第15話-恋心と反省
次の日の朝、目を覚ました時には隣にコースケは居なくて自分の行いを後悔した。
彼が居た場所のシーツを撫でる。
まさか、あんな怯えた顔をするとは思わなかった。そんな顔をさせるつもりは無かったのに。寂しくて悲しくて、胸が軋む。
俺は起きてきたその足で調香室に向かう。
棚から木箱を取り出しながら、はぁ……とため息を吐く。両手に持つそれを作業台の上にコトリと置くと、フックを外し中の物を確認する。中には青や茶色の硝子の小瓶が沢山入っている。全て香油だ。
今日は商人としては休みの日でコースケと一日中一緒に居れると思ったのに、彼が怒っていたら…と思うと、中々顔を合わせられないでいた。
キスしたの……やっぱりダメだったのかな……。
彼の動揺に、慌てて取り繕ったけど。
「やっぱり俺がおかしいのかな。お前はどー思う?」
コースケが作ったクマの縫いぐるみを見つめながら独り言のように言う。
「禁酒しよっかな……。」
涙目の彼を思い出して、俺はまた溜息を吐いた。
コースケの作った縫いぐるみはとても可愛らしい。鼻筋や耳の内側、手足の裏、腹のパーツが、桃色に白い小さな花の柄がある生地で統一されている。それがで可憐で優しい印象だった。
その他の体のパーツはミルキーブラウンに薄っすらと白い薔薇が散りばめられた生地だ。柔らかく優しい色合いをしている。
首には白いレースのリボンが巻かれいるのも可愛らしい。
つぶらな黒のくるみボタンの瞳がこちらを優しく見つめてくる。まるで幼い令嬢のような優雅さと愛くるしさを詰め込んだクマの縫いぐるみだった。
これがコースケの手で生み出されたのだと思うと愛おしくて堪らない。作った縫いぐるみ全て欲しいくらいだ。
……とか言ったら、コースケはきっと俺を蔑んだ目で見て、「はぁ?」とか言うんだろうなぁ。
はは。それがまた、可愛いんだけど。
重症だな。どんな彼も可愛くて堪らない。
この国では同性愛は法律上禁止されている。だから彼の反応は至って普通の事ではあった。まぁ、こっそりと付き合っている奴も多いが、表向きには許されてはいない好意だ。
「はぁ――――。」
酒に浮かされていたとは言え、記憶はしっかりあるし、理性もしっかりあった自信はあるのに…無意識にタガが外れかけていた。
ほんと、禁酒しよう。ガックリと肩を落とした俺は、決意を新たにしたのだった。
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