初異世界人

「ありがとう、助かった」

 そう言いながら近寄ってくるのは、最後尾を走っていた男だ。兜を外して脇に抱えている。所々に金属を付けた皮鎧をまとって、背中に大剣を背負ってる。走っててうるさかったのは多分こいつだな。年齢は20かそこら、自分と同い年くらいの笑顔が似合う好青年だ。

「なに、困ったときはお互い様だ。しかし、あんた結構強そうだな。ゴブリンくらい平気じゃないのか?」

 そう問いかけてみる。ゴブリンって序盤の敵で雑魚なのでは?と思ったからだ。

「あー、俺たち3人だけなら、ゴブリン4匹と狼の数匹なら何とでもなる。けど今回は護衛対象がいたからな。しかも狼は結構多そうだった。10匹くらいいたと思う。それじゃあ勝てても護衛対象を守れん」

「なるほど、あの女の子2人か」

「ああ。その、助けてもらっといて悪いんだが、こっちからも聞いていいか?」

「ん?いいぞ」

「その……あんた、何者だ?見たところ完全に丸腰だし靴すら履いてない。そのくせ

 髪もひげもさっぱりしてるし浮浪者の類には見えない。そのうえあの投擲の腕だ」

 あぁ、なるほど。俺はどう見ても不審者だな。ちなみに髪はスポーツ刈りだ。


 さて、何と言って答えようか。

 1、全てをありのままにぶっちゃける。

 これは流石にないな。今からエロトラップダンジョン作る、異世界から来た男でチート持ってます、とか言ったら、狂人扱いかこの場で殺されるかのどっちかだな。

 2、ちょっと隠して異世界人であることだけ暴露。

 1よりはまともだ。ただ、この世界の事を知らないで言うのは怖い。もしかしたら異世界人は迫害される存在なのかもしれん。

 3、一般人のふりをする。

 ここの知識がないので無理。

 4、記憶喪失の真似。

 今までで一番無難かもしれない。ここを知らないことを隠さなくていいしな。

 5、遠くから来たことにする。

 これもいいな。どうやって来たか、が問題だが……。


「俺は二宮正隆という。一般人だ。実は、昨日自分の家で寝て、さっき起きたらこの辺に居たんだ。正直、ここがどこで今が何日なのかも全くわからん」

「そ、そうなのか」

「ああ。だから、助けたお礼と言っては何だが色々聞かせてくれると助かる。あとせめて靴が欲しいんだが何とかならないか?」

「そのくらいなら何とかなると思う。リーダーのところに行こう」

 そう言い歩き出そうとし、

「靴がないんだったな」

 と、腰のポーチから包帯を取り出す。

「これを足に巻いておくといい。裸足よりはましだ。この辺はムカデとかも出るしな」

 なるほど、これは助かる。

「ありがとう」

「なに、気にするな。巻き方は…うん、それで問題ないな。よし行こう。

 おっと、名乗ってなかったな。バーレントだ。そこの町で冒険者をしてる。よろしく」

 出された手を握る。握手は普通に通じるようだ。

「マサタカだ。よろしく」

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