第2話 死んだらしい2
「……」
とりあえず半身を起こしてみた。私がいる所は手入れの行きとどいた庭…みたいな所で、見たこともない場所。
「シュナお嬢様?」
「……」
シュナ…って、私を見て言ってるよね。あのメイドさん。
どうしよう、理解できない。
雷に撃たれた衝撃は覚えているし、死んだのは間違いないと思う。
何となく手を見ると、真っ白で傷一つない。
どういう事?雷にうたれたにしては綺麗すぎる。
もし、雷が私の勘違いだとしても、この手はおかしい。
私の手は畑仕事で出来た豆のせいで、皮がごつくてカチカチでザラザラのはず。
「ん?」
よく見れば手だけじゃない。着てる服もいつもと違う!
私はいつもTシャツにカーゴパンツ、ゴム長なんだけども。……なに、この無駄に生地を消費しているワンピースは。
「もうすぐアレックス殿下がいらっしゃいますので、身支度を整えましょう。」
アレックス殿下って誰かね?
アレックス、アレックス……
唯一思い当たるとすれば、友達から借りた流行りのライトノベル的なものの登場人物だわ。
そういえば、シュナという名も出てくるよね。
『聖女が召喚されたから』…と、あっさりアレックスに捨てられた婚約者で悪役令嬢。その名前が確かシュナ。
いや、まって。そうなると、ここは小説の世界で、私は異世界転生したという事に…。
そんなものが本当にあるの?
今はシュナの記憶がハッキリしないけれど、小説の内容なら覚えてる。
たしか、シュナの最後は断罪。
聖女を毒殺しようとしたり、色んな悪事を働いてたし、まぁ仕方がない。
今の私は、その断罪されるシュナ・フェルト侯爵令嬢という事。
フェルト侯爵家は筆頭侯爵家。
これは……、もしかして贅沢し放題なのでは?
現実世界で良いことなんて1つもなかった。
幼少に両親を亡くしてから、叔母と叔父にこき使われて生きてきた。
朝早くから畑で働いて、朝食を作って、お弁当作って、学校に行って、帰ったらすぐにまた畑仕事。
夕食の買い物は自転車で片道10キロ。夕食作り、掃除、洗濯、その他諸々…。雑用は全て押し付けられた。自分の時間なんてものは全くなかった。
叔父に襲われそうになった事もあったけど、その時は鶏小屋で寝た。
このルーティン、地獄でしかなかった。
必死で働いて、いつかは良い事があると信じていたけど、私は簡単に死んだ。
そして、悪役令嬢に転生。
「ふふふ…」
信じるも信じないもない、夢でも現実でも喜んで受け入れるわよ!
たとえ断罪がまっていようと構わない。
努力しても良い事をしても、長生き出来るわけじゃないのは立証済み。
だったら、今この瞬間、贅沢三昧出来れば文句なしよ!
だからもう、これ以上我慢なんてしない。
私は小説通りに贅沢三昧、悪行三昧しつくして、そして最後は断罪上等!
別に筋書きを変えるつもりもないわ。
まぁ、少し違う所があるとすれば、アレックス・トラファルト王太子に恋愛感情など一切ないという事かな。
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