六章「地獄変」
九軒町にある自然公園の一角。
そこに一組の男女がいた。
「やあ、桂くん」
「秋島……」
声を掛けられて、桂は振り向いた。
「やっと来たか」
純は周囲を見渡しながら言う。
「……なるほどね。ここなら人通りも少ないし、入り組んだ場所にあるからユウもすぐには駆けつけられないだろうな」
すでに何かに勘付いているかのように、そんな意味深なことを純は嘯く。
「秋島、俺は――」
何かを言おうとしたハジメを、純は片手で制した。
「〝なりそこない〟ね。君が自分のことを話してくれた時から、ずっと僕は考えていたよ。君と僕は鏡写しだ。似ていて、そして対照的だ」
純は静かに言う。
それから、空を見上げて言った。
「月が綺麗だねえ」
「……お前が言うと嘘みたいに聞こえるな」
「……ふふ、僕がこういう台詞を言うと、みんなそう言うよ」
「『鏡写し』ってのは、どういうことだよ」
「綺麗って言葉ほど、綺麗なものはないよねえ」
「……おい、聞いてるのか」
「聞いてるさ。君の方こそ、ちゃんと人の話を聞きたまえ」
「…………」
「綺麗なものを綺麗と思う心なら、僕にだってある。でも、綺麗って言葉は僕には似つかわしくない。引け目、なんだろうな、つまりは。だから僕は、普通であることを捨てた」
純は桂を指差す。
「でも、君は真逆だ。異常であることを、君は捨てた。だから対照的なんだ。僕は、本物のフリをしている偽物。君は偽物の皮をかぶっている本物。ただね、やっぱりどこかで似ていると、僕は思うんだ。君を見ていると、自分を顧みているような気になる」
「似ている? どうしてそんなことを言うんだ」
「君も僕も、独りだ」
「……仲間がいるだろ、【悪の此岸】っていう」
「仲間がいるから、孤独でないのか? 独りであることは仲間があることとは対立しない、独立した事象だ。そんな因果は人の想像にすぎない」
「だとすれば、人はみんな独りだ」
「そうだ」
純は否定しない。そして、言う。
「でも、人は皆、それに気付かない」
「……」
「僕たちは、それに気付いてしまった。だから、孤独で似た者同士だ」
「……俺は」
「孤独は辛かったろう。君が何かになりたかったのは、きっとそういうことだ」
「……」
「だけど君はこれからも孤独であり続けるのだろう。そして、僕には君の孤独を癒すことなど出来ない。ただ、似た者として慰めてやることは出来る。同じ傷を共有することが出来る。君はどうしようもなく孤独だけど、その隣にもう一人の孤独な人間がいることをどうか忘れないでほしい」
その瞬間、桂が純に掴み掛った。彼は乱暴に純を地面に押し倒し、その上に馬乗りになる。
「そうさ、俺は孤独だよ」
その手には抜身の【枝霧】が握られている。
「お前の言うように、これからも、ずっとだ」
「……そうだね、それで僕を刺しちまうのもいい。そういう幕切れも、あるいはあってもいいのかもしれない。それが出来るチャンスは今だけだぜ」
「そんなことは分かってる」
桂は【枝霧】を高く掲げる。
「俺は、【悪の此岸】を潰すべきなんだ。潰さなきゃいけないんだ」
しかし、その刃は――いつまで経っても振り下ろされることはなかった。
「……桂くん、そんな顔をするなよ」
「……」
桂は肩を落とした。
「殺せるわけがない」
「うん。分かってた」
「俺は――」
桂の目には涙が浮かんでいた。
「――俺はどうすればいいんだよ」
「さあね。ただ、僕が君にしてやるべきことは分かっているつもりだ」
そして純は一瞬だけ躊躇ったような素振りを見せて、それからはっきりとした口調で言った。
「君を【悪の此岸】から除名する、雨月桂」
桂はゆっくりと立ち上がった。そして、純から離れたところに崩れるように座り込んだ。
「君のことはちゃんと分かってる」
純はそのままの体勢のまま言う。
