第44話[再会]

「くっ……!カゼイチ!」

「オッケー!」


この岩場の地に、二つの戦いの音が響いている、一つは白い髪をした若者と何かを胸に秘めた瞳をする男性の戦いだ、もう一つは巨大な魔物と共に戦う音、かつてこの地上から絶滅したとされた古の魔物だった…魔物に立ち向かう男は魔物の攻撃を時には避け、時には受け止め、自分にも仲間にも攻撃が行かないようにしておきながら魔物に攻撃を加える、その後ろからとある女が男や少女に的確な指示をし、攻撃が彼に入らないように障壁や回復を行っている、少女は男にやって攻撃を受け止められた魔物の隙をついて攻撃を行い、魔物の技を風の力を使って回避している


「くぅぅ……装甲が硬いよ、あの魔物…!」

「だな…攻撃が通じてる気がしないぞ…」

「今は耐えてください…!そうしないと…くっ!……一瞬で首を持っていかれますよ!」

「ってことは、一瞬でも気を抜いてられないな」

「正直言って、あの魔物を倒せる気がしないんだけど…」

「攻撃を続ければ、勝機はあります…!」

「え……?」

「この魔物は、ある一定以上に攻撃を加えると、装甲が急激に脆くなりかつダウンするタイミングがあるんです、それまで攻撃を避け続けて、かつこちらの攻撃を当て続けるんです!」

「……全く、簡単に言ってくれるよね…!」


女の強い意志に少女は小さくため息をつく、けれどその口元がニヤッと釣り上がった、どうやらまだ少女は諦めていない様子…女の話を聞き、どうやら希望を見出したようだ


「いや、結構厳しいと思うんだが…?」


それに対する男の方は苦虫を噛み潰したような顔をしている、それもそのはずで、魔物の動きは素早くかつ攻撃力も高い、その攻撃を全て避けるか受け止めるかしろと言われているのだから荷が重いと言うものだ、何を隠そう彼には少女のような秀でた能力があるわけでも無ければ、女のように障壁を張ることができるわけでもない、それどころかこの世界でほとんどの人が一般的に使っている魔法を自分1人では使うことができないような存在である、そのため彼に対してはかなり厳しいことを女は要求しているように見える


「オール君、その剣の力を引き出す時です!」

「え?」

「解放された2つの能力…今のオール君なら、十分使いこなせるはずです」

「……いや一回も使ったことないんだけど…」


「待てよ」と彼は呟いた、自らが手に持つ剣を見る……不思議と輝いて見え…なぜか使い方が分かり始めたのだろう、彼の瞳には光が戻ってきた、仲間を信じて戦おう、という意気込みを強く感じさせるその瞳は、真っ直ぐに目の前にいる魔物へと向かっている


