第3話 底辺配信者、自己紹介をする。
俺は女の子3人に渾身の土下座を披露する。
「か、顔を上げてくれ!」
「は、はい!」
俺は気の強そうな女の子から言われ、顔を上げる。
「す、すまん!怒ってるわけじゃないんだ。だから、正座をやめて立ってほしい」
怒ってるわけじゃないなら謝る必要はなくなるので、女の子の要望通り立ち上がる。
「まずは自己紹介をさせてもらう。アタシは星野愛菜、22歳だ」
「私は園田千春。愛菜ちゃんと同じ22歳よ」
「そしてウチは足立芽吹、19歳です!」
そう言って各自が自己紹介をしてくれる。
星野愛菜さんは金髪の髪を右側に結ったサイドテールにしており、金色の綺麗な髪とスレンダーな体型、それとつり目で気の強そうな容姿が特徴的な美女。
園田千春さんは黒髪を腰まで伸ばしており、デカすぎる胸が特徴で妖艶な雰囲気を醸し出す美女。
そして足立芽吹さんは水色の髪をショートカットにしており、小柄な体型と釣り合ってない巨乳が特徴的なロリ美少女だ。
「アタシたち3人は『閃光』というギルドに所属しているSランクパーティーで、時折、『
「ご丁寧にありがとうございます。俺は中島裕哉、20歳です。ギルドには所属してません」
俺も3人に習って自己紹介をする。
〈中島裕哉だ!中島裕哉って人物の情報を求む!〉
〈ギルドに所属してないから見つけるのは至難の業だぞ!〉
〈誰かコイツが配信してるチャンネル見つけたか!?見つけたら拡散頼む!〉
「そうか。裕哉くんと言うのか。では改めて、アタシたちを助けてくれてありがとう。裕哉くんのおかげで、アタシたちは死なずに済んだ。本当にありがとう」
そう言って3人が頭を下げる。
〈俺たちのアイドルを守ってくれてくれてありがとう。視聴者を代表して礼を言おう〉
〈これで生きる理由を失わずに済んだ。ありがとう、中島裕哉くん〉
「…………」
(待って、この人たちはなに言ってんだ?)
星野さんたちの言動の意味が分からず、頭を悩ませる。
「えーっと、誰が、誰を助けたんですか?」
「ん?そんなの裕哉くんが私たちを助けたに決まってるだろ?」
「誰から?」
「レッドドラゴンから」
「レッドドラゴン?なにそれ?」
「まさか、レッドドラゴンを知らないのか!?」
〈まさかレッドドラゴンを知らないとはww〉
〈愛菜たちが感謝する理由、わかってないんかい!〉
「あぁ。聞いたこともないが……あ、もしかしたら俺の視聴者は知ってるかも!」
モンスターに全く詳しくない俺は、カメラ越しに美月と紗枝に問いかける。
「なぁ、レッドドラゴンって知ってるか?」
〈知らなーい!〉
〈知らない〉
「2人とも知らないのか」
〈でも強そうなモンスターってことだけは分かる〉
〈だね!お兄ちゃんは絶対戦ったらダメだよ!〉
〈ん、ユウはレッドドラゴンと戦かったらダメ。命大事に〉
「そうだな。ドラゴンって強そうだもんな。俺、レッドドラゴンを見かけたらすぐに逃げるよ」
「いや、ガッツリ戦ってたわ!」
星野さんからツッコミを入れられる。
〈さっきお前はレッドドラゴンの目の前でスマホ触ってたんだよww〉
〈しかもスマホ片手にレッドドラゴンへ特攻してるのも見たわww〉
「さっきの赤いモンスター!あれがレッドドラゴンなの!」
「いやいや、なに言ってるんですか。あれは翼の生えたただのトカゲですよ」
「お前がなに言ってるんだよ!」
そして再度ツッコミをもらう。
〈いやホントそれww〉
〈あんな凶暴そうなモンスターを『翼の生えたトカゲ』呼ばわりww〉
〈俺、コイツのこと異世界から来た転生者に見えてきた〉
〈否定できねぇww〉
「よく聞いて!裕哉くんはSランクモンスターであるレッドドラゴンを倒した!誰も倒したことのないレッドドラゴンを裕哉くんは一撃で倒したんだ!」
「いやいや、さすがに誰も倒したことがないは嘘ですよね?」
「嘘じゃない!本当のことだ!」
「マジで?」
俺の質問に園田さんと足立さんも首を縦に振る。
