再会編
16. 初めての護衛と村1/2
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護衛するのは、商人のおじさんと御者さんの2人で、僕たちは御者さんの隣に1人と、馬車の荷台の後ろに2人と分かれて乗った。
あとで交代するけど、最初は前にルシカが乗った。
前と後ろを警戒するんだって。
僕は、薄く索敵を広げた。
「子供がいるパーティーなんて珍しいですな。」
「えぇ、彼は子供ですが、実力は一流冒険者ですのでご安心下さい。」
「そうですか。その歳で一流冒険者の実力があるとは、将来が楽しみですな。」
「うん。僕おじさんたちを守るために頑張るね。」
お昼を過ぎる頃まで走ったけど、魔獣や盗賊などの敵は来なかった。
みんなでお昼を食べると、今度は僕が御者さんの隣に座った。
「よろしくお願いします。」
「あぁ。よろしくな。子供だけど大丈夫か?」
「大丈夫。ちゃんと索敵するから。」
「そうか。頼んだぞ。」
「うん。任せて。」
しばらく馬車で走ると、見たことある景色が広がった。
ここ、見たことある。僕が魔術を練習した山だ。ここは村の近くなんだ。
馬車で走りながら、僕は横目でチラリと村を見た。
知ってるおじさんやおばさんや、知ってる景色が見えた。僕が住んでた家も。
そして、僕が捨てた村だ。
思い出したら、急に苦しくなった。
「おい、大丈夫か?坊主。」
「え?」
「お前泣いてるぞ?」
「あ。」
僕が頬に手を当てると、頬が濡れてた。
「大丈夫。昔のことを思い出してしまっただけです。ちゃんと索敵はしてるから大丈夫。」
「あぁ。索敵はいいが、辛いなら一回止まるか?」
「大丈夫。このまま進んでください。」
「そうか。止めてほしくなったらいいな。」
「うん。ありがとう。」
ここでは止めて欲しくない。
また、あの日の呆れたようなみんなの顔を思い出してしまうから。
要らないと言った父ちゃんの顔も思い出してしまうから。
大丈夫。僕にはルシカとゲオーグという仲間がいる。それに、あの頃の僕より、もっと強くなった。
ちゃんと自分でお金を稼いで食べていけている。
それに、夢もある。
大丈夫。僕はもう大丈夫。
僕は深呼吸を繰り返して、魔力をぐるぐる体の中でしばらく巡らせてから、索敵を再開した。
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫です。」
「そうか。無理すんなよ。」
あの村を出てから、出会う人はみんな優しい。誰も僕が嘘つきだなんて言わないし、僕のことちゃんと見てくれて、心配してくれる。とてもありがたいことだ。
太陽が真上を過ぎて少しした頃、休憩を取ることになった。
「待って、何かいる。たぶん小さい魔獣だ。御者さん、スピード落として。
僕が先行して倒してくるから、ゆっくり来て。」
「あぁ、って坊主1人で行くのか?っておい!」
僕は身体強化をかけて横から飛び降りて、魔獣の元に走った。
「大変だ!坊主が何かを見つけて1人で先に行った。」
後ろで御者さんが慌ててる声が聞こえたけど、馬車のスピードは落ちているから大丈夫そうだ。
いた。なんだ。ホーンラビットか。
3匹いる。
索敵を広げてみたけど、近くに他の魔獣はいない。
これなら大丈夫だ。
僕は槍を構えて、ホーンラビットに向かった。
3匹のホーンラビットはすぐに倒せたし、ちゃんと高く売れる角は無傷だ。
穴を掘って血抜きをしていると、馬車が到着した。
「シュペア~、何がいた~?」
「ホーンラビット3匹だったよ~」
ルシカの声が聞こえたから、僕は大きな声で答えてホーンラビットを高く上げて見せた。
「お、綺麗に倒したな。角も無傷だ。」
「本当だ。綺麗だ。よくやったな。」
「うん。」
2人に褒められると嬉しい。
「いゃ~本当に驚きました。さっき一流だと聞いてはいましたが、本当に凄いですね。」
「あと、この子は索敵使ってたみたいだ。」
「うん。使ったよ。」
「シュペア、お前ずっと索敵使ってたのか?魔力大丈夫か?」
「大丈夫。そんなに遠くまで広げてないから。」
「無理はダメだぞ。次は交代して後ろだからゆっくり休め。」
「うん。ゲオーグありがとう。」
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