だ。囲まれていては、何もできまい」
「ですがこの男は……」
と、そこで大いにおどけた口調で横やりを入れてやった。
「そういやグレイン! みんなで話してた、"人質ってことにして連れてきたハイエルフ"を乗せて”あの島”に行くっていうのは提督様には話したのか?」
余裕顔は一変し、舌打ちをしてこちらを睨んできた。
「下手なことを言っても無駄だ。提督はとても野心をお持ちだからな。いずれは帝国すら手中にするだろう器の持ち主でもあられる」
「そーかそーか、だから近いうちに話すだろうから平気ってか? そこらへんから揺すって出来るだけ穏便にすませようとしたが、荒っぽい方法で構わない相手だったようだ――”テラ・ガスト”」
グレインが察して動く前に、得意の”風魔法”で俺を中心に突風を起こした。
剣を構えていた衛兵も提督もグレインさえ吹き飛ばされた。
突風に乗ってガラス窓を割ると、周りが立ち上がるか体制を整える前にグレインへ向けて堂々と宣言してやる。
「やっぱり喜んで追放されてやる! それでサンランページがお前の都合のいい物になったなら、また一から俺のパーティーを作り直してやるよ!」
”あの島で会おう”。それだけ言い残し、大勢の追手が来るだろう町中へと逃げて行った。
――――――
【作者からの心からのお願い】
『完結済みだから安心!』『毎日更新を約束!』
以上は必ず守ります! この作品は"コメディ"を学ぶために書き始めましたので、それを感じられたら以下願いします!
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