4-4:銭湯のおかみさん
「いらっしゃいませ」
今日も番頭に立っている。
相変わらず「特別なお客さん」も混じっているけど、最近は誰が「特別なお客さん」か分かって来ている。
「ほいよ、最近は若おかみさんが番頭多いな、狐様は元気かい?」
「毎度ありがとうございます。お義母様は元気ですよ、識さん」
鬼女である識さんが玄関から入って来て番頭にお代を置いて行く。
最近はこの時間私が番頭に立つ事が多くなってきた。
なんかお義母様はこの時間に見たいテレビが有るとかで。
夕の部のお風呂は物の怪である「特別なお客さん」が多い。
物の怪のせいか、やはり日が高い時の時間は活動がしにくいらしい。
だから夜の仕事とか、夜勤をするのに先にお風呂に入りに来る「特別なお客さん」が多い。
男湯にもまたあのアカナメの少年も来る。
「はい、お姉さんお代ね」
「毎度ありがとうございます。あ、お義母様が今度の集会にはちゃんと出て来るようにって言ってましたよ?」
「あっちゃー、狐様怒ってる?」
「怒ってはいませんでしたよ、でも次は忘れちゃだめですよ?」
「分かったよ、お姉さん。じゃ、お風呂入って来るね~」
そう言ってさっさと服を脱ぎ洗い場に行く。
なんだかんだ言ってここでのコミュニケーションが伝達になってたりもする。
「ほいよ、牛乳代ね」
「あ、毎度。はいお釣りです」
勿論普通の人間のお客さんも多い。
地元の人は何だかんだ言って結構この湯本銭湯に来てくれる。
最近は自宅にお風呂があるのに月に二、三回わざわざ銭湯に来るお客さんもいる。
「やっぱ大きなお風呂はいいわなぁ~。それに湯上りの牛乳は格別だからな」
「どうも、いつもごひいきに」
なじみのお客さんともたわいのない会話も増えた。
なんか私もここに馴染んだよなぁ~。
「若おかみさん! お湯でなくなっちゃったぞ!!」
「はいっ!? 分かりましたすぐ確認に行ってきます!!」
識さんが慌てて洗い場から裸のままやって来てそう言う。
また裏方で何か有ったのかな?
私は急いで裏方の様子を見に行く。
「おかみさん、牛乳代置いとくよ」
「おかみさん、石鹸頼むよ」
「おかみさん!」
「どひーっ! 少々お待ちくださぁ~いぃっ!!」
私はこの湯本銭湯のおかみさん。
みんながそう呼んでくれる。
毎日忙しいけど、「銭湯のおかみさん」でみんなが呼んでくれる。
だから私もそれに応えるように一所懸命にやって行こうと思う。
この「湯本銭湯」が大好きになってしまったから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます