空を飛ぶ能力しかないと思っていましたがいつのまにかヒーローになってました。

無自信

第1部 第1話

 ヒイロは激怒していました。

その怒りの矛先は、周りの助けを求める人たちに対してでもなく、今自分のことを殺すかもしれない怪物に対してでもなく、無知蒙昧だった過去の自分自身に対して向けていました。


「願いごとを何でも叶えてあげる。」


あの時、光に包まれて姿形もわからない得体が知れない宇宙人らしき存在に言われたことを子供心に信じて願い事を叶えてもらった幼い自分を止められるものなら殴ってでも止めたいとヒイロは思いました。「あの時願いごとを叶えてもらったから、怪物と相対しているにもかかわらず、周りの人たちから助けを求められて、逃げることもできない状況に追い込まれているんだ。」と自分に腹を立てていました。


「もし、あの存在が神様だったとしても何も疑わないまま願いごとを叶えてもらうんじゃなかった!むしろ神様だったのなら、今のこの状況は神様が与えた試練かもしれない。乗り越えられる可能性は今のところ全くないけど。」などと考えていると、怪物がヒイロ目掛けて突進してきました。ヒイロは恐怖から目をつぶり、「あっ。死ぬ。」と思いました。


 空 飛一郎ソラ・ヒイロは平凡な少年でした。両親が金持ちでも、権力者でもない、平凡な家庭に生まれ育ち、小さい頃から学力も運動神経も平凡で友達の数もそこそこ、異性にモテることもありませんでした。大きな病気や事故にあうこともなく、身長もそれなりに成長して、今は高校に通っています。素行が悪いというわけでもなく、朝きちんと起きて顔を洗い、歯を磨き、母親が作った朝食を食べて、身支度を整え、登校します。部活には所属していませんが、下校した後は学外の活動でボランティア活動をしていて、むしろ素行が良いくらいです。

そんなヒイロに非凡なところがあるとするのなら、彼は空を飛ぶことが出来るのです。空を飛べると言っても、天気が良い日の登下校時やボランティア活動の時しか飛びませんでした。

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