ゼロマフィア

アンヘラ

第1話 異世界転移初日

異世界。


このワードを聞くと魔法や特殊能力…獣人やエルフなど…そして、チート能力で無双!とかを思い浮かべると思う。


私は常にそれを求めていた。

今の世界に飽きて、異世界に興味を持っていた。


アニメや漫画でよくある世界…そういう世界に行ってみたい。

これが私の願いだった。


そして、遂にそれが叶った!遂に異世界に来たのだ!

どういう因果かは分からないが、転移させられてこの世界に来た!


しかし、来た世界は望んだ世界ではなかった。

そりゃそうだ。私が選べないから、運任せになるし仕方がない。

まるで、ハズレくじを引いた気分である。


そんなことを考えていると━━━━━━━━━━━


パァン!

無音の廃倉庫内で、発砲音が響く。弾丸は私の頬を掠めて、血が出てくる。

私は、体を横向きにして回避を試みるが掠ってしまう。


「なんでこんな異世界に…ま、今は生き抜くことが優先事項か…」



私はそうポツリと零す。

今でも現実を受け止めきれない。

しかし、今は生き抜くことが優先だ。私は拳銃を取り出しかまえる。

一般的なハンドガンを。



目の前には、黒いスーツ等に身を包んだ仲間や敵の死体がある。

そう、ここは戦場だ。

ただし、マフィア同士の。


「……」


私は無言のまま、敵に拳銃を向ける。

そして再び周囲に発砲音が響く。

目の前の敵は頭と心臓を撃ち抜かれて死亡。

これで、やっとひとつの戦いが終わった。


次の瞬間、目の前が暗くなっていく。目覚ましのベルのような音が響く。


そうして目を覚ます。布団から飛び起きるように起き上がる。汗が酷く、息切れもしていた。

無理もない、あんな夢を見た後だ。こうなるのも仕方ない。


「疲れてんのかな…私…」


溜息をつきながらカーテンを開ける。外はまだ暗く、スマホの時間を見ると午前3時でそろそろ15分になりかけていた。

しかし、アラームは普段使わない。誰かがイタズラでつけたのかな。など考えながら欠伸あくびをする。

再びベットにもぐろうとした瞬間のこと。


ガシャーン!


ガラスが割れる音が響いた。その音に私はびっくりする。

ドキドキが凄まじい。こんな経験はしたことが1度もなかった。

ガラスの割れた音がした部屋に私は恐る恐る向かう。

スマホのライトを付け、その部屋に向かって歩いていく。

すると、棚を漁るように開ける音がしてきた。

ライトを消して、部屋をこっそり覗くと覆面を被った男が居たのだ。床にはガラスが散らばり、とにかく怖かった。


(強盗……。どうしよ……。ひ、ひとまず警察に……。)


身体を震わせながら後退りした。しかし、スマホを持っている手を緊張のせいで力を緩めてしまい、落としてしまう。


ドンッ


静かな空間に音が響く。私は頭がまっさらになった。

ふと目をやると、強盗が目の前にいた。私は恐怖から腰を抜かし、しりもちをつく。


(逃げないと……。早く……。)


涙目になりながらも、必死に立って逃げようとした。

だが、手を掴まれてしまう。この瞬間覚った。


(死んだ。)


男のポケットから包丁が出てきてそれが私の胸を貫く。

鋭い痛みがした。身体から生暖かい血が出てくる。その瞬間、意識が無くなった。


━━━━━━━━━━━━━━━

「……ま。……な……さ…。」

かすかに声が聞こえる。

優しい女性の声だ。


「う…うう…。」

重い目蓋を開けて目を覚ます。


彩奈あやな様。お目覚めになられましたか。」

「は…はい…。」


目の前には、メイド服に身を包んだ赤と紫のメッシュが入った女性がいた。背は160より下だろうか。

私は周りを見渡す。見た感じ、わたしが普段寝ている部屋だ。


「ここは……。私の家…?というか貴方…誰?」

「失礼致しました。転生者の方に自己紹介を忘れてしまうとは。私はレイカと申します。以後お見知り置きを。」


レイカと名乗る女性は、胸に手を添えて会釈し挨拶をした。

そして転生者?私は…転生をしたの…?状況が呑み込めずにいると、レイカが再び口を開く。


「困惑しているご様子ですね。無理もありません。こんな状況をのみ込めと言われましてもね。」

「………ここは?」

「日本です。貴方がいた世界とまんま同じです。違うのは……」


私はその言葉を聞く前に、着替えを持って家を出る。そして駆け出した。


「ちょっ…彩奈様!その格好で外は危険です!」


そんな忠告すら耳に入らないほど私は焦っていた。

ここが異世界?何もかも同じではないか。そう思いながら走っていく。しかし、途中で違和感に気づく。


「あれ…あんな建物あったっけ…?」

私の目の前に写ったもの。それは、現実世界には無かったビルだ。かなり高い。続けて

周囲を見渡すと、「能力者」という単語が見られた。私は目眩がしてきたので、ひとまず座ることに。


「なんなんだここ…。」

「おい。てめぇ。」


頭を抱えて下を向いて考えている時に声をかけられたが、手であっちに行けと言うように手を払った。

すると、いきなり胸ぐらを掴まれた。


「てめぇ!能力者アビリネーターでも無いくせに生意気なことしやがって!」

「ひっ…!」


チンピラ地味た男にそう目の前で怒鳴られた。私は怖くて縮こまってしまう。周りに助けを求めようと思ったが、声を出す前に裏路地に連れていかれてしまった。


「舐めた真似しやがって…」

「ひゃっ!」


私は地面に投げ捨てられてしまう。逃げたくても逃げられない。私はまた死ぬのか…。そう思っていた。

すると、男の横に何かが表示された。

そこには、死亡時間(残り20秒) 死因(射殺)と出てきた。


「射殺…?」

「あぁ?何言ってんだてめぇ。ん…?よく見たらいい女じゃねぇかよ。くくく…」


男は私の顔に触れてきた。私はその手を払った。

すると、男は激怒した。ナイフを取りだして、私に向ける。


「てめぇ…ここでぶっ殺してやる!」


私は目を瞑った。次の瞬間だった。


パァン!


