用語説明『序章』 …①



 ここでは本編で使用される専門用語の解説をしてまいります。

 このため未読の方にはネタバレとなる可能性がございますので、ご留意の上この先へお進みくださいませ。


 ※この言葉の意味もよくわからない等のご意見がございましたらアップデートしますのでコメント欄にお願いいたします。



***



 みかどの国が持つ神は白玉はくぎょくと言った。その力はさかほろぶ力だった。

 とおつ国が持つ神はせきぎょくと言った。その力は天長地久てんちょうちきゅうの力だった。



 この物語の核は、この二つの国がそれぞれの神をそれぞれの目的の為に「五百年前に」取り換えた事によりはじまったと語られる。



みかどの国

  ――異地いちの事。


とおつ国

  ――姮娥こうが国の事。当時は夜見よみ国だった。




白玉はくぎょく

  ――しろ玉様たまさま姮娥こうが国の祖神・赤玉せきぎょくとトレードで異地いちよりもたらされた神。力の名は死屍散華ししさんげさかほろぶ力、つまり強力な生命力のこと。五邑ごゆうの民はぼ無傷で取り扱える。このため五邑の民が力を供物くもつにうつしとり、姮娥国に献上していた。姮娥こうがの民は不死の民だが、この死屍散華を使えば殺せる。よって武器として姮娥に使われる。献上の対価としてむらには食物や生活必需品が与えられている。

 力の移動は髪の色が変わることで判断されるため、邑人は参拝に使う布に自身の髪を刺繍してそれを目印にする。力が移れば刺繍された髪(つまり切り落とされた髪)は白く変わる。これがごくまれに変わらない者がでる。死屍散華との親和性が高く、髪に移らず自身の肉体に移る事から発生する現象である。このことを『色変わり』しないといい、該当者を『白玉はくぎょくうつわ』と呼ぶ。『色変わり』しないものの中から女性だけが次の白玉に選ばれ、指定の部位に切り分けて各むらであらたな参拝対象とされる。うつわはその身体に神を継承するため人ではなくなる。よって切り分けられても死なない。ただしその「意識」は消失し、代わりに白玉の意識が時折反映されるとされていた。死屍散華は水に溶けるという性質をもつ。神を継承はするが器の寿命自体は変わらない。よっておよそ三十年~四十年周期で交代の継承が行われてきた。

 赤玉と白玉のトレードから五百年が経過しているとされる。



赤玉せきぎょく

  ――げっ朝・姮娥こうが国の先朝であるはく朝・夜見よみ国の時代より祖神としてあがめられていた信仰の要。不死石しなずのいし寶石ほうせき)をその身から生み出す。天長地久てんちょうちきゅうの力の事。正体は不明。現在は異地いちにいるということだが生死も不明。このため不死石は増える事がなく、減る一方となっている。



五邑ごゆう

  ――異地いちから白玉と共にもたらされた死屍散華を移し取ることのできる民。これを五つのグループに分割し、姮娥こうが国の各地に分けたものをいう。分散した白玉を総称してほうという。

 ①各むら名、②統治に当たる邑長ゆうちょう家。③分祀された五寶ごほうの各名前とそのまくら=通称。④特性は次の通りになる。


 一.  ①方丈ほうじょう ②四方津よもつ ③ほとけ御石みいしはち=『真名まな』 ④『発露はつろ』その死屍散華を浴びた者の持つ残虐性を限りなく増幅させ露呈する。


 二. ①蓬莱ほうらい ②さい ③蓬莱ほうらいたまえだ=『かんばせ』 ④『繁茂はんも』死屍散華の量を文字通り際限なく増大させる。


 三. ①員嶠いんきょう ②仙鸞せんらん ③火鼠ひねずみかわごろも=『御髪みぐし』 ④『必滅ひつめつ五寶ごほうの中でも取り分け月人の殺傷力が高い。


 四. ①えいしゅう ② ③りゅうくびたま=『玉体ぎょくたい』 ④『如意にょい』思いや願いを叶えるよう導く。


 五. ①たい輿 ②りょ ③つばめんだ子安貝こやすがい侶=『子宮しきゅう』 ④『繁殖はんしょく』異種族交配を可能にする。ここでは月の民と五邑の民の交配が成った事を意味する。



 岱輿たいよは四百年前に反乱を起したため邑ごと殲滅せんめつさせられている。残ったりょ家の者が『子宮』を瀛洲に運び込み、『玉体』と合祀させた。この子孫がじゃくでありまた千鶴ちづるである。

