第45話[仲間たちとの共闘]

「行くよっ!オレオール!」

「あぁ!」


俺とカヌレは同時に走り出す、俺の方が先に前に出て、魔物の注意を引き寄せつつ結界を発動しその動きを止める、その隙にカヌレが魔物の体をすごい速度で駆け上りつつ攻撃をする


「はぁぁっ!!」


カヌレの攻撃に怯んだ魔物を、障壁を解いた俺が攻撃する、幸いメリナの当ててくれた矢のおかげで奴の視界は狭まっている、つまり攻撃も回避しやすいし、そもそも潰れた方の目側に立っていれば当たらない可能性も高い、先ほどよりも状況はかなり好転したと言える


「モナ!フラッシュだ!」

「はい!はぁぁぁっ!」


あの時のようにモナに指示を飛ばす、モナの強いフラッシュのおかげで魔物の視界はさらに奪われる、その間にカゼイチとメリナも攻撃をしてくれているようだ……ちなみにこういう時に両目を潰すのは得策ではない、視界が真っ黒になった魔物の攻撃は不規則になり余計に避けづらい、そのためもう片方の目は残しておく……メリナもそのことはわかっているようで、先ほどからメリナが攻撃するのは腕や足、体などが多い…もちろん俺もカヌレもだ、モナのフラッシュもあの魔物の視力を奪うほどの力はなく、ただ怯ませただけ


「…オール君!あと少しです!あと少しで…!」

「!了解…!」


あと少し…その言葉が本当なら希望が見えてきたな、まだまだ攻撃の手を休めるわけには行かないから、そこだけは注意しないといけないけれど


「オレオール!一気に攻めるよ!」

「うぉっ!?か、カゼイチ…お前こんなことまで…!」


カゼイチの使う風の力で体が浮き上がる、いや風の力強すぎるだろこいつ…それは置いておいて…


「私がオレオールの動きに合うように風を動かすから、オレオールは迷わず攻撃して!」

「!……あ、あぁ!」


迷わずに魔物の方へと真っ直ぐに突き進む、尻尾を使った攻撃や腕の振り払いなど、様々な攻撃が飛んでくるけれど、それも風の力に乗って回避して攻撃を加える…思うように動けるのは、先ほど言っていたようにカゼイチが俺に合わせてくれているからだろう


「っ!ダウンした……!みなさん、今です!」


グォォォ…と声を出し、体勢を崩す魔物、その隙にエクレのブーストが入った俺たち五人の攻撃を叩き込む…モナが攻撃魔法を放ち、メリナが矢を飛ばして、カヌレが切り刻んで、カゼイチが全力で風の刃を飛ばす、俺もそれに合わせて魔物に攻撃を加えていると……


「グォォォ……オ、ォォォォォ……」



魔物が倒れ、そして消滅した



「っはぁぁぁ……」


なんとか山場は乗り切った……と言ったところか…


「オレオール!」

「ぐぇっ!!!」


ズドンとお腹に衝撃が走る…何かと思えば俺のお腹にカヌレが抱きついていた


「お、おいおい、どうしたんだよ急に……」

「どうしたんだよじゃないよこのバカ!アホ!無計画の無頓着!」

「なんだ無計画の無頓着って」

「ったく…ほら、これ!」

「んぇ?な、なにこれ」

「あの時の魔物討伐……その報酬で作った剣、使い勝手教えてよ」

「あぁ……」


カヌレから短剣を受け取り軽く振り回す…まだまだ軸がぶれていて、鋭さも荒削り、正直武器としては使い物にならないだろう


「ぜんっぜんダメだな」

「ぅっ……いつも通り辛辣な意見だこと…」

「軸ブレに鋭さもない、持ち手の握り心地も微妙だし正直言ってすごい微妙」

「すごい言ってくる!!」

「はははっ……でも」

「でも?」


持ち手の握り心地が微妙でも、使用者が怪我しないようにしっかりと整備されている……鋭さは無くても真剣に削ったんであろう跡は残っている……それに、昔から見てるから知ってるけど、最初は剣というか鈍器に近かったのに鋭くなってるし、ブレも少なくなってきてる


