無能力は唯一俺だけ

流星

~プロローグ~ 春なんて嫌いだ!

 突然だがみんなは1番嫌いな季節はどれなのかと聞かれたらどの季節を答えるだろうか。


━━ 暑いのが嫌いだから夏!

━━ 寒いのが嫌いだから冬!


 否。俺、羽宮空斗の場合は即答で春と答えるであろう。なぜなら今日はこの学校、栄得高等学校の入学式だからである。

 入学式なんてろくなものじゃない。周りを見れば賑やかな会話、イチャイチャしてるカップル(爆発しやがれ)、青春の始まり…。俺には無縁の存在が山ほどある。

 別にいいさ!俺は1人が好きだからな!

そのまま俺は空を見上げてボーっとしながら歩き続けた。まぁ少し羨ましいな…。


━━━っと、いつの間にか壁に貼られてあるクラス表と書れた紙の前に来てしまったみたいだ。

 んーと、それで俺のクラスは……1年F組。まさかの最低ランクスタートなのかよ…。

 説明しよう。この世界は約4年前、異世界へのゲート出現と同時にランクで上下が決まってしまうランク分類制というなんともまぁゴミな制度が作られたようだ。

 ちなみにサラッと言ったが異世界へのゲートは向こうの世界の人達がこっちに来ることができてその逆も可能。もちろん、みんなの憧れ"魔法"と"剣"も渡ってきているし冒険者にもなれると聞いている。

 そして1番重要なランク制度は学校にも大きく影響を与える。ランクはSからFまで存在しておりランクが高いほど優遇され、みんなから信頼される。

 最低ランクの俺は言うまでも無いが決していい思いをすることは出来ないだろう。

 突如消えた"無比の天才"が羨ましいよ…

っと、簡単な説明はここまでだな。

 とりあえずクラスの確認も終わったところだ、まだまだ入学式まで時間はたっぷりあるし昨日寝てない分は教室に行って仮眠でも取って入学式に備えよう。

 そして足を進めようとした時、クラス表に一瞬目が止まった。

━━"ステラ・ヴァーミリオン"

 そこには王族や貴族を連想させるような立派な名前が書いてあった。

 1年S組…ね。S組は学力・体術・剣術・魔法において特に優秀な人が"数人"集められている"世界最強のランク"。将来は安泰だろう…。

 このランクに勝つにはまず今の世界に誰一人として存在しないだろう。

 この人はきっと全能力数値が1000に近いのだ。俺なんて全能力最悪…。能力は数値で表され、0~1000までが存在するが俺の数値はほぼ全能力0と言っていいだろう。

 つまり"無能力のゴミ"だ。普通に考えてこの世界に全能力数値が全て0に近い人なんているわけが無いんだ。生まれてきたばかりの赤ん坊でも最低50はある。

 でも俺は現在進行形で全能力数値が赤ん坊以下なのだ。それなら俺が最低ランクの"最下位"というのも納得がいく。

 そう思い出したくもないようなことを思い出してしまい少しガッカリしながら俺は足を下駄箱まで進めていった。

 その時、左からものすごく速いスピードでこちら側に突っ込んできている人影が見えた。


「そこのあなた!早くどいて!!!」


 その距離ではすぐに行動へ移す時間が無く無理難題なことだと俺だけじゃなく誰でも思うことだろう。

 そのまま無理難題猛スピード野郎(今つけた名前)と俺は見事にぶつかったとさ☆

っじゃねぇよ!!入学式早々怪我とかまじで縁起が悪いって!そもそも痛い!いや、まじで痛くね?これ大丈夫なのか?

 とりあえず立たないと何も始まらないと思い立ち上がろうと考えた。

 よいしょっと…、あれ?なんだこの感触は…?初めて触った感触だな…。うーん…、あれ?待てよ?もし、これが女の子だったら…。

 そう思ったが時すでに遅し。目の前には半泣き美少女がいるではないか!と思った次の瞬間「ペチンッ!」と良い響きが聞こえた。


「この変態!スケベ野郎!えっち!」


 普通にやらかした…。これではまるで2次元のシュチュエーションじゃないか…。しっかり触ったせいで2次元みたいに


━━ご、誤解なんだ!


だとか


━━ち、違う!これは違うんだ!


だとかのセリフを言うことが出来ない。

 人生終了。この言葉が頭の中を埋め尽くしていった。いや、頭の中を埋め尽くしきれないほど溢れていた。

 とりあえず謝っておくしかないよな…。と思いすぐに謝ろうと頭を下げかけた時に相手が先に言葉を発した。


「私もぶつかったこともあるし私も悪かったわね…」


と言ってきた。

 え?まじ?俺、許されたの?助かったの?こいつまじで天使かよ!最高!

と喜ぶにはまだ早かった。


「でもあなた…たくさん触ったでしょ?普通に考えてまじでありえないんですけど…?」


と言ってきた。

 やはり俺には人生終了という言葉から逃げることは不可能だと察した。

 終わったー。まじ終わったわー。まぁなんというか一応友達0だし彼女いない歴=年齢みたいな俺だけどまだ高校生活始まってないよ?いや、始まってるけどラノベでいうところのプロローグ的な始まりだよ?早くない?

と思っていた時だった。周りに集まっていた人集りの中から1つの声が上がった。


━━決闘しろよー!


 その言葉を聞いて一瞬にして我に返った。

 そうか!その手があったのか!でも、俺は無能力だぞ…?勝てるのか?いや、そんなことはどーでもいい。だって決闘のルールは"絶対に俺が決められる"のだから。

 そして俺は美少女を相手にこう発言した。


「もし俺が勝ったら今回の件を許して欲しい!わざとじゃないんだ!だから"決闘"を申し込みます!」


 その瞬間、周りの人集りは一斉にワッと盛り上がり始めた。

 確かに盛り上がるのは普通かもしれない。入学式早々に決闘なんて前代未聞だ。大事な式典の日に決闘を申し込むやつなんているはずがない。

 相手の返事を待っていたが返事は"YES"のようだ。

 やっぱり春は嫌だな。最初の印象はその日に決まり、その後の人間関係が大きく揺れ動く。だけど俺にだって勝ち筋が無いわけじゃない…。ぜってぇ勝ってやるよ。


 そう思いながら前代未聞の入学式早々、思いもよらぬ決闘が始まった━━━━。

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