発砲音がした。目を開けると、男が倒れていた。心臓を撃ち抜かれて。しかも謎の数字が見えてから20秒後に。

私は困惑した。状況が何もかも読めない。

そして、男を倒したのはレイカだった。銃を降ろすと私の元に駆け寄る。


「彩奈様。お怪我は。」

「大丈夫ですけど…どうしてここが…?」

「周辺からの聞き込みで。目撃してる人が多くて助かりましたよ。さぁ、帰りますよ。話したいことがありますので。」

「はい…。」

「あと、タメ口で構いませんよ。貴方のメイドですから。」

「う、うん…。」


私は麗華について行き、ひとまず家に帰ってきた。

レイカは、私が好きな紅茶を入れてくれた。そして、テーブルに置くと私の目の前に座った。


「貴方に教えたいこと。まず、この世界についてです。」

「それ、1番気になってた。」

「この世界は…簡単に言えばマフィアが大きな勢力を持ち、支配している世界です。」

「焼き菓子が世界を?」

「マフィアです。それはマフィン。」


呆れた顔で指摘する。少し悲しかった。

しかし、私の世界でマフィアなんて聞き馴染みがない。世界には居るが日本にはマフィアと呼ばれるのは私の知る限り居ないきがする。


「この世界では、マフィアが圧倒的勢力を持っています。政府が生んだのもあれば、欲望のまま生まれたものも。」

「正義のマフィアみたいなのは居ないの?」

「居ますよ。私が所属するマフィアがそれです。」


私は紅茶を飲みながら話を聞いていた。しかし、マフィアどうのこうのよりも1番気になるのがあった。

そう、能力者アビリネーターだ。


「レイカ。能力者アビリネーターって…なんなの?」

「特異的力を持つ人のことを言います。マフィアには、能力者アビリネーターが沢山います。主な戦力はそれです。」

「……私でもマフィアに入れる?」

「はい。むしろ…貴方をこの世界に呼んだ目的はそれですから。」

「この世界に…呼んだ?どういうこと?」

「おっと、口が滑りました。今のは忘れてください…。」

「…私が入らなかったらどうなるの?」

「……それは…。」


レイカは口ごもっている。しかし、私は早く知りたくて急かしてしまう。


「教えて。」

「わかり…ました…。率直に言います。世界は滅亡…してしまうかもしれません。」

「は?」


私は呆然とした。いきなり世界というワードが出てくるとは思わなかった。


「正確にいえば、支配されるです。マフィアは世界中に存在しています。マフィアが支配している国もあるくらいですし…。それに、世界でマフィア同士の争いも起きています。つまり━━━━」

「つまり、マフィア同士が争っていき勝ったマフィアが支配する範囲を広げていく…。そして、最後に残ったマフィアが世界を手中に治める。そうなると、マフィアが支配する世界の誕生。そういうことでしょ。」

「はい…。一応、国際連合が作った対マフィア組織もありますが…思うように動いてくれないということで…。」

「………。」


マフィアによって管理社会が生まれ、世界が支配される…。

前世で普通のJK…いや、普通・・ではなかったけど…そんな私には理解ができない。規模がデカすぎ。

でも…私がなんで呼ばれたのか分からないし…やるしかないよね…。断るとやばい事になりそうだし。


「彩奈様?」

「…分かった。やるよ。マフィア。」

「あ…ありがどうございまず…。えっぐ…えっぐ…。」

「そんな号泣することじゃないでしょ!全くもう!」


急に大泣きをして泣きじゃくるレイカのことを宥め、落ち着くまでしばらく待つことになった。


「お見苦しいところをお見せしてしまいました…では、こちらを。」


そう言い、ぜフィア加入申請書と書かれた紙を手渡す。

なんか学校の行事参加の時に配られる許可証みたいだなと思いながら受け取る。

名前さえ書けば良いとのことだったため、その紙にサラサラっと名前を記入してそれを手渡す。

しかし、レイカはそれを見て不満を漏らす。


「…そんな綺麗じゃないですね。女性だからつい綺麗かと。」

「がーん!女子が全員きれいな字書けると思うな!」

「も、申し訳ありません。ひとまず明日、ぜフィア本部に行きますよ。採用試験は当然ありますからね。」

「うぅ…分かってるよ…。」


私は少し悔しがりながら、明日に備えることにした。ご飯はレイカが作ってくれるらしく、私はそれを待ちながら夕焼けを眺めながら、少し考え事をしていた。


マフィア…。アニメや漫画でしか見たことは無かったな…。

だけど、ここは現実。まさかこんな世界にくるとは思いもよらなかった。

なるようになれ…としか思えないけどやるしかない。


そう心の中で思いながら、私はここでの生活を始めることになった。規模が漠然としているが、一からコツコツやる。そう心に決めて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゼロマフィア アンヘラ @Anhera_0327

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