第24話[風泥魔鳥・ヴォルデガレオス]

ブレイブが(強引に)開いた隠し通路を進む……狭い道をかなりの距離進んでおり、さすがはシンクロトニカの神殿だなとか考えてしまう


「っ!……うぉっ!?」

「きゃっ!?」

「ぐっ…吹き飛ばされそうだ…!」

「相当強い風ですよこれ…!」


しかも、風が吹くたびにキーンと言う高い音が聞こえる、やはり、あの巨大な魔物がここにもいるという事なのか……


「……っ!」


急に開けてる部屋……というか、空間に出た、まさかここに……


グルルルルルルル!!!!


「!くっ……!?」


部屋に入った瞬間に鋭い攻撃が飛んできた、なんとか剣で弾き返すも、かなり重い攻撃だったのか手が痺れる


「お、オレオールさん、あれ!」

「は……?」


攻撃が飛んできた方に目線を向けると……そこには黒いモヤで半身が覆われた巨大な鳥が飛んでいた


「おいおい、まさかの鳥かよ……!」

「相手が空を飛んでいるとなると、相当苦戦するしそうですよ!?」

「飛行型の魔物……」

「っ!お前ら!散開しろ!」


ガナッシュのその言葉に4人それぞれ違う方向へと移動する、俺たちが居たところは大きな凹みができ、それは奴の巻き起こす風がどれだけ強いのかを表していた


「くっ……戦闘準備に…!」


グルルルァァア!!!!


「っ!この風……!お、俺の剣が……!?」


ガナッシュが剣を構えると同時に奴がガナッシュの剣に風を起こし、例のナニカを付けた


「この反応、やっぱり……」

「ブレイブ!そっちにいくぞ!」

「!ふぅっ!」


奴が風を起こし自分の羽を鋭いナイフのように飛ばす、ブレイブはなんとか羽を斬撃で押し返したようだが、その時に体勢が狂ってしまい、そのまま風に飛ばされてしまった


キキキリリリィィィ!!!


「っ、がはっ……!?」


「ブレイブッ!?」

「ブレイブ君!」


風に飛ばされたブレイブを見たヤツがブレイブの体に再度自分の羽を飛ばす、対応しきれなかったのか、ブレイブの体に数枚の羽が突き刺さった


「ブレイブ君!すぐに回復しま……っ!?」


ブレイブの回復をしようとするエクレだったが、そうはさせまいと現れたシャドウスコーピオンに攻撃されてしまった……そうだった、この風、魔物を生み出すことがあるんだったな!?


「ッチィ!おいオレオール!結構やばい状況だぞ!」

「わかってる!一定以上にでかい魔物は、別の魔物を生み出す力でも持ってるのか…!?」


「うぐっ、ぐ……ぐぅっ!」


ブレイブに突き刺さっている羽根はまだ立っている、どうやら相当硬いようだ…エクレは今でも魔物に囲まれている、早く助けに行こうにも、風が巻き起こるたびに持っている剣に泥のようなナニカが付き、切れ味が鈍ってうまく進めない


「ガナッシュ!アレだ!」

「了解……!」


増え続ける魔物、囲まれているエクレを助けるためにはガナッシュのあの技が必要だ……ガナッシュがガチンッと持っている剣を納刀し、グッと姿勢を低くする、そのまま体内の魔力を変換して……


「ぜぇぇぁぁっ!!!!!」


一気に鞘から引き抜き魔物達を切り裂く、この技はガナッシュの得意魔法[魔剣延伸]、自身の魔力を使って刀身を擬似的に伸ばし、遠い距離にいる魔物も切り裂くことが出来る……この技の最も重要な問題点として魔力で擬似的に伸ばした剣は人も斬れるので先に人がいると普通にお陀仏になるところだが……これだけ魔物がいて、それぞれの位置が離れている今ならなんら問題がなく発動することが出来る


「よしっ、オレオール、開けたぞ!」

「助かるっ!」


剣を振り、ついた泥を弾き落としてエクレを囲む魔物を切り裂く……とは言っても、流石に一撃で処理を仕切ることはできないのでそのまま3回4回と斬撃を入れて倒す、そのままエクレを救出してガナッシュの元へ


