第291話 Gの駆除

 俺が思わず掴んだ木だが、いわくつきの木だった。

 はじめてこの地、ジャングルに来た時に出会ったいわくつきの木で、少なくとも山猫さんたちには有名なものだった。

 『絶対に生木では燃やすな』と言われるものらしい。

 実際に燃やしたことが無いので、どうなるかはあの時の山猫さんたちからの伝聞になるが、とにかく臭いらしい。

 何せ、俺が思わず焚火に放りこもうとしたところ、後ろからは羽交い絞めで、頭をどつかれて俺から手にしてきた枝を取り上げて、遠くに投げていたくらいだ。

 相当臭いのだろう。

 多分だが、くさやの比ではないだろう。

 あれ、焼くとものすごくおいしいがどうしても匂いがきつい。

 俺は嗅いだことが無いが、シュールストレミングを数倍臭くしたような感じか。

 少なくともあの時の山猫さんたちの俺に対する対応から見て、それぐらいはあると見た。


 これ、使えないか。

「いきなり、攻め込んでいっても被害は双方に出るだろう」

「そうなりますか、ですがあまりぐずぐずはできませんよ、何せあいつらですから」

「ああ、いつも相手にしているGよりもひどいとは思うが、だからなおさら慎重に行きたい」

「隊長、そのGって何ですか?」

「『あれ』のことだよ。

 台所などで見かえると相当嫌がられる昆虫と同じくらい迷惑な存在だから俺はそう呼んでいるが……黒くてやたらすばしっこいやつ」

「ああ、あれ……ですか……そうですね」

「それよりも、案があるのですか」

「ああ、幸いここは村に向かって風上になるから、あいつらをここに呼び出さないか」

「風上と、敵の呼び出しがどうつながるので……」

「これ、燃やすとものすごく匂うのだろう」

「え、ああ、そうですね。

絶対に火にかけてはいけないやつですが」

「だから、これをここで燃やす」

「「「え!」」」

「当然その前に配置につくが、村を囲むように周りを囲み、あいつらが建屋から出てきたらすかさずに銃殺する」

「出てきますかね」

「これって、相当臭いのだろう。

少なくとも、相当匂うのなら村からは出ていくだろう。

その前に、匂いのい確認くらいするために建屋からは出てくるだろう。

臭いの我慢してやることを続行など、少なくとも俺はできないよ」

「マリーさん、どう思われますか」

「幕僚長、少なくとも風下には居たくはないですね。

 でも、奇襲するならばいい考えかもしれません」

「なら、それで決定だな。

 悪いが、だれか陸戦隊をここに呼んでくれ。

 あ、それと、連邦の兵士にもお願いできますか」

「いや、これは私たちの仕事だろう。

 グラス大尉には協力を願いたい」

「おい、兵を集めてくれ」

そこからは、大きな音を立てずに、兵を集めて村を囲んだ。

 まだ、日は高く見通しは良い。

 なので、なるべく多くの兵士が外に出てから作戦を決行することとした。

 合図は、マリーさんが最初の一発を撃つので、それを合図として一斉に敵に襲い掛かることとした。


俺は問題の木を集めて焚火を始める。

すぐに白い煙とともにものすごい匂いが充満してくる。

幸いなことに風があり、充満する匂いはどんどん村の方に向かっていく。

「さすがに臭いけど、村はもっと酷いだろうな」

「酷いで済めば御の字ですね。

 ほら」

 メーリカさんが指さす先には村があるが、その村に変化が訪れる。

 あっちこっちの家から、黒服を着た連中が出てきた。

 何処のどいつも皆、服を着たばかりとでもいうように、ボタンなどを外に出ながらしめている。

 お楽しみだったようですね。

 そう思って観察していると、銃撃音がした。

 『バン!』

 それを合図にあっちこっちから同じように銃撃が始まる。

 銃撃戦とは言うことができずに、一方的に黒服たちが倒されていく。

 中には股間をさえて倒れているのもちらほら。

 あれは、うちの山猫さんたちだな。

 しばらく銃撃がしたかと思ったら、黒服たちは反撃するのでもなく、急ぎ車に戻って逃げ出そうとしているが、そこのはしっかりとマリーさんたちが車を押さえている。

 一時間はたっていない。

 多分、30分くらいの出来事だったかと思うが、あのG相手に駆除が終わったようだ。

 当然残党もいるのだろうが、だれも村に入ろうとはしていない。 

 ……あ、臭いのか。

 俺は急ぎ目の前で燃えている焚火を消した。

 ……とても臭い。




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