ホラ吹きの木

ミンイチ

第1話

 ある日、とある研究所に種が植えられた。


 その種はなんの種か、どこでとったのかはわからないが、何人かの偉い研究員が指示をしたために育成が始まった。


 植えてから1週間はなにも変化が現れることはなく、どの環境が成長にちょうど良いかを調べることすらもできなかった。


 しかし、植えてから1週間後のお昼に下っ端の研究員が育成室で小さな嘘を言ったことで状況が変わった。


「彼女くらい俺にもいるさ」


 そう言った途端、その研究員にはいないはずの彼女の記憶が生まれ、種からは芽が出た。


 このことでパニックになった研究員はすぐに報告したことによって育つ条件がわかった。


 その条件とは、『近くで嘘が言われた』というものだ。


 嘘の程度が大きければ大きいほど、バレにくければバレにくいほど大きく育った。


 それに、この木の近くで嘘をついても現実にはならなかったため、何度も実験が行われていつの間にか60メートルを超える杉の木みたいになっていた。


 この実験をしたときの唯一の悩みは、ついた嘘の内容が本当の内容と重なって記憶が作られることだけだった。



 春になっても種を落とさないのでこれ以上の異変はないだろうと思っていたが、とある嵐の日にそれは起きた。


 嵐の中でも立っていた木の頂点に雷が落ちたことで、この木は本当の能力を発揮し出した。


 最初に嘘をついた研究員は本当に彼女ができ、いつの間にか結婚したことになっていた。


 脱税したと嘘をついた所長はそれが原因で逮捕されていた。


 嘘が本当になり、本当になった人々が生活を続いていくと木には葉が茂っていき、モンキーポッド日立の木に似た姿になって効果の範囲も広まっていき、いつの間にか世界中にまで広がっていった。


 それによってさまざまな事件が発生し、世界中で大きな混乱が生まれた。


 その中でも、この世界をどうにかしようとするものも現れ、木を切り倒すために旅立つものも居たのだった。

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