「あれは空飛ぶトカゲだ」と言って瞬殺する底辺配信者、実はS級モンスターだったようで有名配信者に見つかりバズりにバズる。

昼寝部

1章 底辺配信者がバズるまで。

第1話 底辺配信者、『空飛ぶトカゲ』を瞬殺する。

 ダンジョンが出現して10年。


 世界各国がダンジョンを詳細に調べ上げた結果、ダンジョンで獲れる『魔石』という物が現代の地球になくてはならない資源となった。


 そんな世の中となったことで、ダンジョンを探索することを仕事とする『冒険者』という職業ができた。


 ただし、冒険者となれるのはダンジョン内に充満している『魔素』に適応できる人間しかなれず、全員がなれるわけではなかった。


 そんな中、俺『中島裕哉なかしまゆうや』は冒険者として働いていた。




「お兄ちゃん!今日もダンジョンに行くよね!?行くなら配信して!お兄ちゃんが探索してるところ、今日も見たい!」


「私もユウの配信が見たい」


 俺の妹である『中島美月なかしまみつき』と幼馴染の『梅木紗枝うめきさえ』がダンジョン配信をお願いしてくる。


 俺の1つ下で19歳の美月は長い茶髪をツーテールに結ぶ美少女で、俺と同い年で20歳の紗枝は赤い髪を腰まで伸ばした美少女だ。


 妹や幼馴染という関係がなければ話しかけることすらできない美少女なので、美月のお兄ちゃんで紗枝の幼馴染であることが俺の自慢となっている。


「そうだな。今日もダンジョンに行く予定だったから配信してもいいぞ」


「やったー!」


「ユウならそう言うと思ってた」


 2人とも俺の返答に喜ぶ。


 美月と紗枝はダンジョン内の魔素に適応できなかったため、ダンジョンに入ることができない。


 そのため、時折配信をお願いしてくる。


「じゃあ、今からダンジョンまで行ってくるから、いつでも視聴できるよう準備してて」


「はーい!」


「ん、わかった」


 俺は2人の返事を聞いて家の近くにあるダンジョンへ向かった。




 俺は家の最寄りにあるダンジョンに到着する。


 そして、ドローン型のカメラを起動し、大手の動画投稿サイトに配信する。


「見てるかー?」


〈見てるよー!〉


〈見てる。ユウ、頑張って〉


 俺は美月と紗枝の返答をスマホで確認してダンジョン内に入る。


 ちなみに俺のチャンネルを登録してるのは美月と紗枝の2人しかおらず、チャンネル登録者数は2人だが、美月と紗枝を楽しませるだけのチャンネルなので増やそうとは思っていない。


