第28話
「……それに、マユとアリシアはよく暴れてくれるから面白い」
「暴れるのはマユですよね!?」
ディル様が更に言葉を紡ぐが、それは女性に対する褒め言葉ではないし、そもそも私は暴れていないと否定する。
「発端がアリシアの場合、もう二人で騒いでるのと同意義じゃないか?」
「!!」
「アリシアの為なら何だってするよ~!」
確かにそうかもしれないと驚いた私の後に、見事肯定の言葉を発したマユ。
う……うん……止めなかったら同じ……ですね……。
◇
「ここに三組の夫婦が誕生しました!」
雲一つない晴天。
レイドワーク領土にて三組の婚姻式が執り行われた。
協会に収まりきらない人々の為、広場にて式典が行えるように整え、そこで式を挙げた。
三組が三組とも人間と獣人の異種族婚姻な上、それが権力の頂点に居る人なため、人間側も獣人側も興味深げに多く集まった。
……が、人間も獣人も、お互いがお互いどんなものなのかという興味も多大にあったのだと思う。
長期滞在者も多く、獣人が農作業や建築や狩りなどをしているのを観察し質問したりして交流する人間。
建築様式や田畑の作り方、料理などについて質問して交流する獣人。
式典の後はパレードだったのだが、パレードはもちろんの事、周囲では交流による賑わいも見せていた。
「ええ~い!こっちを向け~!」
そう言ってマユは天上から花びらを散らせ始めた。
とても良い匂いがすると思ったら、マユも同じ事を思ったのか、どんどん花びらを降らせ始めた。霊の力、万能すぎない……?
「あぁああ!料理に花びらが!」
「きゃー!畑が花びらで埋もれる!」
密かに騒ぎ出す周囲に、焦った表情を浮かべたマユと同時に、花びらが止まる。
無言でディル様が風を巻き起こし、花びらを一箇所に集めると、竜王様が燃やすか?と声を出すと、それに苦言を呈すような顔をするラルド様。
「いや!ちょっと待って!良い匂いだから香水とか!化粧水とか何か!美容の何かに使えるかも!!!」
「ちょっとマユそれ詳しく!」
マユのそんな言葉にいち早く反応した私だが、周囲に居た女性達の鋭い目線もマユに集まっている。
それに気がついたマユは、自分が失言を犯したと思い焦る。
「え……?かも、だよ!?出来るか分からないよ!?」
そんなマユの言葉に一斉に首を横に振る女性陣。そこに種族の違いはなかった。
できませんは、認めません。
「えぇええ~~~!!!????」
そして、男性陣の呆れた目線があったものの、マユは花びらを使った化粧水なるものを開発するまで、日々誰かにせっつかれていましたとさ。
◇
「アリシア!アリシア~!」
バルコニーからマユの叫び声が聞こえる。
竜王様に乗ってきたのなら庭に降り立ち玄関から入ってくる……ということは、風の精霊に頼んで単身飛んできたのだろう。
「ちょっと色んな精霊に会って子どもの事を教えてもらっててね!?」
マユが今、獣人と人間の交わりについて調べている。
私はフェンリル相手ならば特に問題はないだろうと言われているが、マユは竜王様が相手なので予想が出来ないという……。
どうやら竜は同種族での婚姻ばかりしていたようだ。
そして何より……。
「リタちゃんの事もあるし!」
マユはラルド様の相手である兎の獣人であるリタ様の事を気にしていた。
リタ様のように胎児が兎獣人ならば問題はなさそうだが、人間を色濃く継いでしまうと、リタ様の身体に負担が大きくなりそうなのだ。
「どうやら女神という存在がいるらしくて!加護をもらえば何とかなるみたい!」
「は……?女神?」
精霊すら見えてない私は、更に突拍子もない存在を聞いた気がする。
神ですよ。神。
「って言うわけで探してみよ~う!」
そう言って私の腕を掴み、飛び立つマユ。
聞きつけたのか後ろからフェンリル姿で追いかけてくるディル様。
……これ、竜王様も追いかけてきそうですね。
「……楽しいね、マユ」
「うん!楽しい!」
きっとこれからも、こんな日々が続いていく。
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