「バレット!!!」


少女が風の刃を放ち魔物の注意を自分に向ける、少女に集中している間に男が魔物に向けて攻撃を行う、魔物はのちに攻撃してきた男の方に狙いを定めて長い尻尾を払ってきた


「オール君!プロテクト・エーテルです!」

「は!?な、何言って…!プロテクト・エーテル!」


男がそう叫ぶと、手に持った剣に魔力が必要分吸い取られ、目の前に強靭な盾が召喚され、尻尾の攻撃を受け止めた…


「これ……盾…?」

「オール君の魔力を元にして、剣が展開したプロテクト・エーテルです、簡単に言えば障壁を召喚する技ですが、使いようによっては攻撃にも使えますよ」

「いや、それよりも今すっごい恥ずかしかった……」


咄嗟に言われたこととは言え、思いっきり技名…というか、名前を叫んでしまった…窮地にいるという状況は変わらないのに羞恥心の方が上回ってしまう


「おっ、いいねぇ!これでもし攻撃が来ても、オレオールは平気ってわけだね!」

「いやまぁ、え……大丈夫かな…」

「まぁまぁ、まだまだこっからだよ!」

「あぁ!」


羞恥心を振り切り男は魔物に攻撃をする、魔物の攻撃を避け、先ほどの盾で防ぎ、攻撃の流れを少女に渡す……女は自分の力を使い、2人の身体能力を高めていた


「でぇやぁぁっ!」

「ふっ!やぁっ!!」

「っととと、エクレの言っていたダウンまでは、まだまだかかりそうだな」

「やぁー、消耗戦だねこりゃ」

「それでも、今は戦いを続けるしかない」


2人は攻撃を続ける、時に女の障壁が身を守り、時に己自身の力を使って回避し、また使い立ての力を使って攻撃を防ぐ


「ブレイブの方をっ!気にして……る、暇もないな…!」

「今のところは大丈夫そうだけど…あの男も相当手だれっぽいし、長くは持たないかもね…」

「くそっ…なんとかこいつを倒さないと…!」


ズザザザ、と彼は地面に着地をして攻撃を加える…けれど、魔物はその攻撃を意に返さなかった


「!」

「エクレ!」

「エクレちゃん!」


魔物は男と少女の攻撃を気にもせずに、女の方へと攻撃をした、どうやら彼女が2人の身体強化をしていることを悟ったのだろう


「ふっ!」


女は障壁を張り攻撃を受け止める、だがそれも度重なる攻撃には耐えきれず、ついに障壁が割れてしまう


「あぁっ!」


「まずい!」

(今から風の力を発動しても……!)


いくら手を伸ばしても、魔物は自身の魔力を貯める、そして片方の手から光線を放ち……


「おぉぉぉらぁぁぁぁっ!!!!」


その少女の前に、新たな障壁が貼られた……どうやら別の人物が自身の魔法を使って攻撃を防いだようだ


「な、なんだ…!?」

「くぅ…凄い煙……!」


少しずつ煙が晴れて……その先にいたのは……


「も、モナ!?」

「お久しぶりです!先輩!」


かつてオレオールと共に同じギルドでチームを組んでいた魔導士、モナ・カフトローであった



「ならなんでここに……!?」

「ある男を追ってたらここに出たんですよ、まさか先輩がいるなんて思いもしませんでしたけど!」

「と、とにかくここは危険だ、早く戻れ!」

「いやいや先輩、ここで引くのは俺たちのプライドが傷つくっすよ」

「いやそのセリフはフラグ……ん?俺たちって…」


「せいやぁぁぁっ!!!」


「あ、あれは……カヌレ…!」


短剣を持って魔物に飛び込んで行ったあの姿、間違いなくカヌレだ、俺の後輩で妹分みたいな感じだった…そんなカヌレが今、その小さな身体と獣人の身体能力を活かして魔物の身体を駆け上りながら攻撃を加えている


「やぁぁぁっ……っと!」


最後の攻撃を加えたのち、魔物から高く飛び俺の方へやってきたカヌレ…なんでここに……って、カヌレと同じか…男を追ってきたんだったか?


「久しぶり!オレオール!」

「全く……お前ってやつは…けど、あの魔物、かなり手強いぞ」

「大丈夫!私たちが揃えば、どんな魔物だって倒せるよ!いつも、そうやってきたでしょ?」

「……まぁな」


「あの子たちは一体……っ!しまった……!」

「!カゼイチ!」


まずい!エクレの方に来たモナや、こっち来たカヌレに驚いていたら、いつのまにか魔物がカゼイチの方に攻撃を……!


「やぁっ!」


だが、その攻撃がカゼイチに届くことはなかった……彼女に攻撃が届く前に魔物の目に攻撃が矢が突き刺さり、魔物が痛みで攻撃をやめたのだ……


「この声、あの射撃の的確さ……もしかして…」


「……っと、君、大丈夫?」

「貴女は…?」

「私はメリナ・マーリス……まぁ、罪人ってところかな?」

「ざ、罪人……?」


……やっぱり、メリナだ…途端に背中が冷たくなる、彼女に対して思うことがないわけではないが、ガナッシュにもう気にしていないと言った手前正直微妙な気持ちだ


「オレオール」

「え?」


オレが微妙な顔でメリナを見つめていたら、カヌレが真剣な顔で話しかけてきた


「オレオールの気持ちは、私も痛いほどよくわかる……でも、今は先輩を信じて、一緒に戦ってあげてくれないかな」

「!……わかった」


カヌレにそう言われて、正直気が楽になった……この分なら、あの魔物にも……


「さぁ、久しぶりに行くっすよ、先輩!」

「また一緒に力を合わせよう!4人でさ!」

「……」

「……あぁ、そうしよう!」


俺たちはもう一度、魔物に向かってそれぞれの武器を構えた



ツユクサの花言葉[懐かしい関係]

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