電網霊媒師とスマホの中の怪ネコ
押見五六三
プロローグ
インターネットがまだ普及していなかった時代、テレビは超能力だの世紀末予言だの、はたまた宇宙人だの未確認生物だのと言った様々な奇々怪々、摩訶不思議なオカルト番組を毎日のように放送していたそうである。
特に夏に成るとお昼のワイドショーでも心霊写真特集などをやっていたそうで、視聴者さんから送られてきた不可解な写真を何度も見せながら、誰でも一度は耳にしたであろう
自分も幼い頃、この手の番組を見た記憶が朧気に有り、正直に白状すると夜中に思い返してはトイレに行けなくなった事が度々有ったのだ。一人で入浴中に頭を洗っている時なんか「ダメだ! ここで目を瞑ると奴らに背後を取られてしまう」と、我ながら訳の分からぬ妄想にとらわれる事が有ったのも事実である。勿論、今は立派な成人だから、ちゃんと夜中に一人でトイレに行けますけどね。但し、用足中に何か物音がしたら陸上選手並みのダッシュで布団の中に戻るけど。
そんな子供達にトラウマと学校でのネタ話を提供してくれていたオカルト番組なのだが、二〇〇〇年頃を境に段々とブームは下火に成っていったそうな。その一番の原因は、やはりインターネットの普及による情報の拡散なのだろう。
世紀末予言は外れ、超能力は手品だと種が明かされ、有名な宇宙人や未確認生物の写真などは「私が作った偽物です」とヤラセだった事を告白する人達が現れる始末。SNSや掲示板などで、それらが一般にも広く知れ渡って行く。
心霊写真も二重露光やピンぼけが起こすシュミラクラ現象が正体だとプロのカメラマンさんが暴いてしまい、信憑性はどんどん薄れていく。しかも今ではCGが発達したので、専用アプリで心霊写真や恐怖動画を誰でも簡単に作れる時代に成ってしまった。
こうなるとテレビでオカルト番組を放送しても「どうせ作り物だよ」と、端から信用してもらえず、視聴率を稼ぐ事が難しいのだろう。
まさに一世風靡したオカルトという概念自体が、今やインターネットによって滅ぼされようとしている。そう言っても過言ではないだろう。
だが、この発言に対し、あの人は鼻で笑いながらこう言った。
「逆だね。インターネットが本物の奴等を増長させちまった。これを懸念したからこそエジソンもテスラも断念したんだよ」
俺はこの言葉に息を呑んだ。
そしてあの人は続けざまにこう言う。
「今、奴らが一番巣食っている場所は、墓場でも廃墟でもない。お前さんが手にしているそれさ」
その時、俺が手に持つスマホの中の猫が「ニャア」と鳴いた。
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