第17話 呆然者アメリア
私はアメリア。魔王ゲーアハルト様が、来訪されている部屋に向かっています。
私が部屋に向かうと、部屋の扉は開きっぱなし。扉横の壁のところには、叩きつけられたであろうセンシンティアが倒れていました。棚の一つは破壊され、卓の奥にはテラスティーネ様が倒れています。ゲーアハルト様は館を出て行かれたようです。
まず私はセンシンティアに声をかけました。
「センシンティア。起きられる?」
「う・・。」
センシンティアはその橙の瞳をうっすらと開きました。
「アメリア・・。」
「何があったの?テラスティーネ様も倒れているけど。」
センシンティアは上半身を壁にもたれ、咳き込みました。
「ゲーアハルト様がテラスティーネ様に手を出されたので、止めようとしたのですが、飛ばされました。」
「まぁ、当たり前ね。で、テラスティーネ様はなぜ?そしてゲーアハルト様は帰られたの?」
「それが飛ばされて、身体を壁にたたきつけられてから、意識がなくて。」
「テラスティーネ様が起きてから聞くしかないわね。テラスティーネ様を寝室に運んでくれるかしら?動けそう?」
「大丈夫です。」
センシンティアが頭を軽く振りながら起き上がります。テラスティーネ様の元に行き、額と口の前、手首に手を当てて様子を確認しました。
「熱はなさそう。脈は若干早いけど。」
センシンティアが、テラスティーネ様の背中と膝の後ろに手を当てて、横抱きに抱えます。
「じゃあ、行きましょう。」
センシンティアに次いで、部屋の扉を閉じて、テラスティーネ様の寝室に向かいました。
◇◇◇
「・・アメリア?」
飲み物等の準備をしていると、寝台に寝ているテラスティーネ様が起きて、声をかけてきました。
「気分は悪くない?これ、飲んで。」
「ありがとう。」
テラスティーネ様は寝台の上に上半身を起こすと、渡されたグラスの中身を飲み出しました。
「で、ゲーアハルト様と何があったのかしら?」
寝台の横の椅子に座って、小首を傾げて問いかけると、グラスから口を離して、テラスティーネ様は私を見上げました。
「話している最中に、近くに歩み寄られて
「それで?」
「センシンティアがそれを止めようと、駆け寄ってきたのを、ゲーアハルト様が突風を当てて、吹き飛ばした。」
「それで?」
「壁にセンシンティアが叩きつけられたのを見たら、カミュスヤーナが私の身体を使って、ゲーアハルト様の手を私から外して。私やこの館、ユグレイティの民、土地に手を出したら
「・・・。」
「ゲーアハルト様が帰らなかったから、顔に向かって熱波を放とうとして、とっさに私が
「さすがにゲーアハルト様はお引き取りになり、貴方は倒れたと。いつもながら、カミュスヤーナ様半端ないわね。」
「やりすぎ。」
テラスティーネ様の目尻に涙が浮かんでいます。
カミュスヤーナ様が行方不明になって、数多くの来訪者をテラスティーネ様が対応することになりました。その内、テラスティーネ様や他の者に危険が及ぶと、カミュスヤーナ様が、テラスティーネ様の身体を操って追い払うようになったのです。問題はその時のカミュスヤーナ様はとても好戦的で、短気であること。テラスティーネ様曰く、やりすぎなくらいの対応をされます。とても魔王らしい対応を。テラスティーネ様は度を過ぎないよう調整?干渉?しているようですが、たいていその後は倒れてしまわれます。
見た目では、その時だけ、テラスティーネ様の瞳が、青から赤に変わるらしいです。私はまだ見たことがありませんが。
「カミュスヤーナ様もそんな形で追い返すなら、早く戻ってくれればいいのに。」
おかげで、テラスティーネ様が対応する間、センシンティアが護衛するだけで済んでいます。何かあっても、カミュスヤーナ様が何とかしてくださるから。
「一時的に身体の制御は奪われるけど、本人の意識と交信はできないから、どこでどうされているのかはわからなくて。」
「でも、カミュスヤーナ様が貴方の身体を使う頻度が高くなっているわ。このままだと貴方の身体がもたないかも。」
魔王カミュスヤーナ様の存在での
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