「僕は気付いてしまったよ。君はそんなものを背負っていたんだね。気付かなければ、僕は君を巻き込めたのに」
純の傍に、いつの間にか、一人の青年が立っていた。
「――ふう、君たちは一体何をやってるんだい」
そこにいたのは【死神】――ミコトだった。
「僕は――雨月桂、君を殺すために来たのに、そんな顔をされてちゃ、興が醒めてしまうじゃないか」
ミコトはとてもいらだたしげに髪を掻きむしった。
「……まあ、いい。僕は仕事をするさ。秋島純――立てよ」
純は言われるがままに立ち上がった。
「来い」
ミコトの姿が夜闇の中に消えていく。
純は抵抗もなく彼の後ろに付いていった。
そして、去り際、桂を振り返って言った。
「ごめん。分かってるというのは言い過ぎたかもしれない。僕としたことが失言だ。僕みたいなくだらない人間に出来るのは、もっと単純で簡単な行為だけだ。僕は、君を――」
桂は【死神】に連れていかれる純をただ見送るばかりだった。
「――信じてる」
Φ
あれから何時間が経ったろう。
「――アニキ」
桂は、顔を上げる。
そこには日野悠がいた。
「悪いけど来てもらう」
Φ
「答えなさい! 雨月桂!」
部屋の中に、少女の怒号が響く。
「お嬢は、どこに行ったんですか!」
殺風景な部屋だった。そこには今、桂を含め四人の人間がいる。
桂はその部屋の中央に置いてある椅子に座らせられていた。手足は拘束され、得物である【枝霧】も取り上げられている。
「お嬢はあなたに会いに行くと言って、出て行きました。そして、それ以降、連絡がつかなくなってしまった」
彼女は人差し指を〝変化〟させて、桂の眼前に突きつけた。桂の目の前には鋭い一本の針があった。
「単刀直入に訊きます。あなたお嬢を敵に引き渡したのではないのですか」
「林檎、待ちなさい」
そう言ったのは才悟だった。
「そう決めつけるのは早いんじゃない? 証拠はないんだし」
「でも……」
「君もそう思うだろ、ユウちゃん」
ユウは腕を組んで壁に寄りかかって立っていた。彼女はそう言われて、それまで閉じていた目をうっすらと開ける。
「……」
しかし、彼女は何も答えなかった。
「……とりあえず、訊き出すことにも順番があるよ」
彼は、普段は怠けていて発言も最低限に抑えるような性格である割には、意外と判断力というものを持っているタイプらしい。真面目なのに直情型である林檎ちゃんとはいいバランスだな、と桂は自分の危機的な状況を理解していないようなことを思う。
「駄目です! そんな回りくどいことをしているうちに、お嬢の命が危険にさらされるかもしれないんですよ!?」
「だからこそだよ」
「兄さん! 間違いありません! この人は【篝火】のスパイです! この人がお嬢の拉致を手引きしたんです!」
「手を下げろ、林檎」
「嫌です! どんな手を使ってでも、お嬢の居場所を吐かせます!」
「――林檎っ!」
才悟の怒号が部屋に響き渡る。感情を滅多に表に出さない彼からは想像もつかないような剣幕。思わず林檎はやっと手を引いたが、それでもどこか納得はしていない様子だった。
「……お嬢は、私の命の恩人なんです。兄さん、それはあなたにとっても同じでしょう……?」
「…………」
そう言われて、才悟も黙り込んでしまった。
「雨月桂――あなたは恐ろしい存在です。私は、あなたがお嬢の傍にいることがずっと不安だった。そして、案の定その不安は明確な形となって今降りかかってきた」
「…………」
桂は何も語らない。ただ無感動に、切実な林檎の瞳を眺める。
「答えなさい、雨月桂。あなたはお嬢に何をしたんです。お嬢は今、どこにいるんですか。その返答の如何によっては、私はあなたを――今度こそ、殺します」
「そんなことを言われたら、なおさら本当のことを喋るやつはいないだろう」
