不適切
むこねーさん
不適切
不適切
「飲むのすごい久しぶりじゃない?」
「お互い環境変わったからなぁ。ま、そんなもんだろ。」
差し出されたグラスにグラスを合わせ、カチンと鳴らす。同期入社の
「新婚生活どうよ?」
「仕事忙しい人だから喋る暇もないよ。清野はどうなの?」
「ぼちぼちってやつだな。推し?っていうの?いるらしくてさ、嫁はそれに夢中。」
「今時だねぇ。寂しくないの?」
「そりゃ寂しいよ?でも今更俺に来られても困るかもな。」
「困る?なんで?」
「愛とか恋とかって時期はもうとっくに過ぎたからな。嫁にはほっとかれてるくらいがちょうどいいよ。」
「でも寂しいんでしょ?」
「だからお前誘ったんだよ。」
「な、なにそれ。」
「お前は?寂しくないわけ?」
「寂しい」と言えば、清野はどうするんだろうか。このまま雰囲気に流されて、私たちはまたタブーを増やしてしまうんだろうか。言い淀む私の手に、清野は手を重ねてくる。以前とは違う、お互いの家庭がある私たちが、こんな空気の中で手を絡め合っているのは不適切なんだろう。清野はもうなにも聞いてこなかったし、私もなにも言えなかった。私はどこかで望んでいたのかも知れない。この人との、この不適切な関係を。
End.
不適切 むこねーさん @muconee
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