第十一話ー目覚めー
海里と由菜は同じ病院に運ばれ、病室が同じだった。どちらも殴られた箇所が似ていたため、症状や他のことも考えて同じ病室の方がいいと判断された。
海里は救急車の中で目覚めたが、由菜は目を開けなかった。
病室は二人きり。海里は気まずく、体を起こす練習や発声練習、勉強をした。その間も由菜は一向に目覚めない。どちらの家族も見舞いに来たが、由菜の家族はあまり来なかった。海里の家族は由菜を心配し、「大丈夫かな?」「次は起きてるかな?」と心配して帰っていく。由菜の家族は海里と話し、「よろしくね」と伝えて帰る。起きないため面会時間もほぼいない。いつしか、どちらの家族もほとんど来なくなっていた。
由菜が目覚めたのは、気絶から3週間が経った頃だった。海里は病室を歩けるほどになり、点滴を動かして椅子を置き、由菜を見つめていた。
「由菜、そろそろ起きろよ…寂しい」
片手で手を握る。気絶前よりも暖かい。その思いが通じたのかもしれない。
ついに、由菜は目覚めた。
「え?海里?」
前と同じ、温かみのある声。多少声が出しにくそうだったが、初めて海里の名前を呼んだ。
「よかった…目覚めて」
「…うん。ってか病室二人?」
「そうやで?」
「…そっか。なら今言っちゃおっかな」
「…何を?」
その途端、看護師たちが入ってきた。
「大丈夫ですか?わかりますか?」
「はい、今はあまり話せないので後でもいいですか」
「わかりました。また来ますね。ご飯は食べれそうですか?」
「わかりません…」
「わかりました。それでは。」
といい、帰って行った。
彼女の目は、光を取り戻していた。
〈決心〉
「か、海里。心子にも言いたいんだけど先言っとくね」
「ん?俺でよければ話聞くで」
「…その前に手、離してもらってもいい?まあどっちでもいいけど」
「じゃあ握っといてもいい?」
「ん。わかった」
彼女は、ゆっくりと話し始めた。
「あのさ、ごめんね。いろいろ迷惑かけて」
「…別に大丈夫だよ」
「そっか。あとさ、怪我させてごめんね。」
「まあ…由菜こそ大丈夫?」
「声は出せる。体は動かせないかな。腕はいけるけど」
と言い、海里の手を握った。ものすごく温かった。
その時、ドアが勢いよく開いた。
「あー!起きてるじゃん!由菜!」
「…!心子だ!大丈夫だった?あ、座ってね」
椅子を指差し、由菜は言葉をかけた。
「そうや、心子はちょこちょこ来てくれてたんやで?」
「そっか!ありがとうね」
「いや…別に私何にもできてないし」
「怪我、大丈夫か?俺が言えへんけど」
「うん。軽い打撲でいけたよ。学校も行けてるし」
「そっか…ねぇ、みんなどうなってる?」
「うーん…言っていいかな?海里どう思う?」
「どうだろう…?」
「私は聞きたいけど…」
「由菜は聞きたいんだ」
「あ、そうやさっきの話の続き先聞かせて?」
「え?何それ?」
「あ…そうだね。ありがとう海里。心子、聞いてくれる?」
「うん!聞くよ!」
「…なんかリンみたいだね」
「ねぇ、気になるんだけどなんで手繋いでるの?」
「あ、あ…これは…」
「俺が勝手に握ってるだけ」
「なんかカップルみたい」
「そ…そう…?」
「ま、いいや聞かせて!」
「わかった」
由菜は、話し始めた。
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