ほんの刹那の心情を丹念に短い文章で切り取って、その労苦を読み手に感じさせない軽やかさが、とても心地よいと思いました。軽やかに感じるのは、切り口のユニークさにあるのかもしれません。不思議な空間に引っ張り込まれる思いでした。短歌の定型に則っていないことに、途中まで気がつきませんでした。こういう時、どの短歌がよかったかを述べるべきかと思ったのですが……全部です。でも敢えて（敢えて）私の好みを述べるならば、「桑の実を」「トーストの」「曇り空を添えて」になります。