新人教師ですが、訳ありな教え子を拾ってしまいました!

草壁

バレたらアウトな同棲生活

1時間目 教え子、拾っちゃいました。

教え子、拾っちゃいました。

「先生、朝だよ。」

 目が覚めると、制服を着た女子高生が私の体をまたがっている。


 体を起こすと、もにゅっと顔を両手で挟まれる。


「先生、おはようのキス。」


 私は24歳の新任教師。教え子の女子高生に起こされて、おはようのキスをせがまれる日常を送っている。


 どうしてこうなった。




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 聞きなれたチャイムが鳴って、少しバタバタした後で、教室が静かになる。この国のほとんどの人がこの景色を少なくとも12年間、見ることになる。チャイムに縛られる生活を何年も送る。社会人になるとチャイムから解き放たれて、自由と責任の下、厳しい戦いを強いられる。



 私は、チャイムから解放された社会人になってもまだこの景色を見てる。

 でも昔と違うのは、教壇の上からこの景色を眺めているということだ!


 私、峯雲みねぐもミカは今年の春から念願の高校教師になった。夜遅くまで授業準備したり、勉強をしたり、想像以上に仕事はつらい。だけどそれ以上に、生徒たちがかわいい!

 本当に、生徒たち一人一人の表情を見るだけで幸せだ。先生になれて本当に良かった。


授業が終わって、また次の授業のために荷物を持って教室を出る。次の授業はプロジェクターを使うので、ちょっと大変。

廊下を歩いていたら、生徒に声をかけられた。

「峯雲先生、手伝いますよ!」


 本当に輝いて見えるくらいキラキラした笑顔で話しかけてくるのは、私が副担任を持つクラス、2年1組の月代つきしろエリゼさん。大きな荷物を運ぶ私を気遣って声をかけてくれた。

「ありがとう!すごい助かります!」

 髪は綺麗な金髪で、ふわふわしていて妖精さんみたいにかわいい女の子。

 男女関わらず仲良く話しているところをよく見かける明るい子。

 そんな子がいる一方で、やっぱり馴染めていない子もいる。


 深雪みゆきアンリちゃんだ。スタイルが良くてすっごく美人なのに、私はこの子が他の誰かと話しているところを見たことがない。クールな子だったとしても1人くらい友達がいると思うけど、この子は本当にずっと1人。うーん、大丈夫かな。本当にびっくりするほどの美人さんだから、嫉妬とかされてハブかれているのではないかと心配になる。

でも、グループワークとかではちゃんと話せてるみたいだし、気にし過ぎかな。


 こんな感じで、みんなに助けられ、癒されながらなんとか頑張ってる。


 そんな感じの日常を過ごして、もう5ヶ月。

 みんなは休みだけど、私たちはふつうに仕事がある夏休みが過ぎて、また同じ日常が始まる。


 教室を見渡すと、ポツポツと空席が。まあ、休み明けだもんね。しょうがないか。休み明けからしばらく謎の風邪が流行る。



 別に謎の風邪にかかってしまうのは構わないけど、無断欠席はやめてほしいな深雪さん。


 深雪アンリちゃんは夏休みが終わってから1週間くらい無断欠席をしている。何度も電話をかけたけど繋がらないので、直接お伺いに向かうことにしました。担任のおじいちゃん先生は『ほっといていいよー。』と仰っていましたが、私はダメだと思います。



 車で彼女の家に向かい、インターホンを押した。

「こんにちはー。深雪アンリさんのクラスの副担任の峯雲です。」

 3回目。誰も出てこない。

 電気もついてるし、車もあるのに。完全に居留守だな。


 生徒が急に無断欠席して、家に行ったら居留守を使われる。

深雪さんに何があったかはわからないけど、きっとよくないことがあったに違いない。私は、教師としてしか彼女との繋がりがないわけで、結局それは学校にいて、深雪さんが、自身が生徒であることを認めてこそ成り立つもの。


 深雪さんが学校に来なかったら、私と彼女の繋がりなんてものは簡単に切れてしまう。

 理屈ではそうわかっていても、すっきりしない。私は関わった人みんなに幸せになってほしい。それがお節介だとしても、手を差し伸べたい。現実ではそんなこと無理だってわかってる。わかってるけどさあ…


 近くの駐車場に停めた車に向かうまでの間、街の雑踏は耳に入らなかった。


 気がつくと私は涙を流していた。

 私ってこんなにセンチメンタルだっけか。



 駅前のちょっとだけ高いビルとビルの間にあるパーキングエリアがぼんやりと見えてきた。


 背中をたたかれた気がして、涙をぬぐってから、振り返る。

 大きなリュックサックを背負った髪の長い綺麗な女の子が立っていた。

 この子は…







「先生、私を泊めてください。」

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