第7話 適材適所2

「自分のした事を謝る事も出来ないなんて、最低だな。」


…この男、昨日から本当にムカつく。

ちゃんと見てもないのに、偉そうにされる筋合いないんだけど。


「殿下!私なんかのためにフェルト様と喧嘩をしないでください。」

「いや、いいんだ。シュナが悪いんだから。」


もう一度(心の中で)言おう、

何かね、この茶番は。


「シュナ、君は彼女が平民だから謝らないのだろう?」


悪い事をしたら謝るけど、何故一方的に責められて謝罪を強いられないといけないの。

そんな理不尽な扱い、転生してまでされたくない。


「最低なのは殿下ではないかしら。」

「なんだと?」

「だってそうではありませんか。その女の言う事が正しいかどうか解らないのに、一方的に信じるんですもの。」

「俺は見ていたんだ。」

「では、殿下の目は節穴なのですね。」

「貴様…無礼だぞ…」

「無礼で結構ですわ。」


王子だからって、シュナに酷い態度をとり過ぎだよね。婚約にどんな意味があるか解ってないなら、私がこれから少しずつ知らしめてやるわ。


「その女の味方をするのは構いませんけど、フェルト侯爵家を敵にまわせば国王陛下に皺寄せがいくかもしれませんよ。そんな事も解らないようでは、『王太子失格』と言わざるをえないですわね。」

「…っ」


アレックスが悔しそうな顔してるし、いい気味だわ。これくらいで言い返す事も出来ないなら、偉そうにしなけれないいのに。

この様子だと、シュナは今まで我慢してたって事だよね。だから、アレックスは付け上がってた。


国王はフェルト侯爵家のお金が目当てでシュナと婚約を進めているのは知ってる。小説では、国王が『シュナの機嫌を損ねるな』とアレックスに注意してた場面があった。シュナがそれなりに優位に立てるのだと私は知ってるのよ。


「私に偉そうにするのは、婚約破棄してからにしてくださいね。では、お互いこれ以上不快な思いをしないために、これから出来るだけ接触を避ける事に致しましょう。ごきげんよう。」


私はハンカチを受け取らず、その場を去った。


今、結構悪役令嬢っぽく喋れてたよね。この口調で人を馬鹿にするのはなかなか楽しい。


私はこの小説では悪役、善人になって助かろうなんてこれっぽっちも思ってない。

だから、言いたい事は言うし、やりたい事は何でもやる。

今、やりたい事を1つ見つけた。

まずはアレックスをギャフンと言わせてやる!

私が殺されるまでにね。

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