桂は薄ら笑いを浮かべて、初めて口を開いた。
「――っ」
カッとなったのか、林檎は桂に掴み掛った。
そんな時だった。
「アニキ」
それまで黙りこくっていたユウが口を開いた。
「アニキ、どうして否定してくれないんだ」
次の瞬間、桂は頬に強い衝撃を受けた。
いつの間にか、彼の目の前には林檎の代わりに、ユウがいた。
「……日野」
「悪いな、アニキ。オレ――言っちまったんだよ、もしものときはちゃんと責任は取るって」
そう言う彼女の声は悲痛だった。
けれど、日野悠が見せた弱さはそれが最初で最後だった。
次の瞬間には彼女は気丈な顔をして、そして毅然とした態度で桂に問うた。
「答えろ、アニキ。純はどこにいる」
「……お前は強いな」
桂はその双眸に暗いものを宿していた。
それは何かに疲れ切ったような、そんな目だった。
だから、彼がその問いかけに答えてしまったのも、その疲弊の延長だったのだろう。
「――
「……!」
「そこにある『ファイアフライ』ってビルが【篝火】のアジトだ」
そこにいた人間は全員が意表を突かれたような顔をしていた。それはそうだ。桂だって純からそれを聞いた時には耳を疑った。しかし裏を返せば、人が近寄らないあそこなら、身を隠す場所としては最適ということなのだろう。
「秋島純は【地獄】にいる」
桂は淡々と述べる。
「せいぜい行って、無駄死にすればいい」
Φ
「俺はどこへ連れてかれるんだい、林檎ちゃん」
腕を後ろ手に拘束されたまま、アジトの廊下を歩かされる。
「本来であればこの場であなたを痛めつけてやりたいところですが、さっきも言ったように、事態は一刻を争う。よって、あなたを幽閉します」
「幽閉、ね。それはおっかない」
「強気でいられるのも今の内です」
彼女はそう言って、桂を貼紙がしてあるエレベーターの前まで連れてきた。
「おいおい、林檎ちゃん、知らないのか。こっちのエレベーターは使えないぞ」
「分かっています」
そう言うと、林檎はエレベーターの上昇ボタンと下降ボタンを素早く交互に押し始めた。彼女の機嫌を考えると、八つ当たりしているように見える。
「……おい林檎ちゃん、あんまり機械ってものに無茶苦茶するのは良くないぞ。叩いたって直るのはテレビくらいだ」
「最近のテレビは叩いたって直りませんよ、雨月桂」
「…………」
「黙っていてください」
「……分かったよ」
桂はしぶしぶと言ったふうに首肯する。
しかし、よく見てみると、林檎はボタンをただひたすら交互に押しているわけではないらしかった。時には何回か上昇ボタンを押した上で、下降ボタンへ指を滑らせる。
そんな動作を繰り返していると、やがて、突然、エレベーターの下降ボタンが点灯した。
「……へえ」
感心したような声をあげる桂。
どうやら、このエレベーターは動作していないわけではなかったらしい。しかし、こうして貼紙がしてあることと、今見たような特殊な操作を行わないと動かないことを鑑みると、当然ながら、これは普段からこのマンションの住人に使われるとかなりまずい代物だということだ。
「さあ、行きましょう」
桂は嫌な予感がした。
「幽閉って、どっかの空き部屋を利用でもするのかい」
「そんなわけないでしょう。そんないかにも逃げられてしまいそうなこと、するわけないじゃないですか」
「……じゃあ」
「このエレベーターの向かう先は、地下深く――」
そして、彼女は言った。
「――そこにある、真っ暗で冷たい牢獄棟です」
Φ
暗い廊下を、林檎の懐中電灯の光を頼りに歩く。
廊下の両側にはいくつもの牢屋が並んでいた。
「ここは、普段【悪の此岸】が捕らえた凶暴な【異能遣い】たちを幽閉しておくために使っています。しかし、運が良かったですね、雨月桂。今日は偶然、捕らえている人間は一人もいません」
