第十九話ー感情死ー

相談室に取り残された者たちは、困惑し黙っていた。

「先生…由菜戻ってくるまで待ちますか?」

「はい、待った方が良いと思います」

そうなり、彼らは相談室で待つことになった。

しかし、時間になっても帰ってこないため、先に教室へ帰った。


由菜が連れてこられたのは、会議室。外から鍵をかけ、誰も入れないようにする。

「…さて。由菜。どうしたん?あと、今だけはタメ口でいいで」

先生が口調を崩して話しかける。

「…別に何も無いですよ?」

「いや、お前には何かがある。教えてくれないか?」

「嫌ですね。別になんでもないですし、仮にあったとしても教えません」

その後も何度かやり取りを続けたが、彼女は一向に話そうとしない。

「じゃあ、俺じゃなかったら話してくれる?」

「…何人か話してもいいかな、って人はいます」

「その人って誰?言わなくても大丈夫やで」

そう告げられた。由菜は一瞬動じた。

(私のことを思ってくれてるんやな)

「…先輩と、担任と、あとは…」

彼女が信頼している人の名前が上がってゆく。わずか三人だった。

「…その人なら話せる?」

「話せますけど、余計な人巻き込みたくないです。じゃあ今話せって話なんですけどね?」

微笑みながらそういった。

「…ちょっと先生と先輩に聞いてみるわ。OKもらえたらその人に話してくれる?」

「先輩がいいって言うことないと思いますけどね?」

少しの談笑だったが由菜はとても楽しそうにしていた。



あくまで「していた」だけだったのかもしれない。

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