第6話 〜皇族の仕組み……。〜

「ルルーノス・ズミーがギブアップした為……勝者、エリザベス・アリス!!」


 黒い猫の声とともに、出入口が開いた。

 しかし、不思議なものだ。第10代目魔王の始祖が生まれ変わったのにも関わらず……それに認知しないとは……。


 これは、もしかして……魔王を名乗った偽りの奴らが多すぎてこうなってるのか?

 有名になりすぎると困るものだ。まぁ、実力で見せつければいいだろう。


「ルルーノス。中々にいい勝負だった。ありがとう……。」


 健闘を称え合おうと思ってルルーノスに手を差し出す。すると、ルルーノスはびくっと身体を震わせていた。


「くそが!! 馬鹿にしやがって!! 覚えてろ!!!!」


 ふむ。なんとも雑魚らしいのテンプレ吐きセリフだった。

 そうして、ルルーノスは……テンプレを吐き捨てながら逃げて行く。


 試合が終われば……恨みなどないだろう?

 それなのに、あいつは何を固執しているのだ?


 まぁ、確かに……私があいつの運命をぶち壊したのは分かるが……また来年もあるだろう?


 気にしなくていいだろう。死ぬ訳でもないんだし。

 寧ろ、昔の方が残虐すぎて……。今の環境は恵まれている方だぞ? それに感謝をしないと……いつかは罰が当たるぞ? と、思っていた。


「10分休憩した後に……次の受験者と戦ってもらいます。」


「そんなの要らん。」


「分かりました。では、壇上の方へ。」


「エリザベス・アリスの要望で、休息を省略させて頂きます。」


 ちょうど、私が現れた反対の通路から魔力が流れ……。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!!」


 悲鳴が響く……。ついで、出入口から長髪になったルルーノスみたいな顔つきの男が現れた。


 そいつは、ルルーノスを片手で首根っこを持って現れた。


「お、お兄ちゃん……お、俺が悪かった……。

許してください……。次は俺が必ず……。」


 すると……その兄である奴が。


「恥知らずが……。」


 首根っこから首に持っていき……魔力の粒子がルルーノスに集まり、黒い雷でルルーノスの全身を焦がしていた。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


 一瞬にして炭となったルルーノスをスルーしながらそいつは言った。


「弟が世話になりましたね?」


 なるほど? まぁ、お兄ちゃんとか言ってたからルルーノスの兄か……。


「弟の敵討ちなら最高のセリフだけどね?」


 すると……その兄は血管が切れるぐらいぶちギレながら言った。


「雑種如きが、遅れを取るとは……我が血筋の恥知らずだ。この手で、殺すのが責めてもの情けであり運命である。」


 雑種って私のこと?

 まぁ、そんなことを一々……気にしていたらこんな性格になってないからいいが……


 もし、私が雑種の始祖ならば……お前ら……生まれてないぞ……?


 だって、第10代目魔王の時点で魔族……1人だけだったし。だから、部下を私の血で……産んだわけだし?


 この兄弟喧嘩を見ると……何故だろう?

 殺伐としていない兄弟喧嘩の方が優しいのは私だけだろうか??


「兄弟は、助け合ってこそだと思うが?」


「な訳が……力があってこその魔王族に相応しい人物である。」


 やれやれ……何が、相応しいだ。相応しくないぞ。馬鹿が……。昔は、弱い者を盾にする風習があってな? それを利用しなければ……昔だったら死んでたぞ? 私は、勿論のこと……力が強すぎてやってないが?


「貴様はどうやら、力の事を履き違えている。」


「フン……つまらぬ偽善だ。殺せば済むものの……わざわざ、お前の根源魔法で蘇生をさせギブアップまで持っていかせるとは……なかなかに、趣味悪いぞ?」


 その兄はそう言うので気になって観客席を見た……。


 すると、5列目の席に学院の服を着てない人が私の方を見ている。


 恐らく……受験者だろう。次の対戦相手の様子見だな??


