第63話 サメ術師は能力を調べる

(俺でもやれる。何も恐れることはない)


 自分を鼓舞して走りつつ、彼らの頭上にガン・シャークを召喚した。

 すぐさま銃撃を叩き込んだが、不可視の何か阻まれる。


 黒ローブの勇者の仕業だろう。

 あいつが巨人の手でガードしたに違いない。

 弾丸はかなりの威力なのに難なく凌がれてしまった。


(あの頑丈さで自動防御か)


 俺は彼らの周囲にガン・シャークを召喚した。

 微妙に距離感を調節しながら配置して銃撃させる。

 これでサムライ勇者と国王が余計な動きをしないように牽制する。


 隠密型の二人の勇者は、銃撃の範囲外に退避していた。

 左右から回り込むようにして俺に接近している。

 攻撃のタイミングを窺っているようだった。


 今のところは気付いていない素振りをしておく。

 幸いにもサーチ・シャークで常に位置を把握できていた。

 仕掛けてきた瞬間、カウンターで即死を狙うつもりだ。


(まずは巨人の手を攻略しないとな……)


 俺は観察を続行する。


 巨人の手は基本的に防御に集中していた。

 四方八方から撃ち込まれる弾丸を完璧に防いでいる。

 反撃に移ろうとしない。


 ただ、間合いを詰めすぎたサメは始末されていた。

 いきなり全身を潰されるのだ。

 巨人の手に掴まれたのだと思う。


 それを何度か目撃して、俺は求めていた答えを得る。


(射程はおよそ十メートル。ブラフの可能性もあるから過信はできないが)


 巨人の手は、それ以上に離れたガン・シャークを放置していた。

 そういった個体は、サムライ勇者が斬撃を飛ばしたり、国王が魔術を放つことで対処している。

 やはり攻撃用ではなく、あくまでも仲間を守るためのスキルらしい。


(何にしても、接近戦は不味そうだ)


 サムライ勇者と国王には優れた剣術がある。

 十メートル以内に踏み込めば巨人の手に握り潰される。

 白兵戦に慣れるために姿を現したが、ちょっと失敗だったかもしれない。


 しかし、ここで怖気づくようでは駄目だ。

 相手の有利な間合いでも圧倒する。

 それくらいの気概でいなければ。

 俺のサメ能力ならばきっと可能だろう。


(やってやるよ)


 俺は鮫銃を構えて乱射する。

 放たれた弾丸状のサメは、軌道修正を図りながら突き進む。

 そのまま国王に被弾するかと思いきや、やはり巨人の手に妨害された。


 しかし、今回は結果が少し異なる。

 銃撃は弾かれず、そのまま不可視の手に喰らい付いた。

 そして閃光と共に爆発する。


 自動追尾しながら被弾と共に爆ぜる。

 これがバレット・ボム・シャークの神髄であった。

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