 次いで員嶠いんきょう叛意はんいが見られたため同じく邑は殲滅。生き残りである仙鸞せんらん八俣やまたが護衛の悟堂ごどう(大陀羅)と共に『御髪みぐし』を瀛洲に持ち込み再度合祀。このため瀛洲えいしゅう白玉はくぎょく三寶合祀さんぽうごうしと称される。




不死石しなずのいし

  ――赤玉せきぎょくがその身から生み出す石。五邑の民が子を為すにはこの不死石を体内に安置する必要がある。具体的には女子は子宮内、男子は睾丸がその安置場所となる。生まれてすぐに手術によって安置される。手術は邑長の家系のものの手によって行われる。安置されなかったものは繁殖の能を得られないが、代わりに常人の六倍の膂力りょりょくを有することになる。



寶刀ほうとう

  ――白玉の器を切り分ける事ができる刀。不死石しなずのいしで作られている。切り分けを実施するのは黄師こうしの大師長。寶刀は普段はげっこうがいる帝壼宮ていこんきゅうの内宮に納められているらしい。死屍散華ししさんげ姮娥こうがもたらされる以前は、この不死石の寶刀が民の命を奪える唯一のものだった。これは民の肉体を切り分ける事が出来たからである。しかしそののうには処女童貞でなければ切れないという限りがあった。



・「西にしはて

  ――瀛洲えいしゅうで、一家族まるごと参拝ができない者が移り住む隔離地区。実際は食国おすくに母子だけが住まう。かつては黒野犴こくやかんも共に暮らしていた。東馬とうまは「西の宮」と呼んだ。



仙山せんざん

  ――寝棲ねすみが所属している員嶠いんきょうの残党と蓬莱ほうらいの有志連合隊。頭首は弓削ゆげの麻硝ましょう



白浪はくろう

  ――先朝の遺臣が四百年前、殲滅間際の岱輿たいよの民を救い出し、この二つが合流した集団。岱輿の五寶が『子宮』であり、その特性が『繁殖』だったため混血が多数発生している。この結果を受けて、この四百年でどうすれば交配が可能となるのかが明らかとなって来た。なお、死屍散華は水に溶けて移動するため、影響はすでに国土全域に及んでいる。


黄師こうし

  ――長らく瀛洲えいしゅうでは商人と認識されていた軍隊。禁軍に並ぶ公軍。この両雄を合わせて軍師ぐんしと称する。もう一軍、しょう軍がある。かつては赤玉を護る僧兵軍だったのだが、現在は総本山の黄師と皇帝を護る黄師の二系統に分けられている。皇帝側の黄師が五邑の管理に当たっている。



・『筒視隊とうしたい

  ――黄師こうしに籍を置く間諜部隊。五邑の内に入り込む『とう』、周囲からの観察と『筒』からの報せを持ち帰る五名の『隊員』。上げられた情報を精査し、月如艶げつじょえんに直接報告を上げる『』の七人編成。『筒』が悟堂ごどう



こう

 ――夜見よみの民の繁殖形態。この種が子を生すには三交さんこうが必要となる。これはつまり親となる個体が三人必要だという事を意味する。三人の親からそれぞれ一種ずつの性を引き継ぎ、その混合の結果性が決まる。ほぼ全員が両性だが出産能力が高いのは経血の発現した雌性しせいが二種あるものとされる。性の全てが雌性、つまり雌性三種はほぼ存在せず、同様に雄性ゆうせい三種もほぼ存在しない。これを完全雌性・完全雄性と言い換える事もできる。前者が宇迦之であり、後者が白皇にあたる。白皇は懐妊能力がなく、宇迦之は他人に種を与える事ができない。よって三交目に赤玉の種を得た。この子が食国になる。長命種のため繁殖が発生しなくとも滅びる事はない。

 熊掌ゆうひの発言による「下世話な表現かもしれませんが、女が妊娠するためには、二人の男の子種を得ないとならないという」説明が最も端的。



・『受け皿』

  ――母体となる者が体内に二つ持つ。ここに雄性の種を貯蔵する。この貯蔵は新たにより強い雄性の種が入れられぬ限り永久に種として保存される。二つの『受け皿』が埋まり、自身が持つ卵と交配が成れば子が産まれる。しかしこれが成立する事は恐ろしく稀である。






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