神様の嫁*短歌連作

草村

神様の嫁

神嫁の誉れを受けたは上の姉約束の彼は妹の側


喰われると覚悟の暇求めても来る新月待ちはせず


さよならと別れを告げる人もなく薄笑いの中離れた故郷


しずしずと朔夜の道を行くは誰物見の衆なき花嫁御寮


生か死か纏う晴れ着の意味すらも考えるだに無意味に響く


息ひとつこぼすことすら躊躇わる灯篭提灯地上に星が


終わりの日心ひとつにすべて収め見つめていたは先導の星


震える手呼吸の音と衣擦れと耳をそばだて伏せたかんばせ


食いでなき我ではあるが喰うならばいっそ首からお願いします


沈黙に機嫌損ねたしくじった冷や汗一筋破る「……は?」


神妻を求めた覚えこそあれど神饌の代とした記憶なし


ころりころ夫の背より転がりて仔狐見上げる「よめごさま」


嫁御さま嫁御さまだと沸く屋敷呆気にとられた彼女が嫁御


わたくしでよろしいのですかと問う視線受けて笑った金の月


春桜夏の蛍に秋紅葉冬はつとめて季節はめぐる


わたくしでよろしかった?と問う視線受けて笑った君だからいい


さよならと告げないでくれ今よりも先の世なんて知りたくもない


さみしんぼ背丈もなりも大人でも愛しき君は可愛いひとよ


共に見た数多の季節些細な時間その永遠に私はいます


またいつか約束した日彼方へと流れ去っても覚えていてね

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神様の嫁*短歌連作 草村 @ksmr155

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