「エロかわ美少女達に愛されてるけど幼馴染を寝取られたことがトラウマな件〜女性不信でオタクな俺も何度フラれても告白し続けてくる女の子には揺れてしまう〜」というラノベを書きたいので手伝ってください!先輩!

ウサギ様

文豪は二度死ぬ

一章の一

「はい、こんばんはー。みんな大好き美少女JK配信者の山田ココだよー。前にバレた本名で呼ぶやつ、絶対しばき倒すからなー」


 "おつおつ、山田ねこねこドラゴンさん"

 "キラキラネーム実名配信者として伝説になれ、山田ねこねこドラゴン"

 "お、アニメはじまた。このOPいいよね……"

 "分かる、少ない枚数ながら音楽と合っててかなりいい"


「はい、殺すー。私を本名で呼ぶ奴は全員殺すー。あと私のチャンネルのコメント欄でアニメ実況してるやつらも殺すー。この前アニメのまとめスレに使われてたからな」


 "草"

 "草、落ち着けよドラゴン"


「私、アニメのことを一回も話題にしてないのに! アニメのこと話題にしてないのに! チャンネルのコメント欄がアニメのまとめスレに使われてるの! 他の実況者は動画切り抜きとかで面白可愛い感じなのに、私だけまとめスレなんだよっ! 私の配信チャンネルから抜いてるのに私の顔が一切出てないのおかしいよっ!」


 "落ち着けねこねこドラゴン"

 "おっと、逆鱗に触れちまったか? ドラゴンだけに"


「うがーっ! お前ら絶対に許さん! 覚えてろよっ! 今に見てろっ! すぐに恋人作ってカップルチャンネルにしてやるからなっ! 今の荒らし率100%の視聴者層を一掃するからっ!」


 "今回日常回っぽいな"

 "初っ端からカオスで草"


