第38話[戻って来たら時間がそんなに経ってなかったってことあるよね]

「いつつつ……体痛い…」

「ずーっと眠っていたんですから当たり前ですよ」

「俺って何日くらい寝てた?」

「5時間くらいですかね」

「みじか」


体痛くなるにはめっちゃ短いんだけど...まぁ硬い床で寝てたからか?あと俺個人的には何日どころか何週間くらいの勢いで経過してる気分なんだけど……それは多分あの夢だか幻影だかのせいだろうな


「5時間もこんなにゴツゴツしてるところで眠っていたらそうなります…全く……オレオールさん、何があったんですか?しかもこんな空き地で」

「え?空き地?」


そうして辺りを意識して見渡すと、店があったところは草木が生い茂り、俺の座っているここは大きな石の上のようだ


「……え、二人とも、俺のこと移動したりした?」

「そんな余裕もないくらい大変でしたよ……どれだけゆすっても起きないどころか反応もしないんですもん、それこそ死んでしまったんじゃないかと思いました」

「えぇ……」


俺そんな風になってたの?うわぁ…


「なんかごめんな、二人とも、すごい心配かけたみたいでさ」

「いえいえ、僕は平気ですけど……」

「?」


ちらっとエクレの方を見るブレイブ……エクレはプルプルと震えていて…ブレイブは「あー……」と声を漏らしてスススと離れていった


「オ"ー"ル"く"ん"!!!」

「いだぁ!?」


さっき突撃されたのに、またエクレに突撃されてしまった、思いっきり体が石に叩きつけられて痛い


「あーあー…」


やれやれ、と言ったように首を振るブレイブ……先ほどからブレイブしか応対してくれなかった理由は…これか


「わだじ、わだじ、もゔだめがどおぼいまじだぁぁぁ!!!」

「な、泣くなってほら!な!?俺は今こうしてここにいるから!」

「だっで、だっでぇ…!」

「よ、よしよし、ほら元気出せって」


エクレの頭を軽く撫でて、なんとか落ち着かせようとしたらグスグスとさらに泣き始めた……一体なぜ…


「また……また失ってしまうんじゃないかと思いました…」

(また……?)


「エクレさん、倒れてるオレオールさんを心配して、何度も回復魔法をかけていたんですよ…それくらい心配をかけていたと言うことを自覚してください」


ジト目でブレイブにそう言われてしまった……あの物腰柔らかいブレイブにここまでさせるくらい俺はダメだったのか…


(でも……エクレってこんなキャラだったか…?)

(なんだか違う気もしますけど……さっきの[また]と言う発言から、すでにエクレさんは大切な誰かを失ってしまっているのでは?)

(……なるほど)


小声でブレイブと話し合う、と言っても間近にいるため意味があるかどうかはわからないけれども


「とりあえず移動しません?なんだか周りの視線が痛々しいので」

「え」


よくよく見ると街の人たちがザワザワとこっちを見ながら騒いでいる……これまずいのでは!?


「エクレ、ちょっとすまん!」

「ひゃっ!?」

「ブレイブ、お前も肩貸してくれ」

「え、え僕もですか?普通にオレオールさんが背負っていけば」

「世間体的にまずい」

「二人で運ぶ方が世間体的にまずいですよ!?」


でもなんだかんだ言って一緒に運ぶのを手伝ってくれるブレイブは素直な優しい子だと再確認した俺なのだった



「ふぃー、なんとかついたなー」

「着いたなっていうかなんとか借りられたって言う方がただしいですけどね」

「確かに」


俺たちはなんとかあの場から立ち去り、宿を借りてそこに逃げ込むことに成功した、多分明日には噂になっていらかもしれないから明日にはこの街から出て行くことにしようそうしよう


「お恥ずかしいところをお見せいたしました…」

「いやいや、エクレさんが気にすることじゃないですよ」


エクレもエクレで冷静になったらしく、顔を少し赤くしてこちらに謝っている…[変に泣いちゃって恥ずかしい…]と先ほどから呟いていたからもっと前から冷静になっていたのかもしれないけど


