第2章 出会い
半年前の秋頃、ある一人の生徒が入塾してきた。中学三年生のその生徒をAとしておこう、その生徒は決して優秀と言えるような成績ではなかった。その頃のAでは第一志望には到底届かなかっただろう。
そんなAを担当することになったのは私と私の友人の日向先生だった。彼も周囲の人間に信頼されている。無論私も彼を心から信頼しているし、尊敬している。
基本的な教育方針は彼がAを教えて、私は進路を考えたり、彼の解説できない問題を解説したりと、私はどちらかと言うと補助的な立場だった。
私たちはひたすらAに勉強をさせた。Aはうつ病や朝起きれない病気を持っていたらしい。中学校の勉強は塾に入ってから本格的に始めたようだ。
しかしその現実は受験の前では同情すらされないのである。ただのペナルティや、甘えといったレッテルを貼られてしまう。
結局Aは私立も前期も受けることが出来ず、高校受験は後期一本のみの受験となった。
厳しさは優しさだと自分に言い聞かせ、なるべく厳しく接していたのは日向先生だった。私はその厳しさから来る重圧でAの心が折れないか心配で厳しく接することができなかった。今考えてみればそれが最初の失敗だった。
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