「うがーっ! アニメの実況すんな! 配信者はコメント欄を無視していいけどコメントは配信者を無視しちゃダメなんだよ!」


 ふー、ふー、と息を整えている少女、山田ココ……本名山田ねこねこドラゴンは手に持っているカメラを周りの景色……河原の方へと向ける。


「はい。というわけで今回はテコ入れ回です。前回の化粧のやり方配信は失敗でしたからね。初挑戦で人に教示するのは無理がありました。ウチの高校、化粧禁止ですし」


 おほん、と少女は咳をして画用紙にポスカという手作り感溢れるフリップを「ばーん」と言いながら取り出す。


「地元で噂の心霊スポットに突入してみたー。えっ、夕方の理由? 普通に門限があるので夜には出来ないのさ」


 カメラでキョロキョロと撮影しながら茂みの方に進む。


「おー、バッタさん。かわかわだ。……あれー、いませんね、幽霊。夜しかやってないのかなぁ、って、あ……」


 少女の足元に夥しいほどの髪の毛が落ち、それを踏んづけて体勢を崩す。そしてその奥にいた血まみれの人の姿を見て口をぱくぱくと開ける。


「ぬ、ぬわー!」


 少女の叫び声が、河原に響き渡った。



 ◇



 印象と実態は案外というか食い違っているものだ。


 例えば静かなものと言えば、田舎の田園風景を思い浮かべるだろうが、虫やらカエルやら鳥やらで朝から晩までやかましい。


 反対にうるさそうに思えて静かなものと言えば……爆弾。


 迂闊なことをして爆ぜてしまえば大事になる。だから、万が一にも爆発しないように、眠るように静かに静かに置いておく。


 いずれくるその日まで、水面よりも静かに眠る。



 うるさい音を嫌って早い時間の電車を選び、生徒の中では一番最初に校門を潜り、缶のジュースを買ってそのまま教室でゆっくりと過ごすのが俺の日課だ。


 それが俺の静かな生活……だったはずだ。


「……ああ、白川先輩……ですよね? 本当にこんな朝早くに学校に来ているんですね」


 朝日を頼りに開いていた本を閉じ、ほんの少し眠たそうな眼を俺の方に向ける。


 真新しい制服は身体のサイズにあっていなくてブカブカで、綺麗だけども伸ばしっぱなしの長い黒髪。


 小綺麗にしている……けれども、一目で年頃の少女らしいオシャレへの興味がないことが見て取れる。


 だけども思わず見惚れるほど可愛らしく綺麗な彼女のことを俺は知っていた。


「ああ、一年の……北倉アコ……さんだったか?」


 本に這わせるために白い指先だけがチラリと袖から覗く。


 少女の小さな手で支えるにはいささか分厚く小難しそうな本には「北倉 譲」という筆者の名前が書かれていた。


 文豪「北倉 譲」の名前は大抵の日本人が知るところだろう。


 多くの名著を書き記し、その名を冠した文学賞がいくつもある。

 世間から文豪と呼ばれるものをして先生と仰がれるほどの作家。


 その孫娘が入学するとかで一部では入学前から話題になっていたぐらいだ。


 本人の整った容姿もあり話題性は抜群だった……が、意外にも入学からあまり話題に登ることもなければ変に男からも構われることはなかった。


 その理由は簡単で、死んだのだ「文豪」が。


 ニュースの速報で訃報が流れたあと、毎日疲れた様子で学校に通っていた孫娘の北倉アコの姿を見て気軽にナンパをしに行くことを出来るものはおらず、みんな遠巻きに見守るばかりだった。


 有名だけど話題にはしにくい、そんな彼女が俺を見つめていた。


「あー、確かに俺が白川だけど、何か用か? あんまり接点なかったように思うけど」

「はい。僕と先輩は話したの、これが初めてのはずです」


 長い黒髪が小さな風に揺られる。

 自分を「僕」と呼ぶ変わり者の少女は俺を見て小さく頷く。


「僕の祖父……北倉 譲は、作家をしていまして……なんというか、そのことで用があって、会いにきたのです」

「むしろ接点が遠ざかったような……」


 何の用事で来たのか分からず、ぽりぽりと頭を掻く。教室の照明を付けてから数歩進んで北倉アコに「飲むか?」と手に持ったジュースを見せる。


 丁寧に断った北倉アコをもう一度見る。

 明らかに変わり者という様子だけど、遠慮はしがちな性格なのだろう。


 部屋は暗いままで、立ったまま鞄も下ろさずに本を持っている。


「……話、長くなるか?」

「いえ、断られると思うのですぐに済むと思います」

「じゃあちょっと中庭の方にいくか。委員長も朝早いから。人に聞かれたくないからこの時間なんだろ?」


 北倉アコは整った顔を子供みたいに驚かせる。

 俺は鞄とジュースを自分の机の上に置いて、北倉の背負っている鞄に手を伸ばす。


「あ、えっと、だ、大丈夫です。……その、あまり先輩にお時間を取らせるのも申し訳ないので、歩きながら話させていただきます」


 隣を歩くと背の低さと肩の小ささを感じる。


「……祖父が死にました」


 思ったよりも分かりやすく単純な言葉で少女がそれを口にして少し驚く。


「祖父は生前「まだ書きたい小説があるのに、手も頭も動かない」と嘆いていました。一文字でも書こうと延命措置の管を無理矢理外してペンを握った。そして亡くなりました」


 悲しそうな、誇らしそうな、そんな表情を隠すように俺の前を歩く。


「そこまでして書きたい小説があった。けれども半ばで」


 北倉アコはポケットから古びれた手帳を取り出して俺に見せる。

 丁寧に扱っているが年季を感じさせる。


「祖父の手帳……ネタ帳と呼んでも良いでしょう」

「博物館とかで展示されてそうなものをサラッと……」

「祖父の墓前に、その小説を完成させて読ませてあげたいのです」

「……なるほど。それで、どんな小説なんだ?」


 少女はメモ帳をパラパラとめくった後に、小さな口をゆっくりと動かす。


「おほん……【エロかわ美少女達に愛されてるけど幼馴染を寝取られたことがトラウマな件〜女性不信でオタクな俺も何度フラれても告白し続けてくる女の子には揺れてしまう〜】です」

「……【エロかわ美少女達に愛されてるけど幼馴染を寝取られたことがトラウマな件〜女性不信でオタクな俺も何度フラれても告白し続けてくる女の子には揺れてしまう〜】!?」

「はい。【エロかわ美少女達に愛されてるけど幼馴染を寝取られたことがトラウマな件〜女性不信でオタクな俺も何度フラれても告白し続けてくる女の子には揺れてしまう〜】です」


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