「それで、何があったんですか?もちろん教えてくれますよね?」

「ゔっ、ぶ、ブレイブ?顔が怖いって…」

「心配かけさせたんですから説明するのが筋というものでは?」

「それはそうなんだけど」

「まさかただ空き地で寝っ転がってたら寝てしまった、なんてことじゃないでしょうし」

「ま、まぁそれは…」

「ですから……ぜーんぶ教えてもらえますよね?」

「あ、あー……うん」


この時、俺はブレイブを怒らせるようなことは絶対にしないと誓ったのだった



「ふむ……そんなことが…」

「信じてくれるのか?正直奇々怪界な話だとは思うんだが…」

「信じるもの何も、あんな植物状態を見せられたらどんなに奇天烈な話でも信じざるを得ませんよ……僕が何をしても目が覚めなかったわけですし」

「ゔ……すまん…」

「ですが…謎の老人に、その老人が持って来た[暗い光]ですか……」


ふむ、と何かを考え込むブレイブ……ただでさえ意味わからない話だったっていうのにそれを理解して考察してくれているのだろうか


「……そう言えば、オレオールさんって、巨大な魔物を討伐して暗い光が出て来た時、2回とも頭を痛めてましたよね?」

「え……あ、あぁまぁ、そうだけど」

「ということは、オレオールさんとその光には、何か関係が?」

「えいや、そんなこと……あるのか…?」

「オレオールさんがわからないんじゃわかりませんね…」


でも確かに、これまでのことを考えると、そういう事もあり得るのか…?だとしたら一体なぜ?あの光と俺は何か関係があるのか…?


「なーんて話をしても何にも覚えてないわけだし、わかるわけないよなぁ……」


え、もしかして俺なんか悪いやつだったりする?それで人に近づいて行動をするためにあえて記憶を消して違和感がなくなるように…?なことあるわけないか…


「まぁ……考えてもわからないことはわからないから、とりあえずはこの旅を楽しむことにしよう」


過去がどうであろうと今の俺は今の俺だ、だから余計なことは考えずに、エクレやブレイブと共に過ごすこの日々を大切にしようと思う……いや何を干渉に浸ってるんだ俺は!?ただ自分の過去について何にも思い出せないからいーやー☆って投げ出してるだけじゃないか!?


「こんなんで良いのか俺……本当に良いのか…!?」

「ど、どうしたんですか?オレオールさん…」


ブレイブが不安そうにこちらを見つめている、スンマセンちょっと変態になってました


「はぁ…まぁ良いですけど……今日はいろんなことがありすぎましたし、休むことにしましょう」

「そ、そうだな……そうしよう、エクレも……あれ?」

「すー……すー……」


……寝てる…完全に寝落ちてる…さっきまで普通に話していたはずなのにもう完全に寝てる…別に良いけどさ


「それじゃあ、俺たちも寝に行くか」

「そうですね」


難しい問題は後回しにして、今日はもう休もう……普通に…疲れたし


ー?side


「……っと…ようやく辿り着いた…!」


基地に設置された転送装置も直って、ようやくここに辿りついた……今までどこにもいなかったけど…あの人はここにいる可能性が高い…!これまでどこを探してもいなかったけど…今回ばかりは正解に近いところまで来た


「探すついでに、あの子とも情報共有しとこうかな…まぁ情報共有って言っても、私からできることは[まだ発見できてない]ってことだけなんだけど…」


でもまぁ、あの子も同じような状況だろうし、一緒に探すというのもアリじゃないかと思う


「そうと決まれば、早速向かいますか!」


風の精霊に手伝ってもらって、あの子の反応を探るとすぐに出てくる、ここからそう遠くないところにいるみたいね


「今行くよ、ブレイブ」


大切な人の居場所に向けて、私は風の力で飛ぶのだった



ベルフラワーの花言葉[感謝][誠実][楽しいおしゃべり]

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