 しかしなぁ〜。何故か、腑に落ちない……。

 何故、私は観戦者として見れないのだ?


 と、考えていると……。


「馬鹿が!! 我ら、魔王族……つまり皇族は……好きに対戦相手を選べるのだ!! ただ、始祖の血が入ってる貴族とは違うのだ!!」


 なるほど……つまり、雑種の事は混血……要約すると、、貴族と言ったところか。


 なるほど……あの招待状の数字は……。

 血の濃さで数字を現していたのか……。

 今、納得が行った。


 そもそもな話……純血だろうが混血だろうが、私の力をどれだけ受け継いでるか関係の無い話だ。

 そんな事を昔にしていたらとっくに死んでいる。


 そもそもだ。純血だから強い。混血だから弱いなどは些か……慢心すぎりゃしないか?


 これほどの行動をされては……呆れが出てくる。正直な……。


「どうやら、理解したようだなぁ〜? だったら、さっさとギブを……」


「いいやぁ? くだらない事をしていて反吐が出てただけだ。」


「あ゙ぁ? くだらぬだと?」


「あぁ、くだらないな……。魔王と言うのはだな? 強いから勝手にそう言われていただけだ。それが、混血? 純血? 立場? ハハハハハ!! 笑わせるな。虫けらが……!!」


 俺の嘲笑いに、ルルーノスの兄は……不快そうに顔を歪めた。私の直系という事に……誇りを持っているかもしれないが……つまらなすぎるプライドだ。


「特権階級を作るのは別に構わない。だが、いつの時代になっていても……そう言う連中は少なからず居た。今……多くなっているとは思いもしないが……まぁ、いい。特別に教えてやろう。魔王という者は、あらゆる権力、法などを己の力だけでねじ伏せる者の事を指す。その子孫が……その特権を持つ側になるとは……いやはや、、この世は力だけが腐ったようだな。」


 最後の言葉は……地を這う声で言った。

 でも、相手にしては馬鹿にした物言いに捉えたらしく……ルルーノスの兄は、殺気を出して言った。


「今の言葉……我が始祖の偉業を軽視する言い方だな。皇族批判と言う意味で受け止めさせてもらう。なれば……この魔皇帝、、リリーノス・ズミーが自らお前を死刑に処すべきであるからだ!!」


