第20話
あの喧嘩をした日から一つ夜が明けた。
彼女の本心を気づかせてあげるなんていう余計なお世話かもしれない行動を昨日した僕はそれが彼女にとって正解だったか、不正解だったかは分からないままでいた。
もう少し優しい声かけをしてあげれば、とか
「次がない」なんて言葉は酷過ぎたな、とか様々な思考を巡らせる。
彼女には今日会えたらちゃんと謝ろう。
そう心に誓いながら登校したいつもの通学路はいつもより色が濃い気がした。
でもまずは今日学校でしなければいけないことがある。
それは透くんに僕のことを庇ってくれてありがとう、と感謝を伝えることだ。
彼女に言葉を押し付ける前にまず僕が変わらないといけない。
変わる、その第一歩目はリーダーへの立候補。
それを達成した先に立ちはだかった大きな壁を僕は僕自身を変えるために乗り越えなければいけない。
いつもだったら死にたい貯金に愚痴を溢して終わってしまうはずだったその日の後悔を変えようと決めた。
「透さん!あの、この前はありがとう。」
透くんの席まで行って声を掛ける。
以前までの僕じゃする筈のなかった行動をこうして起こせてる時点で成長だ。
「この前…?あぁ、全然大丈夫だよ。もとはといえば、しょうが悪いんだしね。」
そう僕に笑いかけてくれる透くん。
こんなにも優しい人がいる世界を憎く思ってしまっていた過去の自分を少し僻む。
「絵も何とか完成しそうで良かった。」
そう、今日の朝学校に来るとしょうくん含め、教室でキャッチボールをしていた数名が破れたところの修正をしてくれていた。
本気を出せばなんでもこなせるような彼らにとってこの作業は簡単だったようで始業前には大方破れる前と同じ形に戻っていた。
「それはそらさんが頑張ってる姿をみんなが見たから反省できてやる気が出たんだよ。ありがとう。いつも最後まで頑張ってくれて。」
「いやいや、こちらこそ、透さんも手伝ってくれたし。」
なんだか普通の高校生らしい会話をできることが嬉しかった。
「本番、楽しみだね。親とか見に来てくれるの?」
「いや、仕事が忙しくて来られないと思
う。…見に来て欲しい人はいるけど。」
見に来て欲しい人、それはこのクラスの一員だけど誰にも知られてない。
僕を介してクラスに参加してくれている、そんな人。
「誰々?」
興味深そうに聞いてくれる透くんに僕は口角を上げながら答えた。
「僕の大切な人。」
そう、大切な人。変わるきっかけをくれた人。
「え、彼女?」
そんな男子高校生の好奇心を受け取り僕は続ける。
「まさか…。そういうのじゃないよ。」
「もう誘ってるの?」
ふと頭をよぎる喧嘩をしているという事実。
僕は知っていた。
こんなことで崩れることはないと。
彼女は伝えればちゃんと分かってくれる人だと。
それでも、ほんの数%のもしかしたら、という感情に苛まれ言葉を濁してしまう。
「いや、まだ。」
「なんで?誘えばいいじゃん?」
「いま喧嘩中で…。」
「誘うついでに仲直りもしてきなよ。ほら
後悔先に立たずっていうじゃん。」
そうだ。後悔してからでは遅いんだ。
彼女なら尚更。
「そうだね。」
そう呟いた僕はいつもより強くいられただろうか。
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