第4話 過去(レオ視点)
あの日、俺の人生は変わった。
お嬢様──メルティアーノ・ステファン・リリアーベル様。
俺の、最愛の人。
俺は生まれた時から孤児であった。道端に捨てられた俺を、教会の牧師であったマルクが拾って連れ帰り、育ててくれた。
貧乏だったが、俺はそれなりに幸せだった。三食とまではいかないが、飯も食えてマルクと一緒に暮らす。
将来は働いた金でマルクに恩返しをするんだと、そんなことを思っていた。
──マルクが死ぬまでは。
それは突然だった。
マルクはゴホゴホとした咳をするようになった。最初は風邪だろうと思ったその咳は、だんだんマルクを蝕み、ついには命を奪ってしまった。俺が13歳の時だった。
それから俺は、手伝いをしていた八百屋で働いていたが、子供が稼げる金額なんてたかが知れてる。八百屋の主人がくれる余り物の野菜で食い繋いでいた。
そんなある日、俺は人攫いにあった。
裏路地に連れて行かれ、馬車に押し込まれる。ああ、俺は死ぬのかと、そう思った。
しかし、俺を攫ったやつは殺さなかった。最低限の食事を与えられ、時折男が来ては俺を値踏みするような目で見る。
そんな日々を過ごしていたある日、俺は男に連れられて家を出た。
逃げようとは思わなかった。逃げても飢え死にするだけだ。もはやどうでも良かった。
男から怪しい男に渡された直後、美しい声がした。
「あらそこのお二人、なにをしてらっしゃるの?」
その声の主を見た瞬間、天使がいる、と思った。そんな天使は、俺を助けてくれた。
俺はこの人になら買われてもいい、そう思っていると──
「貴方の人生、買って差し上げましてよ」
そう言ったその人を、俺が好きになるのに時間はかからなかった。
それからは彼女──メルティーに似合う男になろうと努力した。
幸い、文字の読み書きはマルクが教えてくれていたから、メルティーが書く小説もなんとか読めた。
アンナには早々にメルティーが好きだとバレていた(メルティーを見る目でわかったらしい)ので、協力してもらうことにした。
最初にメルティーに婚約者がいることを聞いた時は焦った。だが、アホな婚約者のおかげで結婚が白紙になったことは幸運だった。
俺は、なんとしてでもメルティーを手に入れる。そう、決意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます