1000文字以内で百合する話
煮込みメロン
這い寄る少女は大人になりたい
ベッドの上に寝転がり、縁から足を投げ出しながら漫画を読んでいた私の膝の上にポンと軽い衝撃が走った。
チラリと視線だけを下に向けると、こっそりと私の部屋に侵入してきたのか、うちの近所に住む小さな女の子、
茶色の混じった黒髪をサイドポニーテールにした小さな頭が私の太ももの上に載っている。
「お姉ちゃん、何読んでいるの?」
「美樹ちゃんにはまだ早い本」
私は本を閉じて表紙が見えないように枕元に放り投げて、太ももからお腹までにじり寄ってくる頭の額を抑えた。
「えー、どうせ漫画でしょう? いいじゃん読ませてよ」
「美樹ちゃんがもうちょっと大きくなったら考える」
「そんな事言ってどうせお姉ちゃん読ませてくれないんでしょう」
そう言って唇を尖らせた美樹ちゃんは姿勢を変えて私の太ももの上に馬乗りになって顔を近づけてくる。
息遣いが聞こえるほど近づいた頭が私の胸の上に乗せられ、私はその髪を撫でる。
「重いんだけど」
「その本読ませてくれたらどいてあげる」
「じゃあそのままでいい」
今度は私の背中に無理やり腕を回される。
少女の唇が私の目の前に迫った。楽し気な瞳が私を見つめ、息遣いが耳に掛かる。
その吐息のくすぐったさに身をよじると、それを許さないという様に私を抱きしめる腕に力がこもった。
「でもね、お姉ちゃん。実は私、その本の内容知ってるんだ。前に、お姉ちゃんがお出かけしていた時にベッドの上においてあったのを読んじゃったの。お姉ちゃん、私とあんなことしたいの?」
耳をくすぐる声に熱が帯びたような気がする。
視線だけを向ければ、そこには何かを期待するような目が私を見ていた。
「ねえ、お姉ちゃん。私、いつまでも子供じゃないんだよ?」
「でも、私は大人として」
「ここはお姉ちゃんのお家だよ? そんな言い訳しなくても、いいんだよ?」
柔らかな感触が私の頬に触れる。
「ほら、私悪い子だよ」
熱を帯びた言葉が耳朶を打つ。
「私、お姉ちゃんが好き」
潤んだ瞳が私の視覚を刺激する。
「大人には言い訳がいるんなら、私がお姉ちゃんの言い訳になってあげる。だから、お姉ちゃん」
それは恥ずかしそうに、悲しそうに、そして期待を込められた瞳だった。
「好きって言ってよ」
だから、そんな少女の決意に、私は唇で答えた。
END
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