「まだまだ荒っぽいけど成長はしてるよ、その証拠に前より随分良くなってる」

「ほ、ほんと!?」

「あぁ、よく頑張ってるな、カヌレ」


そうしてカヌレの頭を撫でる…耳がピコピコと嬉しそうに動き、ツンッとした表情をしながらも嬉しそうだ


「でも、本当に心配してましたよ、せーんぱい」

「うぉっ」


モナが後ろから首元に腕を回して肩を組むようにして来た…なんというか離れててもいつも通りだな


「先輩のことだから、この旅の間もいろんなことに巻き込まれまくってたんじゃないっすか?」

「流石鋭いなモナ……」


「オレオ……」

「!メリナ……」


かつて愛した人の方へと目をやる、メリナは少し申し訳なさ気に俯いていて、なんだかグッと気まずさが増した……増したけど、俺はメリナに伝えなければならないことがある


「メリナ、俺は」


その瞬間、俺の後ろを何かがすごい勢いで通り過ぎた……俺たち6人はそちらの方へと目線を向ける


「……ぅ……ぅぅ…」


「アイギス!!!」


カゼイチが急いでアイギスの方へと向かっていく…確かあの男と戦っていたはずじゃ…!



「ぐっ、ふっ……油断……しました…」


刀を地面に突き刺し、支えにしてなんとか立ち上がるアイギス……彼と反対側の方へと向いてみれば、アイギスを弾き飛ばしたであろう格好をした男が立っていた…間違いなくアイギスと戦っていた男だ……彼も彼女と同じように傷だらけでボロボロの格好をしている


「っ!」

「そこの緑の髪した女の人とそこのなんか杖持ってる人!あいつの目を見ないようにしてください!」

「え!?う、うん!」


「え、モナ?カヌレ?」


2人ともすごい敵対心剥き出しだ……しかもメリナもあの男に殺意を持った目で矢を番えている


「えちょ、3人とも」

「オレオール……アイツは…アイツだけは倒さないとダメだよ」

「え、いやダメってなんで?確かに謎に襲って来たりしたけど」

「あの男、魔法を使ってメリナさんを魅了してたんすよ」

「あ、なんかさっき言ってた魅了の魔法ってやつ?」

「そう……あいつの目を見ると、あいつの思うがままになってしまうの」


え!?マジ!?そうなの!?なにチートみたいな魔法持ってんの!?普通に信じられないんですけど!




……ん?待てよ…?それってもしかして…


「まさか……メリナが浮気したって話も」

「そういうこと、なんすよね」


モナが申し訳ないという顔でチラリとこちらを見てそう呟いた…俺は矢をつがえているメリナの方を見る…彼女の目に宿っている殺意はあの日、俺が旅に出ることを決心したあの日にあの男に向けていた目線とは明らかに違っていた……それはまるで…愛する者を殺した仇へ向ける視線


「……マジ、なんだ…」


その彼女の目を見ればその話が事実でいることを理解出来た、つまりメリナが浮気をしたのはメリナの意思がそこにあったわけではなく、あの男の魔法による現象だったと言うわけだ


「……」


そう考えると、なんだか複雑な思いになってしまう……よくよく考えればこうして逃げ出して来たのは俺の問題だったわけだし…俺がメリナを信じきれていなかったことが問題だったのだ……だけど、なにをどう言い繕ってもメリナが他の男に体を開いたのは事実だ、それだけは揺らぎようのない事実であって


「くっそ……やはり手強いな……!」


あの男は真っ直ぐにアイギスを睨みつけている、アイギスもアイギスで刀の支えとカゼイチの補助があってなんとか立っているような状況だ…流石に今攻撃されたらアイギスはひとたまりも無いだろう……けれど


「アイギスに手出しはさせないぞ」


俺は剣を水平に持ち、アイギスを自らの身体で隠すようにして男の方を見る


「ちぃっ…オレオール・シュトラムル…貴様だけは、いつか必ず絶望の底へと叩き込んでやる…我ら、シンクロトニカの名の下に……!」


そういうと、その男は闇の中へと消えていった


「シンクロ、トニカだって……?」


俺たち7人はそれをどうすることもできずに見送るしかなかったのだった



たんぽぽの花言葉[別離]

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