第9話
「ぷはっはっはっう」
水を吸ったドレスが重い。水路は見た目以上に流れが速く、私はあっという間に流されてしまった。
視界が二転三転する。明るくなったり暗くなったり、地下に潜ったかと思えば地上に出たりと水路は複雑な構造になっていた。
かろうじて息を保ちながら、どうにかして姿勢を保とうとするが流れに惑わされる。
大きく息を吸ったのを最後に、私は下降する水の流れに捕らわれた。水面へと浮かべない。
もうだめか。父と母、兄弟姉妹、アニータ、故郷の情景、ディアン。過去の映像が私の脳裏を駆け巡る。
あきらめかけた、そのとき。
私の腕を大きなかぎ爪が掴んだ。
「はっげほっげほっ」
水を吐き、息を吸いこむ。
油断すれば落ちてしまいそうな私を、強い力が地上に引き上げた。
目を開けた私の視界に飛び込んだ、黒のかぎ爪と灰白の羽毛。鳥人の腕だ。
顔を上げる。
青い目とかち合った。
頭に浮かんだ名を呼ぼうとした瞬間、喧騒がこちらに迫る。
「待って!」
私の声に答えることなく、灰白の鳥人は背を向ける。
彼が立ち去ると同時に、宮殿の兵士らが私に駆け寄ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます