恋する人はよく喋る

鷹園十一

雨降って恋始まる

バス停、2月17日。


バス停のベンチに座るタク、21歳男子大学生。

イヤホンをつけ、歩いてくるアンリ、20歳女子大学生。


タク 無言(スマホを見ている)

アンリ 無言(時刻表の前で立ち止まる)

タク 無言(座り位置を少しずらす。顔を上げてアンリを見る)

アンリ 無言(タクの視線を背後にスマホを見たり見なかったり)

タク 「あのー」 

アンリ 無言(道路の様子を伺う)

タク 「あのー(少し大きい声)」

アンリ 無言(タクの声を背後にスマホを見たり見なかったり)

タク (立ち上がる)「あの」(肩トントン)

アンリ 「はい」(驚き)(イヤホン外す)

タク 「あの、座りますか?」(ベンチを指して)

アンリ 「あ、えーうん。座ります」(キョロキョロと頷き)(笑顔)

タク 「じゃあどうぞ」(ベンチを指す)

アンリ 「ありがとうございます」(軽くお辞儀)

タク 「いえ」(会釈で応じる)

アンリ 無言(向きを変え、座る)

タク 無言(アンリが立っていたところに、立つ)

アンリ 「あの!」(戸惑い)(大きな声)

タク 「はい?」(驚き)

アンリ 「座って、大丈夫ですよ?」(ハテナ)

タク「え、あーあーそうですよね。すみません」(まだ立ってる)(遠くを見たり)

アンリ「はは、どうぞ」(微笑)(少し端に寄って)(空いてるところを指す)

タク「失礼します」(端に腰掛ける)

(無言の間)

タク「結構、バス乗るんですか?」(か?で初めて顔を見る)

アンリ「このバスは、週に1回くらいは乗ります」(ずっとタクを見つめて)

タク「あ、そうなんですね」(視線を外して、前を向く)

アンリ「ですよね、乗ってたら会ってるはずなので」(微笑)(タクを見てる)

タク「あ、そうか…」(か…で顔を見る)

アンリ「でも、なんで今日はこのバスに、乗るんですか?どっか、おでかけ…?」

(どっか、おでかけ…?は小さい声)

タク「あぁはい、20分くらい?行ったら、和平市民会館ってあるじゃないですか?」

(基本的にずっと顔を見て)

アンリ「えぇ、あ、はい」(驚き)(頷き)

タク「『まちの写真展』ってのを今やってて」(丁寧)(喜び)

アンリ「私もです」(少し大きい声)

タク「はい?」(上ずる声)

アンリ「私も今日、そこに行きます」(上がるテンションを抑えて)

タク「え!あぁそうなんですね」(なんとも言えない)

アンリ「はい」(なんとも言えない)

タク「友達の撮った写真が展示されてるらしいので。ちょっと行ってみようかなーと」(気持ちを誤魔化す)(ごちゃごちゃ話す)

アンリ「そうなんですね」(目をそらす)

タク「お姉さんは、どうして行かれるんですか?」(テンション上がり中)

アンリ「あ、私は普通に、特に理由はなくて。元々写真とか好きなので」

(目を合わせて)(途中から逸らして)

タク「へーいいですね」(素敵な笑顔)

アンリ「はい。趣味というか、あ、雨…」(途中で空を見上げる)

タク「雨だ」(同じく空を見上げる)

アンリ「バスまで…あと、3分ですね」(スマホ見てタクを見る)

タク「あ、3分。じゃあ大丈夫かな」(空見てつぶやく)

アンリ「あ、強くなってきた」(空見てつぶやく)

タク「ほんとうだ、傘さしますか?」(アンリ見て)

アンリ「私、傘忘れちゃいました」(タクを見て)

タク「え?じゃあ貸します」(リュックを手で摸る)

アンリ「いいですいいです、濡れちゃいますよ」(遠慮)

タク「大丈夫です。なんなら、あげてもいいので」(傘を広げながら)

アンリ「いや申し訳ないです、もうバス来ますし…」

タク「大丈夫です」(途中で遮って傘に入れる)

アンリ「すみません」(軽く頭を下げる)

タク「いえ、バス停からも割と歩きますし。そこまでは一緒にいますよ」

(アンリの方を見ずに言う)

アンリ「ありがとうございます」(タクを見ずに言う)

(無言の間)

アンリ「あの、そこからは?」(タクを見て)

タク「そこから?」(アンリを見て)

アンリ「市民会館に着いた後です」(目をそらす)

タク「あーあと、後は適当に回ってお昼ごろ出ようかなと」(前を向いて)

アンリ「じゃあ、そこまで一緒にいてくれませんか?」(タクの方を見て)

タク「え?」(アンリを見る)

アンリ「お兄さんなんか安心感あるんです、実家みたいな?」(前を向いて)

タク「え、それ褒めてます?」(アンリを見る)

アンリ「はい、すごく」(タクを見る)

(バスの姿が見える)

タク「あ、来た」(道路を覗く)

アンリ「来ましたね」(一緒に覗く)

タク「楽しみですね」(アンリを見る)


〜終〜

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