第52話 私の家は油屋にある

お母さん、お父さん。

迷惑ばかりかけてごめんなさい。

私はいないほうが良いことぐらい薄々気付いていたよ。

私の存在が家族にとって毒なのも分かっていた。


きっとそんなことないって言うかもしれない。

だけど、私が迷惑だってお母さんは思ってると思う。


私はいちゃいけないんだと思う。

ここで生活してて一緒にいると私たち壊れちゃうね。

私はいないほうがみんなのためだって知ってるよ。

私はもう消えられるなら消えてしまいたい。


私はね、今油屋っていう場所にいるの。

そこはね、千と千尋の神隠しに出てくる場所なんだけどね。

私はそこで働いているの。

みんな私のことを信頼してくれて良い人たちばかりだよ。

みんな大好きなんだ。

でもね、やっと帰り道が分かったんだ。

帰り方が分かったの。

だけど、私はここを出たらきっと死んじゃうって思うから外には出ていないの。


私はここでずっと暮らすって心に決めたんだ。

私のことは心配しないでね。

私は私でちゃんとするから。

でも、油屋の外に出たらきっと苦しくて息ができなくて、危ない気がするから。

私は出ないんだ。


今までごめんね。

迷惑ばかりかけてごめんね。

私はもう平気だから。


お父さんもお母さんも体に気をつけて生きていってね。

私はもうこの世界に戻りたくないの。

みんな大好きだったよ。

バイバイ。

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