お話しする

「リュド、話をしてもかまわないか?」

 一応確認をとってみる。俺に話しかけているお嬢様を止めていない時点で答えはわかり切っているが、釘を刺された直後だしな。

「うむ、構わない」

 苦々しげにそう俺に伝える。ちょっとイラっとしている様子。色々振り回されてるんだろうなぁ。

 俺は1つ頷き、お嬢様に向き直る。

「では改めまして。マサタカです、よろしく」

 まずこちらから名乗ることでお嬢様の名前を聞き出したいな、っと。

「ご丁寧にありがとうございます。私は……、リゼとお呼びください」

 言葉遣い丁寧だねぇ、うん、とてもいい。何か、こっちに来てからエロおやじみたいな思考に拍車がかかってるような。元々多少はあったけど。

 握手は……止めとこうかな、斜め後ろのお姉さんが怖い。凄い形相してる。

「わかりました、リゼさん。

 それで、城壁ですよね」

 色の変わっている線から、この辺りでは洪水が起きてるのでは、と聞いてみる。

 と、リゼは瞳を輝かせる。

「まあ、確かにこの辺りは数年に一度、川の氾濫がありますけど、ちょっと見ただけでそんなに色々分かるんですね!凄いです!」

 そうそう、世の教えたがりおっさんはこういう反応を期待してるんだよ。お世辞や社交辞令と見分けられなきゃ、ただ痛いだけのおっさんだけどな。

 リゼは単純なのか何なのか、素直に凄いと思っているように見える。後ろ二人は、俺の話よりも俺の行動に注意を払ってるな。ものすごい勢いで警戒されている。女の子に至っては腰の小剣に手を置いている。

 これは、早めに出発しないとまずいかな。


「いろいろと考えながら見るようにすると、そのうちいろんなものが見えてきますよ。

 さて、こちらに来られたという事はそろそろ出発ですか?」

 リゼに問いかけながらも視線はリュドへ。

 リゼもリュドに視線を向け、リュドは1つ頷く。

「うむ。出発だ。申し訳ないが、マサタカ殿もこちらの指示で動いてもらっていいか?」

 当然だな。ふらふら動かれたら困るだろう。

「ああ、大したことはできないが、言ってくれ。出来る限りはしよう」

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