葉子の放浪〜ここ何処ですか?

いずいし

第1話 ここ何処ですか?

夜は嫌いだ。

眠くなって布団に潜ったのに、眼を瞑って眠りにつけるはずの脳裏に様々な悔恨が浮かんでくるから。


だからか、何時からか私は、いわゆる「寝落ち」をする様になった。

暗くなければ良い。眠りに落ちるまでの暗闇が、余計な思考を手繰り寄せるなら、眠るときも明るいままにしよう。


部屋の照明を点け、当たり障りが無いネットを見たりしながら、眠りを待つ。

横になって手軽に操作出来るスマホが普及して本当に良かった。


仕事をしつつ、そんな生活を数年送っていた。

もちろん、良い生活習慣では無いことは重々承知だ。

でも無いよりマシな、途中で目を覚ます程の浅い眠り。


家族経営あるあるのルーズな管理や、良く言えば少数精鋭の勤務体制は、日々の残業や休日出勤を「いつも有難うね〜!」で済まされ、取れない疲れを蓄積させていた。


気付けば、「疲れた時に〜!」効く錠剤や、「痛みに速効〜!」が売りの頭痛薬を常飲して誤魔化す日々。


でも、誤魔化しは誤魔化し。改善ではない。

「身体は心の道連れ」とは良く言ったものだ。


身体のSOSを誤魔化し続けた私は、いつもの浅い眠りの最中に、今まで経験した事の無い激しい頭痛に見舞われ、「流石にヤバい!」と思った時には意識を失くしていた。



???

明るい……。

なんとか事なきを得て、生きながらえた?

あぁ、でもこの明るさは遅刻確定だな…。


でもどうせ遅刻なら、病院は行かなきゃだよね…。

病院嫌い。行きたくな〜い!会社にも行きたくな〜い!


目を閉じ、横になったままグズグズしていると、現状の違和感にやっと気付く。


「えっ??」


あれ?お布団は?!

嘘!何も無い!!


身体を起こし周囲を見回すも、真っ白空間。

ここ私の部屋?!

何コレ、怖い!!


パニック状態で、心拍数が上がる。

それによって、自分がまだ生きていると感じた。


様変わりした状況に狼狽え、何をどうすれば良いか判断が付かず、立ち上がって右往左往していると、背後に何かの気配を感じ、振り向いた。


その瞬間、真っ白な中、さらなる強くて大きな光源に曝され視界を奪われる。

堪らずに手を翳し、目をつぶる。


……しばらくして、そろそろと目を開けた。


「はぁ?!」

自分でも分かる、物凄く間抜けな声が出た。

でもしょうがないと思うの。


今度は暗い。

見えなくは無いけど、若干湿って薄暗い。

どう言うこと?ここは何処よ!!


しかも野外?!洞窟?!素足で足の裏が痛いんだけど!ユニ◯ロのパジャマ姿なんだけど!


拉致・監禁の文字が、頭に浮かぶ。

拘束はされていないけど、自分の置かれている状況変化に、息を飲む。


少なくとも、このままでは不味い。

慎重に行動して、状況の改善と把握をしないと…。


しかしこの環境が、昔観たホラー映画を迂闊にも思い出させた。


確か、古井戸の様な穴に監禁された主人公の女性が、登って脱出を試みようと岩肌に手を掛けた時、以前同じ様に監禁され、脱出しようとしたであろう人のね…剥がれた爪が岩の間にね…複数残ってたんだっけな………。


あぁ!駄目だ!何を思い出してくれてんだ!

暗いのが悪いんだ!明るい所へ早く行こう!!






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




また、洞窟スタート&放置ですね、って。

こちらは、ボチボチ更新します。



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