「へえ」
それが桂にとって朗報なのかどうかは判断しかねる。
「……いえ、一人だけ例外がいるにはいますが」
「?」
「お気になさらず。どうせあの酔狂な男もわざわざあなたなんかに関わるようなこともないでしょうし」
彼女はふと足を止めた。
「――ここです」
それは廊下のもっとも奥の牢獄だった。
そこには何もない空間だった。映画なんかで観たイメージとして、桂はそこに簡易なベッドとか、トイレみたいなものがあることを想像していたのだけれど、そこにはただ、ごつごつとした石の冷たい床があるだけだった。
「じゃあ、ここに入ればいいのか」
桂の問いに対する返答がない。
林檎の表情を窺おうとすると、彼女は反対側の牢獄を見ていた。
懐中電灯は桂の入る部屋を照らしているので、彼には何も見えないが――そこに誰かいるのだろうか。
「……不気味な男」
それだけ呟いて、林檎は視線を桂に向けた。
「入ってください」
桂は檻の中へ通された。
「――あなた、何の抵抗もしませんでしたね」
そう言いながら、林檎は太い金属で出来た格子の扉を閉める。
「何だい? 抵抗してほしかったのか」
「まあ、そうですね」
林檎は目を瞑って言う。
「そうしてくれれば、あなたをこの場で殺す良い言い訳になりましたから」
「……」
普段の桂ならおっかなそうな表情をしただろう。今の彼は肩を軽く竦めるのみだった。
「言い訳なんてあとからいくらでも作れるだろう。殺せばいいじゃないか、俺を」
「いえ、でもこれでいいんです。だって――お嬢の身に何かが起これば、私はあなたを殺すだけでは気が晴れないでしょうから」
「……君は、純粋だな――秋島が気に入るわけだ」
ガシャン、と、林檎が檻を思い切り殴りつけた。
鬼気迫る表情で、桂を睨み付け、言った。
「あなたのような人間がお嬢の名を口にするな――虫唾が走る」
彼女は敬語ではなかった。
「……悪かったよ」
桂の牢獄に鍵がかけられた。
「――では、またあとで会うのを楽しみにしています。雨月桂」
「そう。俺は会いたくないな――というか、そもそも君は生きてここに帰ってこられると思ってるのかい?」
「ええ」
強い意志のこもった口調で林檎は言った。
「私はお嬢を取り返し、必ず生きて帰ります」
「……そう」
彼女は来た道を戻っていった。
周囲は暗闇に包まれ、一メートル先すら見えなくなる。
桂はそのまま地面に座り込み、横になった。こんなに暗いと、自分が目を瞑っているのか開けているのかさえ分からない。
林檎がいなくなってすぐに、彼は脱力感に襲われた。しかし、かといって途方に暮れるわけでもなく彼は呟いた。
「少し、眠ろう」
そうだ。それがいい。
今、この世界に桂の居場所はない。
だとすれば、そんな世界には目を瞑ってしまおう。
しかし、その瞬間、桂の目がオレンジ色の点を捉える。なんだ、自分は目を瞑っていなかったんじゃないか、と彼は思った。
その橙色は、光だった。
向かい側の牢獄。
そこにその男はいた。
ジッポライターの火が、パーマのかかった長髪を持った男を照らす。
「――よう、少年。また会えると思ってたぜ」
その男には、左腕がなかった。
Φ
「――ええ、じゃあ、切りますよ」
それまでどこかへかけていた電話を切り、林檎は目の前に立つ女に視線を向ける。
「……瀬名さん、今聞いていただいた通りです」
「そう」
瀬名鬼灯は薄く微笑んだ。
「【悪の此岸】全メンバーを緊急招集、ね。戦争でもやる気? あなたは」
「ええ」
林檎は答える。
「そのつもりです」
「あなたは相変わらず純一筋なのね」
「あなたも、来てください」
その問いに、瀬名は間髪をいれず答えた。
「行かないわ」
「……どうしてです」
「結果は見えているもの」
「あなたのような人でも臆病風に吹かれることがあるんですね」
