第12話 サメ術師はスキルを使いこなす

 これこそが【サメ召喚】の真骨頂であった。

 喰い殺した存在の特性を引き継ぐことができるのだ。


 スピア・シャークは、さっきの槍使いの騎士を殺したことで解禁されたのだった。

 種族的な部分だけでなく、喰らった武器も属性として付与できるらしい。


 ちなみに鎧も捕食したので、アーマー・シャークが召喚可能だった。

 きっと守りに特化したサメなのだろう。

 そういったタイプも悪くない。


「そ、んな……」


 炎剣の騎士は自らに刺さる槍を呆然と眺めていたが、すぐに白目を剥いて絶命する。

 召喚した四匹のスピア・シャークは、喉奥へと槍を収納した。

 そのうち一匹が炎剣の騎士を齧って引きずり、そのまま地面へと潜り込んでしまった。

 同時に新たなサメが解禁されたことを感覚的に把握する。


(さっそく使ってみるか)


 片手を振ると、左右に魔法陣が展開された。

 右側から出てきたのは、額から剣の生えたソード・シャークだ。

 左側から出てきたのは、赤いボディーのファイアー・シャークだ。


 さらに俺は手を前に持ってくる。

 二メートル先に新たな魔法陣が生成された。

 そこから静かに現れたのは、額に燃える剣を持つサメ――ファイアー・ソード・シャークだった。


(属性を分けたり合体させるのは可能らしいな)


 俺は小さくガッツポーズを取る。

 なんとなく成功する確信はあったものの、いざ挑戦してみる際は不安になってしまう。

 こうして何の不具合もなく上手くいってくれて良かった。


 もっとも、この場で喜んでいるのは俺だけだった。

 残された三人の騎士は恐慌状態に陥っている。


「おい、どういうことだ。何なんだよこれはッ!?」


「知るか! とにかく切り抜けるぞ。アイツを殺せば、きっと、必ず……!」


「黙れ! さっさと逃げるぞ。俺達じゃ手に負えない!」


 意見がバラバラでまるで統率感がない。

 炎剣の騎士の死がよほどショックだったのだろう。

 生まれかけた連携がそのせいで瓦解している。


 ノーマルなサメを瞬殺していたし、炎剣の騎士はきっと実力者だったのだと思われる。

 そんな実力者でも、変幻自在な【サメ召喚】の前ではただの獲物に過ぎなかった。

 四本の槍であっさりと貫き殺される羽目になってしまったのだ。


 そういえばサメ映画では、登場人物が不意を突かれて喰い殺されることが多い。

 俺の【サメ召喚】も、何か相手を油断させるような効果がをあるのかもしれない。

 真相は不明だが、スムーズに敵を仕留められたのは何にしろ好都合であった。

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