「救出成功ってな、エクレ!ブレイブの回復を頼む!」

「はい!……ヒールエポーツ…!」


ヒールエポーツ、遠距離の仲間の1人を回復させる魔法だ、エリアヒールと違って複数人は回復できないがエリアヒールよりも回復量が多い


「くっ……ぐっ、ふ…くぅ……!!!」


ブレイブが立ち上がり、体に突き刺さった羽根を引き抜く、そのまま自分でヒールをかけて引き抜いた部分を直している


「しかし、このままだとジリ貧だな……」


閉鎖された空間とはいえ、ヤツは未だ空を飛び回っている、あいつをこっちサイドまで叩き落とせないと俺たちの攻撃は届かない


「……!そうだ、ガナッシュ!」

「は、は?なんだよこんな状況の時に!?」

「ちょっと手をかせ!」

「え、わ、わかった」


そのままガナッシュの手を取り出来る限りの魔力をガナッシュに流し込む


「おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!!!???」

「お前の魔剣延伸をあのデカ鳥に届くまで伸ばして切り裂け!」

「はぁ!?あーんな長い距離まで伸ばしたことないっての!」

「それでも、お前なら行けるだろ…剣聖の底力、見せてくれっての」

「……ったく、相変わらずの考えなしだな…だが、嫌いじゃない!」

「!ふっ!」


「せいやっ!」


俺達の方へ飛んできた羽根を剣で弾き返し、ブレイブは刀で叩き切る、ほんとに空を飛ぶ敵ってのは厄介だ……!


「ブレイブ!まだ動けるか!?」


「もちろんです!」


「遠距離攻撃ってなんか出来るか!?」


「簡単な牽制くらいの攻撃ならできますけど……!」


「牽制レベルか……」


相手は空を飛ぶ魔物、あのデカブツの時のように2人で時間稼ぎをして、なんてのもうまくいきそうにはないだろうし、その牽制に頼るしかないのか……?


「いや、ここでそんな風に体力を使わせるのは得策じゃないな……」

「オール君……!魔物が!」

「っ!はぁっ!」


ダメージを負いながらも何とか攻撃してのけぞらせる、いや、いつまでも考えてたらいつの間にか召喚された魔物達に囲まれて終わりになってしまう、今は考えている場合じゃない


(だから厄介なんだよなぁ、こう言う複数相手にするの……)


とりあえずヤツの放ってくる羽根を回避しながら召喚された魔物を討伐していく事にする……


「でも、どうするんですか!?結局状況は何も変わってないですよ……あの鳥に攻撃を当てられないと、全く意味がないです!」

「分かってはいるんだがなぁ……」

「えぇ!?な、何にも思いつかないんですか!?」

「せめて魔法職がいればな……」


遠距離攻撃といえば魔法職だ、攻撃魔法が使えればあぁ言った空を飛ぶ魔物相手にもしっかりと対処することができる、特にギルドにいた時はモナが攻撃魔法を正確に当ててくれていたため、どんな魔物にも対処出来ていたのだ


「でも、今の僕たちには魔法職なんていないですし……」

「まぁ確かにな…」


っと、そんな話をしながら魔物を討伐していると、魔剣延伸を準備しているガナッシュのところへ奴が羽根を放っているのが見えた


「まずいっ!」


全力で走って剣を引き抜き、なんとかガナッシュへと羽根が突き刺さる前にその羽根を弾き飛ばすことができた……が、そのまま先ほどのブレイブのように体が吹き飛ばされ……


「ぐっ……せいやっ!!!」


そのまま俺を狙って放たれた羽根を持っていた短剣を引き抜いてなんとか処理する……ガナッシュやエクレを守りながら奴の攻撃を回避して魔物を倒して行く…こりゃ忙しいとかいう問題じゃないな


「お、オレオールさん!?大丈夫ですか!?」

「お、俺は大丈夫だ!そっちは!?」

「こっちも大丈夫で……ぐぐぐっ、すっ!せいやぁっ!」


一瞬押し切られそうになりながらも俺にそう答えてくれるブレイブ、俺の方も2人を守りながらは結構きついな……


「はっ!!!」


シュバッ!という音が聞こえた、そのままデカ鳥の翼へ何かが当たる、別段ダメージがあったわけではなさそうだが……


「!ま、マカロン!?」

「お待たせしました!オレオール様!」


入り口の方を見ると、投げナイフを構えたマカロンが、そこに立っていた



アンズの花言葉[臆病な愛][乙女のはにかみ]

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