序章

序章解説



 『白玉はくぎょくそら』序章は以下の章立てとなります。



   序文

   1 東瀛とうえい

   2 密事ひそかごと

   3 嚆矢こうし

   末文



 カクヨム版は総文字数212,816文字。あとがきをふくめて全47話となります。

 


 海と山に挟まれた小さな漁村を舞台に物語ははじまります。

 この村は全百戸、村民六百程度の小さな村で、村長一族である家が統治の任に当たっています。


 村は南東側に向けて海にのぞみ、湾をゆるく囲んだ形をしています。『山から落ちた肥沃ひよくな土砂と、海から寄せられた堆積物たいせきぶつでできた、わずかながらも豊かで、ささやかながら傾斜のある平地』でできており、『田畑を作る事を最優先に整地されて』います。

 南東と北西を端とし、その両方は断崖絶壁。ゆいいつ東側に小さな道が開けていますが、出入りは暗黙の了解で禁止されています。


 海に面した山は中央付近が一番高く、そこには石段がかけられ、中腹にあるほこらには『しろ玉様たまさま』と呼ばれる存在が祀られています。


 この白い玉様は『村の五穀豊穣と、漁の安全を見守って下さっている』とされ、早朝に村民のもちまわりによって参拝が実施されています。


 この参拝に問題がありました。


 ルールとして、白い玉様への参拝は各戸毎とごと、つまり家ごとに一か月間の当番があたります。そして、五歳以上からはじまり、髪が白くなるほどに老いるまでは、老若男女問わず、必ず一人で参拝しなければならないのです。


 そして、この参拝手順はとても細かく決められていて、絶対厳守しなければならない。なぜなら『参拝に失敗すれば、白い玉様に命と体を獲られるからだ。』と言い伝えられているからです。


 しかもこれは迷信ではなく、三十年前にも実際に少女がひとり行方不明となっていました。



 そして何よりも重要なのは、この村には、統治者以外に識字がなかったのです。



 文字の分からない村人達が口伝と身振りだけで伝えてきた参拝作法。

 そして山の中腹という立地条件上、手足が不自由なものや、聴覚ちょうかく劣位れつい、また物理的に耳が聞こえない者にとってはこれを実践することが難しくなります。


 これを解消するのが『責任の単位は戸毎』という譲歩案なのでした。



 この物語の主人公は、このうちの聴覚ちょうかく劣位れついに該当し、先天性の特性によって何度教えられても作法通りに行動ができず、幼いうちに父親から何か起きてはいけないからという理由でほこらに近寄る事も禁じられ、また他人に迷惑をかけないために、村の中央から東側へは行ってはならないと厳しい制限を設けられていました。


 そして、それに対して村長から特別に指名を受けるほどに参拝を任されているのが主人公の妹だったのです。





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