「さて、このダンジョンは100階まであるからな。何階がいい?」


〈私、空飛ぶモンスターが見てみたい!〉


〈私も美月と同意見〉


「よし、なら90階から始めるか」


 1度、全階層を攻略した俺は好きな階に飛ぶことができるため、90階へとワープする。


「よし、90階に到着だ。では攻略開始!」


〈〈攻略開始ー!〉〉


 俺の掛け声にコメントでリピートしてくれる。


 俺はドローン型のカメラでダンジョン内を隅々まで見せつつ、雑談をする。


「知っての通り、ここには雑魚モンスターしかいない。退屈かもしれないが、楽しんでくれ」


〈退屈なんて思ったことないよ!お兄ちゃんが“スパッ!”ってモンスターを倒すところカッコいいもん!〉


〈私もユウのカッコいいところが見たい〉


「よし!じゃあ気合い入れて頑張るか!」


 2人から嬉しい言葉をもらい、張り切ってモンスターを探す。


「お!さっそく見つけたぞ!」


 俺は赤い鱗で全身を覆い、翼を生やして空を飛んでいるトカゲを見つける。


「ガァァァァァッ!!」


「あれは赤い鱗で全身を覆っている、空飛ぶトカゲだ」


〈おー!飛んでるねー!〉


〈叫び声がうるさい〉


「飛んでる点は厄介だが、このように剣をいつでも抜ける体勢で待機する」


 そう言って俺は腰にぶら下げている剣の柄を握る。


 そして大きな口を開けて襲いかかってくるトカゲをギリギリまで引き付け、一気に剣を引き抜く。


「はっ!」


 すると、俺に襲いかかってきたトカゲが真っ二つに切り裂かれ、魔石だけを残して消滅する。


「このように勝手に俺の元へやってくるので、真っ二つにできる」


〈おー!すごいよ!お兄ちゃん!〉


〈ん、カッコいい〉


「2人ともありがと。でも、このモンスターは雑魚だから、そんなに褒めなくてもいいぞ」


〈確かに、空を飛んでるところは強そうだったけど、ものすごく弱かったね!〉


〈叫び声も強そうだったのに〉


「まぁ、このダンジョンに出てくるモンスターは全て雑魚だから仕方ないよ。1人でダンジョンに潜る俺は雑魚モンスターを相手にするくらいがちょうどいいからな」


〈確かに!強いモンスターが出てきたらお兄ちゃんが死んじゃうからね!〉


〈ん、それは困る〉


「そういうわけだ。それに強いモンスターばかりだと、スマホで2人のコメントを見ながらダンジョンの探索はできないからな」


 俺は2人のコメントに返答しつつ、その後も赤い鱗を持つ空飛ぶトカゲを瞬殺していく。


 しばらく歩き続けると広く開けた場所に出た。


 そこには1体の赤いトカゲが空を飛んでおり、その下では女の子3人がトカゲへ攻撃をしていた。


「先に進むにはあのトカゲをどうにかしないといけないんだけど、モンスターを横取りするのは悪いからなぁ。ここは攻撃せずに先へ進むか」


〈ん、それが良い〉


〈そうだねー!お兄ちゃんが瞬殺できる相手なら、あの女の子たちもすぐに倒せるはずだからね!〉


 2人とも俺と同意見のようで、俺はトカゲの奥にある道を目指し、歩き始める。


「お、見ろよ。俺と同じようにあの3人も配信者らしいぞ」


 俺は女の子3人の近くにあるドローン型のカメラに気づく。


〈ホントだー!お兄ちゃんと同じだね!〉


〈きっとユウより視聴者は多い。だからユウは彼女たちの横を通り過ぎる時、「底辺配信者のユウでーす!」って自己紹介した方がいい〉


「やかましいわ!」


 俺がカメラに向けて叫ぶと、女の子たちが俺の姿に気づき、大声で話しかけてくる。


「君も罠に引っかかってここへ飛ばされたのか!だったらすぐに逃げろ!」


「今すぐ逃げてください!コイツはS級モンスターのレッドドラゴンです!」


「まだ誰も倒したことのないS級モンスターよ!私たちが時間を稼ぐから今すぐ逃げなさい!」


 なぜか女の子たちが俺に逃げるようお願いしてくる。


「あっ!ごめんなさい!戦闘の邪魔ですよね!すぐに逃げます!」


 女の子たちに指摘された俺は歩くスピードをあげる。


〈お兄ちゃん、邪魔者扱いされてるー!〉


〈女の子3人から邪魔者扱いされるユウ、傑作すぎるww〉


「うるせぇぇぇぇ!!急いで退けばいいんだろ!」


 俺は2人のコメントに対して反論する。


「ちょっ!何を呑気にスマホなんか見てるんですか!死にたいんですか!?」


 そして女の子1人に再度注意される。


「す、すみません!」


 2度も注意されたので、俺はトカゲの奥にある道を目指し、トカゲに向かって走る。


「違う!そっちに逃げるんじゃない!来た道を戻れ!」


「えっ!俺、先に進みたい……」


「はやく!」


「あ、はい」


〈あははっ!お兄ちゃん、また注意されてんの!〉


〈ヤバい、笑いすぎてお腹痛いww〉


「笑いすぎだ!」


「だからスマホなんか触らず逃げろ!でないと、レッドドラゴンの標的に……っ!危ない!」


 女の子が俺に危険を知らせてくれる。


 俺は女の子の声を聞いて振り返ると、トカゲが大きな口を開いて襲いかかってきた。


「あー、これは避けれんな。だから……はぁっ!」


“ザシュッ!”


 俺は襲いかかってきたトカゲへ一閃を喰らわす。


 その攻撃でトカゲは真っ二つとなり、魔石を残して消滅する。


〈おー!お兄ちゃん、カッコいいー!〉


〈さすがユウ。お見事〉


「ふっ、こんなもんよ」


 俺はキメ顔で応えると…


「は?」


「え?」


「マジ?」


 その様子を女の子3人が驚きの表情で見ていた。


(って、俺はこの子たちが討伐するはずだったモンスターを奪ったんだ!キメ顔してる場合じゃねぇ!)


 そう思い、俺は瞬時に正座して…


「君たちのモンスターを横取りしてごめんなさい。魔石は君たちにあげるので許してください」


 女の子3人に向けて渾身の土下座を披露した。



ーーーーー


 次回は女の子3人と女の子側の配信を見てた視聴者視点となります。

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