第13話 底辺配信者、95階層の探索を終了する。

〈〈〈〈〈和歌奈さんが冒険者を辞めた原因、お前かぁぁぁ!!!〉〉〉〉〉


 視聴者から一斉にツッコまれる。


 しかし、心当たりのない俺は、視聴者から貰ったツッコミに首を傾げつつ、話を和歌奈さんからの指導内容に戻す。


「俺が原因ではないと思うが、とりあえず話を元に戻すぞ。俺は指導を受けたその日だけで和歌奈さんから戦う力と冒険者として必要な知識、一般常識を学んだ。その結果、今も冒険者として活動できてるんだ」


〈いや一般常識は学んでねぇよ〉


〈知識も学んでるか怪しいわww〉


〈お前は戦う力しか学んでないだろww〉


〈知識や常識を学んでたら、レッドドラゴンや白虎を雑魚モンスター呼ばわりしねぇよ!〉


〈そもそも、たった1日で全てを学ぶことはできんだろ!〉


「確かに1日しか指導をしてくれなかったが、俺が80階のフロアボスを1人で倒し終えた後、『これ以上、私が教えることはないよ』と言われた。つまり俺は、和歌奈さんから戦闘技術や冒険者としての知識、一般常識を全て学び終えたということだ」


〈そうじゃねぇよww〉


〈知識と一般常識に関しては一切学んでないわ!〉


〈和歌奈さん、教えるの諦めとるww〉


「いやいや、知識と一般常識についてもしっかりと学んだぞ?」


〈え?教えられてこの有様?〉


〈じゃあ、何を学んだのか言ってみろよ〉


「そうだな。教えてもらった中で1番役に立ってることは、ダンジョン内にある罠に関してだ〉


〈おぉ、まともな知識を教えてもらってるな〉


〈きっと罠の見つけ方と解除方法だろう。罠の見つけ方と解除方法は初心者が最初に学ぶことの一つだ〉


〈さすが和歌奈さん。やっぱり基礎中の基礎のことは教えたんだな〉


〈で、なんて教えてもらったんだ?〉


「あぁ。なんか解除方法とか色々教わったけど全く理解できなかったから最終的に『“罠が作動した!”と思った時はダッシュで逃げてね』って教わった」


〈作動しとるやないか〉


〈罠の解除方法知らんのかいっ!〉


〈和歌奈さーん!言いたいことが山ほどありまーす!〉


〈和歌奈さんが教えることを放棄したので、常識知らずの化け物になってますよー?〉


「別に罠の解除方法なんかなくてもダンジョン探索はできるからな。“作動したっ!”と思ってダッシュすれば、罠なんか回避できるし」


〈それはお前だけだww〉


〈みんな罠にビビりながら探索してるんだよ!〉


〈結果的に和歌奈さんの指導って正しかったのか〉


〈1度も罠による妨害を受けてないらしいからな。めっちゃ作動させてるだろうが〉


「そんな感じで、俺は今も元気に冒険者をすることができてるってことだ」


〈なるほど。どのように常識知らずの化け物になったかがよく分かった〉


〈和歌奈さんから全てのことを学びきったと思ってるから、ダンジョンやモンスターのことで知らないことがたくさんあることも分かった〉


〈そうらしいな。どーやって指導を受けた初日に80階のフロアボスを倒したかはわからなかったが〉


〈どうせ、訳の分からないことを言われるだけだ〉


〈〈〈〈〈それな〉〉〉〉〉


「お前ら仲良いな」


 以心伝心レベルで同じコメントが投稿される。


「お、なんか師匠の話をしてたら時間が経ってしまったぞ。ダンジョン探索の様子を見たかった視聴者には申し訳ないことをしたな」


〈大丈夫だ。とても面白かったから〉


〈あぁ。それを証明するように、同接者は逆に増えてるから〉


「マジだ。若干だが増えてるぞ」


 俺の話のどこが面白かったのかは知らんが、何故か同接者は若干増えている。


「まぁいい。今日は俺の配信を見てくれてありがとう」


〈今日も面白かったぞー!〉


〈トークも最高でした!〉


〈お兄ちゃん!今日も面白かったよー!次も雑魚モンスター相手に瞬殺するところ見せてねー!〉


〈今日も控えめに言って最高だった。特に奥の手を見れたのは満足度が高い〉


〈奥の手は良かったな〜。俺も満足度高いわ〉


〈「いいぞ!もっとやれ!」って盛り上がってたからなww〉


「次回の配信日は決まってないが、決まった際はお知らせするよ。では!」


 俺はカメラに手を振って配信を終了させる。


「ふぅ。さて、帰るか」


 配信の片付けが終わった後、俺は95階層に入ってきた入り口を目指し、歩き始める。


 すると、一件のメッセージが届く。


(お、和歌奈さんからメッセージだ。配信が終わったタイミングってことは、俺の配信を見てたかもしれないな)


 そんなことを思いながらメッセージを確認する。


『配信お疲れー!私のことを師匠と呼んでくれて嬉しかったよー!』


 和歌奈さんらしいメッセージだと思い、少し笑みが溢れる。


『突然だけど、今から時間あるかな?あるなら『閃光』のギルドに来てほしいんだー。裕哉くんに、愛菜ちゃんたちを助けてくれたご褒美と用事があるんだよ!』


「ご褒美と用事?なんだろ?」


 俺は疑問に思いつつも、『換金後に向かいます』とメッセージを送る。


 メッセージを送信後、俺は美月と紗枝に帰りが遅くなることを伝えつつ急いで95階層を出て冒険者協会へ行く。


 そこで七海さんに魔石を預け、冒険者協会の近くにある『閃光』ギルドへと足を運ぶ。


「ここに来るのは初めてだな」


 俺は真新しい1つの建物に到着する。


 2年前、和歌奈さんが冒険者を引退したと同時に設立した『閃光』ギルドは、和歌奈さんの人望により勢力を拡大し、現在では日本有数のトップギルドとなっている。


 中でも『閃光』ギルドはギルドマスターがトッププレイヤーだった和歌奈さんということで、和歌奈さんに憧れた女の子がたくさん集まり、設立当初から職員や冒険者は女の子しかいない特殊なギルドだ。


(女子校に入るような気分になるな。入ったことないけど)


 そんなことを思いつつ、『閃光』ギルドへと入る。


 すると…


「「「お、おかえりなさいませ。ご主人様」」」


「………え?」


 何故か顔を真っ赤にしてメイド服を着ている星野さんと園田さん、それに足立さんの3人がいた。


(もしかして和歌奈さんの言ってたご褒美ってこれ?)


 そんなことを思った。

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