第3話 一応初対面

「お嬢様、今日は機嫌が宜しいですね。」

「そう?」

「はい、芝生に寝転んだ時は驚きましたが、目覚めてからはスッキリした表情をなさってますので。」

「気分がいいのは確かだわ。」


このメイドさんがシュナの専属であれば、たしか名前はネロだよね。


「ネロ、アレックス殿下が来るのは何時だったかしら?」

「14時です。お忘れですか?」

「そうだったわね。ふふ、まだ少し寝ぼけてるみたい。」


アレックスと会うのは14時。奴がさっさと帰ってくれれば、その後やりたい事が出来る。

聖女が出てきたからって直ぐに乗り換えるような男と会うなんて、時間の無駄でしかないけど。



13時55分

王子の乗る馬車が邸に到着した。


軍服?のようなものを着た黒髪で短髪の男の人が1人降りた後、続いて金髪で青い瞳をした長身の男が降りてきた。

たしか、表紙に描かれていたのはこんな顔の男だったと思う。

という事は、これがアレックスで、もう1人は近衛騎士のスクリュー。


「……」

「……」


迎えに出てきたのはいいけれど、挨拶の仕方なんて全く解らない…。今日までこの小説せかいで生きてきたシュナの記憶が残っていないんだから。


う~ん…

とりあえず、笑っとこう。


「挨拶もできないのか。」


アレックスはボソッと呟いて、邸に入ってしまった。


小説では『シュナのテンションが高すぎて面倒』とか、『ベタベタしつこい』とか、『喋るな』とか散々な扱いをしていたのに、笑顔で静かにしててもこんな扱いなんだ。


性格や態度を改めれば、シュナに対して普通に接するのかと思ったけど、そうではないみたい。


『悪役令嬢に転生した私は、婚約破棄されるはずの王太子に何故か溺愛されてます。』的な小説を友達は沢山よんでたけど、この小説世界ではは成り立たないとだと判明。



サロンには私達2人と、ネロとスクリューがいるだけ。


何も喋る事もないし、どうしようかな。

所詮、もうすぐ聖女に乗り換える男、これから一切口を利かなくても私的には問題ないし…。

さっさと帰ってくれないかな。…とは言えないけども。


「帰る。」


用意したお菓子に手をつけず、お茶を一杯飲んだアレックスが席を立った。


やった!!


「はい、さようなら。お気をつけて。」


私が笑顔で言うと、アレックスの眉間に皺が寄った。


「お嬢様、お見送りに…」

「あぁ…」


見送りに来ない事を怒ってるんだ。小さい男ね。








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