IQ170の品坂さんとHSPの俺
アリサカ・ユキ
第1話
ゲーセンで、3階にあるビデオゲームのコーナーに行くのは、人が苦手だからだ。なのに、遊びたいという気持ちはある。なので、これは妥協点。
日曜日の午後。この
いわゆるレトロゲームである。「ぷよぷよ通」という落ちモノパズルと「キングオブファイターズ`98」という荒いドット絵の格ゲーにいそしむ俺を、クラスメイトの誰も知らない。
格ゲーをやっていたら、誰かが乱入してきた。筐体から身体を出して覗くと、相手は、30歳くらいの背広を着た人。対人は燃える。もともと、言葉から過剰な意味を読み取ったりする傾向で、顔の見えないボイチャはそれを加速するのと、味方プレイヤーの動きからまでその意図をすごく考えてしまう俺は、MMOなどの協力型のオンラインゲームは、すごく疲れてしまうから、避けている。
で、ゲームの苦手な俺は、この格ゲーでいつものように、コテンパンにやられるのだ。難しいゲームは嫌いだ。俺はゲームに簡単な気晴らしを求める。だから、攻略に頭を使うのは苦手。ただ、何も考えずにできるのがいい。なので、上達はしない。
俺が好きなのは、本当は本を読むことで、それはそれなりに深く考えながら読む。だから、速読なんて、思考の隙間があるのか疑問なのだけど。
席を変えて、落ちモノのパズルゲームを始めた。
なんだろう、上から落ちてくるスライムを操作して下に積まれたスライムを消すゲーム。
スライムには色があって同色が4つ繋がると消える。
落ちてくるスライムをわざと消さずにたくさん故意に重ねて、うまいことタイミングよく一度に何個も消すこともできる。
消せば消すほど相手におじゃまな透明のスライムが現れる。
スライムを消しきれず、天井まで溢れると負け。
ルールはもっと説明しなくては完全ではないが、ややこしいので省略する。
上手いおじさんとかは、10とか、いっぺんに消してるのに、俺はよくて3連鎖。
2連鎖の時の筐体から出る「ファイヤー」という言葉が、お店のこの階の電子音の混ざった中で、何度も繰り返し、やけによく聞こえる。
対戦に誰か入ってきた。
俺は癖みたいなもので、相手の姿を視野に入れる。おや、俺と同じくらいの歳の女子だ。セーラー服で、それが、県内一頭いい学校! で、耳を出した長いストレートの髪の毛を金髪にしてる? 金髪というのは、すごい。比較的明るい茶髪とかは時に見かけるが。それに、言ってしまえばエリートの学校で、髪の毛の校則違反してるやつとか、見たことない。
エリート校にパズルで勝てるか! と誰にも勝てない俺は、すぐにあきらめた。弱腰に始めたプレイで、え、なんか続くんだけど。ルールを把握してないのかな。変な動きしてるよ。初見殺し! と、俺はしかし故にこそ頑張れなくて、負けようとする。なのに相手がヘタレすぎて、消せるスライムを消さずに自滅した……。
俺は思わず上半身を横にして、相手の方を見た。女の子も、身を乗り出してこちらを見ていた。むっつりして、涙目。怖っ! 俺はすばやく引っ込む。
ん?
俺は、ゲームの続きを無視して立ち上がった。女の子の横に行く。
怪訝な表情でイスから俺を見上げたそいつは、こちらをにらんでいたが、しかしだんだんと緩んだ顔になり、笑顔になった。
「
「
幼稚園から、小学校、中学校の付き合いで、高校進学とともに疎遠になった幼馴染との再会だった。
–––––––––––––––お知らせ––––––––––––––––––
お読みいただき、ありがとうございます。
物語は始まったばかりで、話の主軸みたいなのは見えていません。
話の終着点としては、2人がお互いをどう思うのか、それを2人がはっきりとわかるまで、と考えています。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
次の章に、中学3年生以上推奨の数式が出てきて読みづらいところがあると思いますが、そこの部分は流し読みをしていただいて、以降、楽しんで読めるように描いていきます。
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