「俺、今日だけで10体はあのトカゲを倒してるんですが……」
そして俺の言葉に女の子3人が絶句する。
〈もう既に10体は討伐してるんかいっ!〉
〈いや、さすがにこれは嘘だろ?〉
〈でもレッドドラゴンを瞬殺したぞ?あり得ない話じゃないだろ〉
「あ、あれ?俺おかしなこと言ったか?」
〈言ってないよ!お兄ちゃんは赤いトカゲを10体くらい倒してたよ!〉
〈正確には13体。全て一撃で倒した。おかしなところはない〉
「だよな。おかしなこと言ってないよな」
「なんでだよ!おかしな点しかないわ!」
またしても星野さんからツッコミをもらう。
〈アイツの視聴者からすればおかしな点はないらしいww〉
〈俺、アイツの視聴者に会ってみたくなったわww〉
俺が驚きつつ首を傾げていると「コホンっ!」と星野さんが咳払いをする。
「とりあえず、裕哉くんがレッドドラゴンの危険性も知らない冒険者で、裕哉くんの配信を見てる視聴者様もレッドドラゴンの危険性を知らないってことは理解した」
そしてなぜか呆れながら言われる。
「あ、そうだ芽吹。さっきの戦いは配信されてたか?」
「はい!バッチリ配信されてます!」
「なら視聴者様にアタシらが無事だと言うことを伝えないと」
「そうね。きっと心配してると思うわ」
「じゃあ、俺は星野さんたちの配信が終わるまで見張りしときます。モンスターのことは気にせずに配信してください」
「ありがとう、裕哉くん」
俺は星野さんたちを守ることができるよう、近くに移動する。
そして『雪月花』のチャンネルで配信が始まったのを確認してスマホを触る。
〈それにしても、ユウが瞬殺してたトカゲがS級モンスターだったなんて〉
〈ホントだよ!しかも、まだ誰も討伐したことないんだって!お兄ちゃんって強かったんだね!〉
「当たり前だ。美月を養うために冒険者として頑張ってきたからな」
俺の両親は俺が高校を卒業すると同時に不慮の事故で亡くなった。
祖父母も既にこの世にいなかったため、俺は大学進学を諦めて冒険者となり、美月を養うことを決めた。
「でも、S級モンスターを瞬殺できるくらい強くなった覚えなんてないけどなぁ」
〈お兄ちゃんは星野さんたちが大げさに言ってるって思ってるの?〉
「あぁ。だってS級モンスターだぞ?俺は美月を養うために努力はしたがS級モンスターを瞬殺するほどの力を手に入れた覚えはない」
〈じゃあ、多分見間違いだよ!星野さんたちは雑魚モンスターの『空飛ぶトカゲ』をレッドドラゴンだと勘違いしたんだよ!〉
〈ん、その説はあり得る〉
「なるほど。星野さんたちは雑魚モンスターの『空飛ぶトカゲ』とレッドドラゴンを勘違いしただけか。なら、俺はS級モンスターを瞬殺できるほどの力を持ってるわけじゃないんだな」
〈そうだよ!だから本物のレッドドラゴンと戦いに行かないでね!〉
〈調子に乗らず、今日みたいに瞬殺できる相手だけと戦うこと。S級モンスターと戦ったらダメ〉
「そうだよな。星野さんたちの発言を間に受けて『俺はS級モンスターを瞬殺できる!』って勘違いするところだった。今後もS級モンスターとは戦わず、瞬殺できる雑魚モンスターと戦うよ」
〈ん、それがいい〉
〈うん!私たちとの約束だよ!〉
「あぁ!」
美月と紗枝のおかげで『俺はS級モンスターを瞬殺できる!』と勘違いせずに済んだ。
〜『雪月花』視聴者視点〜
〈いや、ツッコミどころが多すぎて愛菜たちの話が入ってこねぇww〉
〈俺たちに向けて真面目な話をしてる隣でバカな話をしないでほしいww〉
〈お前はS級モンスターを瞬殺できるんだよ!勘違いじゃないんだよ!〉
〈てか、あの男の視聴者はバカなのか!?雑魚モンスターの『空飛ぶトカゲ』とレッドドラゴンを勘違いするってなに!?空を飛んでる時点で雑魚モンスターじゃないんだけど!?〉
〈待って、めっちゃオモロいww〉
星野さんたちのコメント欄がめっちゃ盛り上がってた。
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