夜泣きの隣

@szap

夜泣きの隣

エアコンを使うにはまだ涼しい夜

窓を開けて寝ていると、踏み切りの音が聞こえる


私の生まれ故郷には、電車は走っていなかった

夜には海の波音が重く響いていた


思えば、遠くまできたものだ

暑くて寝返りを繰り返す長子と、踏み切りの音でなんとなく目を覚ます次子に挟まれて、ぼんやりと考える


この町に海はないから、この子達はあの波の音を知らないで育つ

それは、私とはまるきり違う生き方をするということだ


私が教えられることなんてあるのかしら


なんて、ぐずぐず考えていると、次子がいよいよ起き出して、ふにゃふにゃと泣き始める


私が今すべきことは、この子に乳をやること

そして、長子が起きる前に泣き止んでもらうこと


ぼんやりした未来の話は、また今度

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