「フッ……私が私のことを語る事自体が、なぜ、軽視になる?」


「……なに? どういう事だ?」


「そこまで言って、まだ気づかないとは……もしかして、鈍感か? まぁ、いい。要約すると……私が、第10代目魔王の始祖と言っている。」


 すると……リリーノスは憎悪がむき出しのまま言った。


「貴様……自分で何を言ったのか……自覚あるのか?」


「何がだ? 私は私だろ?」


 すると、我慢が限界になったのか……リリーノスは叫んだ。


「自ら……始祖だと偽るその不躾な態度……万死に與する!!」


「私は、お前の考えていることが分からない。転生した元魔王が自分が何者なのか分かってないマヌケだと言いたいのか?」


「黙れ……!! お前こそ、十魔皇族じゅうまこうぞくの直言を疑うとは……大罪だぞ!! お前は、傲慢と強欲の罪に与えする!!」


 十魔皇族ねぇ〜。そいつらは、私の血で生まれた部下なのになぁ〜。おっかしいなぁ〜。


「お前の言ってることは……全く持って根拠に欠けるが……まぁ、責めはしない。魔王という者は言葉で証明するものじゃないからな。」


「貴様ァ〜!! またしても……十魔皇族の直言を愚弄する気かぁ〜!!」


 そう言うつもりで、言ったつもりでは無いのだが……。中々に、面倒臭いやつだなぁ〜。


「いいから掛かってこい。私が第10代目魔王の始祖である事をお前の体に埋め込みながら、証明してやる。」


 挑発してれば……すぐに飛び掛ってくると思っていた。だが、予想外にも奴は明後日の方向を見ていた。その方向は観客の方だ。


「皇族を批判をした者の末路がどうなるか、こいつに教えてやれ!!」


 リリーノスが言うと……観客席に居た魔族が10人、、いいや……100人ぐらい闘技場に飛び込んできた。


「なるほど? いいのか? 確か……今は、入学試験の途中だろ?」


 そう問うと……当たり前のように、、リリーノスは言った。


「何怖気付いてる?? これはれっきとした入学試験だ。1人ずつ倒すのは億劫だから……手間を省いたにすぎません。始祖と断言するのであれば……これぐらいは当然なのだろう? ならば、やってみろ。」


 なるほど、黒い猫は……審判なのにも関わらず、なんも言わないならこれは仕組まれていると確信していた。


 なるほど、これも皇族という名の……特権と言う奴か……。こういう風に、、力を見せつけないと混血は、合格されていないのだろう。


「だが、その数でか?」


「今更……遅いぞ?ww 自らの後悔をし、そして死ね。」


「何を勘違いしている? 私の前では雑魚は雑魚。

数が多くても無駄だ……。」


 リリーノスは……表情が険しくなった。


「なん……だと??」


「始祖を証明するならば……雑魚を増やしたとしても死ぬだけだ。」


「貴様ァァ……!!」


 リリーノスが言葉を言った後……様子を見ていた観客席に居た皇族が続々と壇上に降りてくる。


 どいつもこいつも……私に対して不服すぎる面構えを向けてくる。


 合計で……900人ぐらいか。


「口は災いの元……と言うのは、よく言ったものである。」


「全くだ。お前が余計な事を言うから900人の犠牲を出さなければならなくなったのだからなぁ。」


 不快そうにリリーノスが顔をしかめながら言った。だが、すぐに思い直したかのように笑った。


「いかに、始祖を偽る不届き者でも一方的にぶり殺したとあっては、皇族の恥。1分間、待ってやる。その間にいい魔法を構築するんだな。」


「ほう。味方を増えた事で余裕が出たか?

醜いぞ? 雑魚どもが……。」


 私は、1分を無駄にして待った。

 まぁ……その時に……思ったのは、さっきまで、一々と怒り狂っていた奴が今は、数が多いからか……余裕すぎていて嘲笑っている。


「そんなに余裕でいいのかぁ〜? もう、1分も経つぞ?」


 勝ちを誇った様なセリフ……私は、ついつい笑ってしまった。


「ふふ……フハハハハハ!!」


「何がおかしい……あまりの恐怖に気が狂ってしまったのか?」


「はぁ……呆れる……。まだ、気づかないのか? もっと魔眼を凝らせ。」


 魔眼とは、魔力を見る目の事を指す……。

警告されて……リリーノス達は、、ようやく……魔力の流れを感知しようと目に魔力を込めて魔眼を働かせていた。途端にそれは発揮した。


 それの原因は……自らの魔力が暴走している事を……。


 私を囲んだ魔族たちは……悲鳴と近しい声を叫んだ。


「な、、なんだ!? こ、これは……!! ま、魔力が……勝手に!?」


「馬鹿なぁ〜!? 魔法陣を展開した素振りがなかった……はず!?」


「くそ、、やめ、、やめろぉー!!!!」


「この人数を1発でかぁー!!」


「な、何をした!? いったい何をしたんだァ!! エリザベス・アリス!!」


 やれやれ、これぐらいを制御しきれないとは……だらしない。


「ほら。自分の魔力ぐらい……さっさと制御してくれ。でないと━━━━━━。」


 私を取り囲んでいた魔族たちの顔が真っ青になりながら、なんとか暴走をして自分の魔力を制御しようとする。だが、間に合わないだろう。


「━━━━死ぬぞ……?」


 瞬間……けたたましい音が響き、、闘技場に降りてきた900人が、まるで火をつけた爆弾庫のように派手に爆発して、やられて行った。

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