2人の少女

「ではもう少ししたら出発となるが、その前にいくらか説明をしておこう。

 まず我々は、冒険者パーティー『雪刃』だ。メンバーは私、リュドと、バーレント、それにテオの3人」

 テオってのはあのひょろい奴か。

 そしてパーティーが3人てことは女の子たちは護衛対象なんだな。

「現在は依頼であの子たち2人の護衛だ。申し訳ないが依頼上、紹介とかはできないので我慢してほしい」

「わかった。依頼ならしょうがないな」

「そう言ってもらえると助かる。助けてもらった身でかような頼みをするのは気が引けるが、なるべく接触しないでいただけると有難い」

「ああ、こちらからは話しかけないようにしよう」

 少なくとも今、こいつに悪感情を抱かれると困るのは俺だ。さっきから妙にムラムラして女の子たちが妙に気になるんだが我慢我慢。

「ありがとう。ここからの道だが、クラーセンの街は交易都市であるというのに、出入口が2か所、北東と北西にしかない。ここは出入り口から最も離れている南側だから、余裕を大目に見ても1時間あれば着くだろう」

「思いのほか近いな」

「うむ。大都市とはいえ城壁付きの街だ。内側ならば2時間程度で歩いて1回りできよう」

 それほど広くないんだな。

「わかった。じゃあ出発するときになったら声をかけてくれ。城壁とかいろいろ見てる」

「うむ、そろそろある程度服が乾く。着れるようになったらすぐ出発する」

「ああ」


 そうして俺は、ある程度乾いた体に寝間着を着て、城壁のほうに向かう。

 こういうのじっくる見るのは好きなんだよな。日本でも城とかよく行ってたし。


 近づいて城壁に触ってみる。表面はレンガか何かで覆っているのだろう、同じ大きさの石っぽいものが均等に並んでいる。そしてその隙間をコンクリートっぽいものが埋めているようだ。レンガ同士の隙間を綺麗にコンクリートで埋めており、登るのは難しそうだ。

 凄いな、コンクリあるんだ。そういえば地球でも、古代ローマからコンクリートっぽいもの使われてたんだっけ?軽く叩いたが、当然びくともするわけがなく、ずっしりとした手ごたえを感じる。

 ふと、壁が途中から色が変わっているのに気づく。概ね横一線に境がある。

「これは…… この辺りはもしかして、川が氾濫したりするんだろうか」

 勢いあまって中州にダンジョン作ってたら、ダンジョンが水没してた可能性あるな。作るときはその辺も考えたほうがよさそうだ。

 

 そんな事を考えてると、

「城壁が珍しいんですか?」

 とても澄んだ、美しい声が後ろからかけられる。

 え?と思って振り向くと、『雪刃』の護衛対象である女の子が2人、立っていた。

 話しかけてきたほうは、身長150ちょいくらい。肩で綺麗に切り揃えられた輝くような金髪、大きめのぱっちりとした青い瞳、小さめの口と不思議そうな表情。絵にかいたような美少女でお嬢様だ。15歳前後かな。ちなみに俺のモノをガン見してた方の美少女だ。

 体は多少鍛えているようで、体幹はしっかりしているし、ヒョロガリ的な印象はない。女の子らしい贅肉は胸を中心についているが、きちんと筋肉もある健康的な体つきだ。実にいい。明るい水色を中心に整えられた衣服は、一目でオーダーメイドとわかる新しい物で、丈夫そうだ。肌があまり露出しないように作られている。その上から明るめの茶色のフード付きローブを着ているが、あまり似合っていない。

 その後ろに控えているのは、濃い茶色の髪と目を持つ20歳前後の女性だ。こちらがすぐ目をそらしてた方。運動しやすそうな長さに整えられた髪、目にやや剣呑な光を湛え、こちらを警戒する様子が見える。背は160前後。お嬢様と同じフード付きローブを着ているが、こちらはしっくりくる。ローブの下は黒系統の服で、腰に小剣を佩いているのが見える。体は明らかに締まっており、体を動かすのが仕事であることがよくわかる。胸は運動を邪魔しない小ぶりな胸だ。

 おそらく俺が妙な真似をしたらお嬢様を守ろうと思っているんだろう、俺の一挙手一投足に注意を払っている。


 そしてその後ろに、ものすごく困った顔のリュドがいる。その表情があまりに面白く、ちょっと笑ってしまった。

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