第14話 底辺配信者、依頼を受ける。
俺が『閃光』ギルドに入ると、1階ロビーで何故か顔を真っ赤にしてメイド服を着ている星野さんと園田さん、それに足立さんの3人がいた。
「えーっと……な、何してるの?」
「ほらっ!ドン引きされてるやん!」
「あはは……結構恥ずかしい想いをしたんですけどね」
「そ、そうね。スカートは短いし、布面積は少ないし」
園田さんの言った通り、3人が着ているメイド服は太ももの辺りまでしか長さがなく、胸元が大胆に開いている。
そのため、スラッとした体型の星野さんはシミ一つない綺麗な脚に目を奪われ、ロリ巨乳の足立さんと巨乳で身体付きがエッチな園田さんには大胆に開かれた胸元に視線を釘付けされる。
しばらく3人の姿に見惚れていると…
「あ、あんまり見ないでくれ!」
「ご、ごめんなさい!」
星野さんに注意され、慌てて視線を逸らす。
「じゃ、じゃあ、さっそくギルドマスターの部屋に案内するから、ついてきてくれ。できるだけアタシたちは見ずに」
「は、はい。わかりました」
俺は注文通り星野さんたちを見ずに、和歌奈さんのもとへ向かった。
星野さんに案内され、1つの部屋にたどり着く。
「和歌奈さん、入ります」
「いいよー!」
部屋の中から聞こえてきた返事を確認して、俺たちは部屋に入る。
「久しぶりだね!裕哉くん!元気してたー?」
そこには俺の師匠で『閃光』のギルドマスターを務める和歌奈さんがいた。
金色の髪を腰まで伸ばし、25歳とは思えないほど可愛らしい笑顔で俺たちを見ている。
「はい、元気にしてますよ」
「うんうん!昨日、今日の配信を見てたから元気なのは分かってたんだけどね!」
「じゃあ、聞かないでください」
「もう!これは社交辞令ってやつなの!」
頬をぷくーっ!と膨らませて怒ってる雰囲気を出す。
(相変わらず表情が豊かだなぁ。ギルドマスターじゃなくてアイドルした方がいいんじゃないか?)
そんなことを関わる度に思う。
そう思っていると、ジェスチャーでソファーに座るよう指示され、俺はソファーに腰掛ける。
それに併せて、メイド服を着ている3人は和歌奈さんの側に移動する。
「で、どーだった!?」
「何がですか?」
「何って3人のメイド服だよ!可愛いでしょ!」
「そ、そうですね。可愛いと思います」
“ボッ!”と俺の言葉に3人の顔が赤くなる。
「もしかして、和歌奈さんの言ってたご褒美って星野さんたちがメイド服を着て俺を出迎えることですか?」
「そうだよー!だって男の子はみんなメイドが好きからね!」
ものすごい偏見を持ってるようだ。否定はしないが。
「さっき、裕哉くんの配信を見てたら3人から裕哉くんへのプレゼントの内容を相談されたんだー!師匠なら弟子の好きな物を知ってるだろうって!」
「そういえば昨日90階層を出る時、俺にプレゼントを用意するって言ってましたね」
昨日、帰還時に3人から言われたことを思い出す。
「それでプレゼント決めに悩んでるみたいだったから、メイド服でおもてなしすることを強制……ではなく提案したんだー!」
「なるほど、ギルマス命令でメイド服を着せられたんですね」
「そうなんだよ」
「しかも、裕哉さんが来るまで1階ロビーで待ち続けなければならず、さっきまでメイド服を着たまま、裕哉さんを1階ロビーで待ち続けてました」
「おかげで1階にいた職員から変な目で見られたわ」
「………なんか、ごめんなさい」
「いいんだ。全て和歌奈さんが悪い」
そこは否定しない。
「そもそも俺へのプレゼントなんてなんでも良かったんですよ?最悪、無くても俺は気にしませんし」
「それはダメだ!命の恩人にプレゼント無しというのはアタシらが許さん!」
「そうですよ!だから、裕哉さんが喜びそうなプレゼントを真剣に考えたんです!」
「でも思いつかなかったから和歌奈さんに相談したの。そしたら……」