「臆病? 馬鹿ね、無駄なことをしたくないだけよ」
「……彼と同じことを言うんですね」
「あら、そうなの。彼ったら親切なのね。ただもっとも、そういう無駄をこそ――私たちのリーダーは美しいと言うんでしょうけれど」
「……それなら――」
「でも、私はあの子の趣味――主義と言わないと、怒られるかもかしら――のために自分の命まで捧げる気なんてないわ。あなたと違ってね」
「……そうですか」
林檎は責めるような視線を瀬名に送った。
「なら、あなたには頼りません」
「そう」
林檎は行ってしまった。
「才悟くんも苦労するわね」
瀬名は独りごちる。
「さて、ここからが、佳境ってところかしら」
Φ
【悪の此岸】がその居を構える九軒町の真東に位置する七斗町は、五年前に起こった大火災により現在封鎖地域となっている。
七斗町はかつて炭鉱の町として栄えた地域である。その地下には多くの鉱産資源――石炭が眠っており、それを採掘することで七斗町は多くの富を得てきた。やがて、国がエネルギー資源の多くを他国からの輸入に頼るようになったことから、炭鉱は閉鎖、労働者たちも他業種への転換を余儀なくされたが、彼らの多くがそのまま町に居残って拠点としたことから、七斗町は、今度は住宅街として栄えることになる。
だが、五年前のその日――裏側の世界では【秋戦争】と呼ばれるその日――七斗町をあまりにも大きな災難が襲った。
原因不明の大規模な火災が起こったのである。
そして、あろうことか、その火はとうの昔に閉鎖された炭鉱にまで燃え移った。地下鉱脈にはまだ多くの石炭が残っており、それ以来、その終わることのない坑内火災が七斗町の土地を焼き続けている。
【地獄】。
封鎖された七斗町は今ではそのような名前を付けられ、人の寄り付かないゴーストタウンと化している。
その【地獄】の中には、炭鉱が及んでいない部分もある。特に、二丁目周辺は大火災からも逃れ、現在も以前の面影を色濃く残している。そういった場所まで封鎖地域に指定されているのは、有毒なガスを発生させ続けている炭鉱から十分な距離を取るためだ。
――そして、その七斗町二丁目にある複合文化施設――『ファイアフライ』に【篝火】の拠点はある。
聳え立つ
そこに十数人の人間がいた。その中央に立っているのは鉄森林檎である。彼女はそこにいる人間たち――【悪の此岸】の面々に向かって厳かな口ぶりで語った。
「【篝火】は何人もの【異能遣い】を飼っています。しかし、ほとんどが【異能】に溺れるあまりに鍛錬を怠ったような者ばかり。故に、数の差は大した問題ではありません。警戒するべき相手は、三人だけ。【ヤナギ】と【死神】、そして、リーダーであり、彼自体が集団の名前にもなっている――【篝火】です。こんなことを言うのもですが、今回あなたたちを呼んだのは、集団【篝火】を打倒する為ではありません。お嬢の奪還のためです。この三名と出くわし、危険と判断したなら、すぐにでも逃げてください」
林檎はそこにいる人間たちがそれぞれに浮かべてい表情を眺めて皮肉げに言う。
「まあ、『逃げる』と言う言葉の意味を解さない方もいるのでしょうが。――とにかく、全員、生きて帰りましょう」
住宅跡の外に出て彼らが見上げるのは、異様な空気をたたえる地上一五階建ての巨大な塔。
収容人数三千を超える広いコンサートホールや複数の飲食店などが設置され、毎日のように多くの人が訪れたその場所にも、今となっては、もはや当時のにぎわいはない。
しかし、そこにはたしかに、五〇余名の彼らの敵がいる。
彼女は仲間たちに意志を伝える。
「今日のこの日、【地獄】にて果てるのは――私たちではありません」
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