MO' ECHO
make(メイク)
第一章 共鳴
第1話 赤髪の少女
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
本作品には【百合描写】/元カレ/暴力/性(軽度、R-15{タイトルに記載有り})/未成年飲酒・喫煙描写/ネットによる誹謗等の表現がございます。苦手な方は閲覧非推奨です。※
入学式一週間前。
来週必要になる物をチェックし、買い出しに出かけていた次期二年生の
黒く長い髪に口元のほくろが特徴的で、美人という言葉がよく似合う女の子だった。
彼女が街で用事を済ませ帰宅する最中、派手でよく目立つ"赤髪の少女"を見かける。
彼女は楽器を背負っており、軽音楽部の奏は興味を惹いた。
赤髪の彼女も何か感じ取ったのかこちらに振り向く。一瞬目が合い、奏はポロッと一言溢した。
「…綺麗」
髪の色もさる事ながら、その整った顔に見惚れていた。
目が合うこと一秒程度で、彼女は奏のことを気にも留めずに歩いて行く。
その去りゆく後髪もまた美しく、目を引いた。
何となく気になって彼女について行くと、こじんまりとしたライブハウスに入って行った。
ベースを背負っていたことを考えるに、奏は一つの答えに辿り着いた。
「あの子ライブするんだ…!」
ライブハウスなんて来たこともなかったが、あの女の子をまた一目見たいと思い、勇気を出して足を踏み込んだ。
…
階段を降りると怖そうな男の人が立っている。
「お目当ては」
「は、はい?」
「目当て」
そんなこと聞かれるの?と奏は焦る。
「あ、赤い髪の…!女の子!」
「
「あっ、はい…」
ライブハウスに入るには、入場料兼ドリンク代を支払わなければならない。
意外と高い入場代を取られ、中に入りドリンクを受け取る。
奥へ行くともう一枚扉があった。
この中でバンドが演奏を行なっているのだ。
扉を開けると…。
「わぁ…」
中ではもう演奏が始まっており、暗い室内と照らされるバンド、それと身体の奥底に響き揺れるような音圧に圧倒される。
十数人の観客と一緒にライブを観戦することにした。
軽音楽部の奏は、去年も学園祭でライブを披露した事があった。
だから他人の音楽を聴くというのも楽しくて、いつの間にか夢中になって楽しんでいた。
何組かの演奏が終わり、あの赤髪の少女がベースを抱えてステージに立った。
「あ!あの子…」
バンドが多く出演している中で若い女の子が一人で出演している異色さ、それと彼女の持つクールで可憐な雰囲気が髪色の派手さと相まってとても魅力的に感じた。
『NUTZです。歌います』
簡単な自己紹介を終えると、バックに音楽が鳴り、彼女も太いベース音を鳴らして歌い出し、場を
見た目より少し低めの歌声でリズミカルに歌う。
『澄ましてる表情 お互い様
あからさま 黒い星 ローファー鳴らす
聴き慣れた君の声がヤダ
見惚れてた ONE SCENE, SMACKIN'
泣きたいのはこっち
流してる赤 お互い様
あからさま トドメのピン 声枯らす
嗅ぎ慣れたカラー剤がヤダ
尻尾振れよなあ MS.TAUTOLOGY
泣きたいのはこっち』
ラップ調の歌詞と彼女の歌声には、今まで感じた事の無い衝撃を受けた。
「うそ…すご…」
一曲終わり、彼女のMCが入る。
『オリジナル曲、"泥棒猫"でした』
まばらな拍手が場に響く。
奏はうっとりと聴き入っていて、彼女の声を聴くとさらに興味が湧いた。
「歌ってる時より声高い…!可愛いなぁ〜…もっと、喋らないかな…!」
奏の願いは叶わず、早くも次の曲のイントロを弾き始める。
またもラップ調で彼女は歌を披露し、奏もそれを楽しむ。どうやらラップミュージックを得意としているようだった。
トータル三曲演奏し、あっという間に彼女の出番は終わった。
『ありがとうございました』
簡単に挨拶をして消えていく彼女を、奏は名残惜しく思う。
ライブは程なくして終了し、奏はライブの後の高揚感を残したまま帰り道を軽快に辿る。
…
その夜奏は彼女の事を考えながら眠りにつく。
「はぁ、ライブすごかった…」
彼女を一目見てから、彼女のことばかり考えてしまっていた。
それだけ衝撃的だった。
「また会えないかな。…無理か」
来週には入学式。
普段規則正しい生活を送っていた彼女も、今日だけは珍しく気分が高揚し、寝付けずに朝を迎えたのだった。
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