「何故かメイド服を着せられたと」
3人が頷く。
「だって君たち、昨日からずーっとプレゼントの話をしてたんだよ!裕哉くんへのプレゼントが気になってるようだと、これからお願いしたい任務に集中できないと思ったんだ!だから、『メイド服で裕哉くんをおもてなし』が裕哉くんへのプレゼントでいいと思ったんだよ!」
どうやら俺へのプレゼント選びにかなり悩まされていたようだ。
(なるほど。俺へのプレゼントが3人にとって足枷になってたんだな。3人を悩ませたのなら、こんな提案しなければよかった)
そう思い、俺は星野さんたちへ話しかける。
「俺は星野さんと園田さん、足立さんの可愛いメイド姿を見れて、とても満足です。プレゼント、ありがとうございました」
「こ、こんなのがプレゼントでいいのか?」
「はい。最高のプレゼントです。だって、美少女3人のメイド姿が見れたんですから」
「そ、そうか……」
「ウチなんかのメイド姿で喜んでもらえるなら」
「そ、そうね。恥ずかしかったけど、裕哉さんが喜んでくれたのなら、頑張って着た甲斐があったわ」
3人が照れつつも納得してくれる。
(ふぅ、無事に『メイド姿でおもてなし』がプレゼントになったぞ。まさか、俺へのプレゼントをずーっと考えてるとは思わなかったが)
そんなことを思いつつ、俺は和歌奈さんへ話しかける。
「和歌奈さんの言ってたご褒美はいただきましたが、もう一つの用事ってなんですか?」
俺は和歌奈さんから、ご褒美と用事があるとのことで呼び出された。
「あ、それはね。裕哉くんと『雪月花』の3人にある依頼をしたくて、ここに呼んだんだー」
「俺と『雪月花』の3人に依頼ですか?」
「うん。最近、東京で新しくダンジョンが出現したことは知ってるよね?」
「はい。SNSとかで話題になってましたから」
「ダンジョンは出現した当初、ダンジョンにランク付けをするため、どんなモンスターが出現するか下調べする必要があるんだよ。その調査を『雪月花』と裕哉くんにお願いしたいなーって思って」
「なるほど。引き受けてもいいのですが、俺は雑魚モンスターしか倒せないので、星野さんたちの足を盛大に引っ張ります。正直、俺じゃない人にお願いした方がいいと思いますよ」
「いや、アタシらの方が盛大に足を引っ張るから」
「うん。この返答は想定してた」
星野さんと和歌奈さんが何かを呟く。
聞こえなかったため聞き返そうとすると、和歌奈さんが大きな声で「大丈夫だよ!裕哉くん!」と言ってくる。
「『雪月花』の3人はSランクパーティーなんだよ!だから、裕哉くんが頑張ることなんてないかもしれないよ!」
「っ!そうか!つまり俺は荷物持ちという形で同行すればいいんですね!」
「その通り!」
「俺、荷物持ちとして皆さんをサポートします!足を引っ張らないよう頑張りますので、よろしくお願いします!」
俺は星野さんたちへ頭を下げる。
「さすが裕哉くんの師匠です。弟子を上手くコントロールしてますね」
「私、気づいたんだ。裕哉くんに知識や常識を教えるより、手玉に取る方が簡単だってことに」
「あ、やっぱり知識や常識を教えたんですね」
「うん。でも規格外の力のせいで何も理解してくれなくて。指導初日にモンスターのランクについて教えた時は『え?今倒した80階フロアボスがA級上位のモンスター?ははっ!初心者の俺がA級上位のモンスターを倒せるわけないじゃないですか!面白い冗談言いますね!』って信じてくれなかった」
「………」
「他にも色々と説明したけど『初心者の俺が〜』とかで全然信じてくれなかったから、私は裕哉くんに教えるのを諦めた」
「………手玉に取る方が楽ですね」
和歌奈さんと星野さんがコソコソと話していたが、俺は全く聞こえなかった。
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